第2話 対セバスチャン
セバスチャンとの距離を適度に図り、木製の短剣を胴の前に構える。
「いいのですか?そんなに間合いをとっても?」
「いいんですよ、俺流ですから」
セバスチャンはその言葉に、口元を緩ませると一気に間合いを詰めて、俺の鳩尾へと蹴りを入れる。俺は蹴りの勢いに押され、地面に滑るように倒れ込んだ。
「がはっ。ってぇ……」
セバスチャンの強さは、俺の想像を遥かに超えていた。姿を捉えきれないのだ、つまり今それだけの力量差がある事ははっきりした。ならば、俺の持ってる全て、そうスキルを使うしかない。
俺は痛みに耐えながら、この勝負スキルにかけたと胸に秘め、スキル使用を唱える。
「目の前の敵を倒すため、今私の秘められた力を解放せよ、ジャッジメント・スキル発動!」
すると、目の前にそれぞれ全身、赤、青、緑、黄、黒の服にとんがり帽子を被った5人の小人が姿を現し、円となり審議を交わす。
「どうする?今回、力貸しちゃう?」
「勝てたらなんかあんの?」
「さぁ?困ってそうだし力貸してあげたら?」
「とりあえず、リーダーの意見を聞こうか」
「却下」
「決まりだね」
5人は俺の方に整列し、声を揃え発言する。
「せーの「「「「否決!」」」」」
小人たちはボンッと音を立てると煙と共に、その場から姿を消した。えっ今の何?まさか、スキルに拒否されたって事?
「何だとぉ!マジか、今の完全に審議とかじゃなく黒いのに全てが委ねられてたぞ」
俺はスキルに文句を言っている間に、再びセバスチャンに間合いを詰められ、今度は頭に蹴りを喰らいその場に意識が飛びそうになりながら前に倒れこんだ。
俺が倒れると、城内のセバスチャンコールが鳴り響く。イケメン、強い、人気のセバスチャンの事を俺は嫌いになった、これは完全に嫉妬である。俺はもう一度だけスキルにかけてみようと思った。
「弱い、弱すぎます。これが勇者ですか?我ら兵より弱い彼がこの国を救う事など出来るでしょうか?」
「「「できませーーん」」」
(くそぅ、勝手な事ばかり言いやがって。セバスチャンを倒す為、頼む力を貸してくれ。ジャッジメント・スキル発動)
再び、5人が姿を現し円となり審議を始める。
「また、呼ばれた。力貸そうか?」
「こいつ死んだらどうなるの?」
「私達も死んじゃうわね」
「死なれたら困るけど、リーダーに聞いてみる?」
「否決」
おい、黒いのお前やる気なさ過ぎだろ。俺は終わったと心の中で呟き、地面に倒れたまま静かに目を閉じた。




