1.4 胸に突き刺さる誓い
力強く、壮絶な笑みさえ浮かべて放たれた言葉はディディカの中に突き刺さった。
名残惜しいと瞳が訴えていると思ったのだろう、彼女はそんな言葉を口にした。なんの慰めにもならない、ただの口約束だ。
けれど、ディディカもまた紡ぐ。
「エレナ……最後じゃないよね」
確信を持って。
力強く、燃えるような熱さを魔族特有の黒色の瞳に乗せて、ディディカは放った。
それに、エレナもまた、頷く。一度、壊れてしまえば同じものなどこの世には存在しない事を彼らは本能で知っていた。だからこそ、この絆は今日で壊れるものだと、互いに知っている。それでも紡ぐ言葉は偽りではなく、新たな先への誓い。
ディディカは背を見送った。
その時の感情は言い表せない。
激情。荒れ狂う闇。振り切る心の針。尺度など測れない、激しい感情。揺さぶられる。
暗い闇から這い上がるずっしりとじめじめした薄ら寒いもの。奥底を這いずりもがく想い。価値観が変わるかと思うほど、ただ烈しく、激しく、はげしく。
「エレナ――」
感情を幾つも束ねて複雑に絡み合わせた声音が夜色にかき消える。
想いが重なりあい、混ざり合い、ディディカはその名を呼ぶ。決して届きはない、その名。
最後の記憶にまで修正が施された、腕を伸ばした先のその人物の名を呼ぶ代わりに、現在の名を紡ぐ。――歓喜と怒りと悲しみと。
(誓うよ。再び会う事を、この道の先で――待っていて)
折り曲げた想いは、簪によって呼び戻された呼応する想い。エレナとディディカの絆はこうもあっさりと焼き切れた。夢の中の少女二人の呪詛により、――二人は意図も簡単に敵対した。
(……君を殺してあげる)
幽鬼のように、ディディカから魔力が迸った。