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灰色の世界  作者: ken
プロローグ
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プロローグ =水瀬優次郎という男についての考察=

主人公最強系です。苦手な方はご注意ください。

 「天才」は、時に世界へとその牙を突き立てる。

 歴史上、天才だと謳われた人物を挙げろと言われれば、枚挙に暇がない。時代の変換地点、歴史的発見及び発明の影には、必ず天才の存在があった。例えば、遠い遠い科学の時代(・・・・・・・・・)に活躍したトーマス・エジソンやレオナルド・ダヴィンチ、アルベルト・アインシュタインと言った著名人がそれに適する人物と言えるだろう。

 時代が過ぎた現代において、人々の生活の根幹を成す「魔術」を発見した人物も、その資料には名前こそ明記されていなかったものの、今なお時代を作り上げた「天才」として挙げられている。


 だがそれは、あくまでも我々が良く知る「表の世界」で認められた人物のみに限られる。


 「天才と馬鹿は紙一重」などという諺にもある様に、表の世界では「奇人」の一言で片づけられ、理解もされなかった人物たちも、また別の世界では「天才」として認められているのだ・

 ――――――――いや、天才と呼ぶにもおこがましいのかもしれない。何故ならば、人が天才という言葉を用いる時、その殆どが善を意味する用語として活用しているからだ。

 彼らは、そんな表の世界から肯定的に見られるには程遠い功績を遺していった。爪痕、と言い換えても良いだろう。人が彼ら呼ぶ時は、天才ではないことばで表現する。

 それは「狂人」。つまり「頭の狂った人間」。天才と呼ぶに相応しい能力を携えていたにも関わらず、それが表の世界の道理、真理に反していたがために蔑まれた者達だ。

 ここでは、科学が終わり魔術が台頭したこの世界において、最も有名な狂人を紹介しよう。

 その人物の名は、水瀬優次郎みなせ・ゆうじろう。名を読んで分かる通り、日本が生んだ世界最高峰の狂人である。

 年齢は、現在23歳。未だ存命であり、彼の名が世界を震え上がらせたのは、たった5年前の事だ。

 彼が行った事は何か。それは一言でまとめれば「殺人」。それも、「超遠隔距離から魔術によって人を死に至らしめる」、「対象の魔力そのものを操り、内部から魔力を暴発させて木端微塵に吹き飛ばす」等といった、彼自身が独自に編み出した危険極まりない魔術を用いての大量殺人である。

 実際に彼が殺人を起こしたという証拠が現在でも見つけられていないため、正確な殺害人数は不明だが、軽く200人は超えていると言われている。その中には、世界各国でトップクラスの権力者も含まれている。

 現在、東京違法魔術師専用刑務所の地下深くにある監獄にて服役しており、彼に課せられた刑は何故か(・・・)終身刑であった。

 水瀬優次郎に関する逸話として、この様なものがある。

 彼が活動していた期間、正確には不明だが、おそらく彼が18歳の時から、捕まったとされる20歳の時まで、すべての教育機関、そして違法魔術師取締委員会において、この様な教えがなされていた。



「水瀬優次郎と出会ってしまったら、迷わず逃げろ。正義感も自信も、彼の前では単なる自殺願望にしかならないのだから」



 実際、彼の名も顔も、おそらく全世界の住人が知っていたはずだ。何故ならば彼は、度々人々の前に現われては殺人の対象と日時を自己申告していたのだ。

 当然、違法魔術師取締委員会がそれを黙って見ているはずがない。多くの警備をつけ、細心の注意を払い、魔術を無効化する魔方陣まで張った。

 だが結果は、水瀬優次郎の勝利。全ての事件において、彼の殺人を止める事は出来なかった。彼が用いた魔術が何なのか。多くの魔術学者によって様々な見解がなされたが、現在でも不明のままである。

 その他、多くの腕の立つ魔術師たちが彼を捕え、よっては殺そうとしたが、全て返り討ちに遭い、中には逆に殺害された者もいる。

 そのため、彼は法によって裁く事が出来る数々の行動を行っていたにも関わらず、3年前に「表の世界」の天才の一人、綾瀬川叶あやせがわ・かなえによって捕らえられるまで、誰も殺すことも捕らえる事も殺すことも出来なかったのだ。

 以上が、現在分かっている水瀬優次郎の全てである。彼が殺人を起こした動機も、方法も、正確な殺害人数も、そして第一の殺人を犯した時期も、その全てが、今なお不明なままなのである。

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