日常に僅かばかりの
また、終焉に一歩近付く。
嵐が紛れた画面では、世界一の面積を誇る国に隕石が落ちたというニュースが流れている。
「また?」
飲みかけのポカリを手に持ったままの彼女を、ベッドに横たわりながら見上げる。
「ごはん、まだ?」
「あるよ」
はい、ともう片方の手に乗っていた深皿がローテーブルに置かれる。乾燥野菜と缶詰の肉しか入っていない和風パスタ。食糧難の今にあって、贅沢な食事を口に運ぶ。
餌付けされてんじゃん。
付き合い初めてまだ一か月の自分の状況を見て、クスリと笑う。不思議と心地良かった。
半世紀前のツケが全てまわってきた今。生きることが面倒なこの世界で、それでもいつしか笑えるようになっていた。
テレビではまた、【醒めた目】――過激派の人間が騒いでいた。度重なる隕石は神が人間への鉄槌だと。
そうかもしれない。だからと云って、彼らが正義のように振る舞う理由はわからない。
チラリと彼女を見ると、彼女は意識して彼を見なかった。【醒めた目】犠牲者の彼女の目を見る勇気は、無い。
かと云って黙っていることも出来ずに、空になった深皿を押し出す。
「ごはん、まだ?」
視界の端で、彼女が小さく笑った気がした。
お題は『ごはん、まだ?・餌付けされてんじゃん・醒めた目・隕石・飲みかけのポカリ』ですhttp://shindanmaker.com/35731
少し先、資源が尽きていく世界の設定です。1000字で収まりよくはいかんかった……!
というかお題でだいぶ悩みました。
今年も終わりです。
よいお年を。