1.はじまりとおわりの記憶
女王の涙
1.
始まりと終わりの記憶
感じたのは熱い雫。そこからじわりと侵食するように広がる熱さ。
火傷よりも熱い、麻痺した痛み。熱いと感じるのに体の節々が冷えていくような感覚。
例えようも無いおぞましさが全身を襲う。体を這いずるように伝う赤く熱い何か。その小さな感覚に体中が震えに走った。嫌らしいほど全身の感覚が鮮明で、現実感を持って訴えてくる。
世界と一体化したような感覚、世界のどこかで風が吹いた、世界のどこかで誰かが話しをしている……そんなすべての事象が体に刺激を与えてくる。
強烈な本流の中にちっぽけな意識が漂い、巻き込まれている。
俯瞰した意識は見ていた。
胸から突き出たナイフも、血が傷から滴って服を濡らし床に落ちていく様も、信じられないかのように目を見開いて胸元を押さえ苦しみに前かがみに崩れ落ちる己さえも、――すべての発端、全身を赤に染めた少女の歪んだ笑みを見ていた。
俯き加減なのか、視界が暗いのか。顔の下半分のみしか判別することの出来ない少女はゆっくりと真紅の唇を動かして紡ぐ。 「――――死んでくれる?」
ゾッと背筋が震えるのと同時に目が覚めた。