1.距離、近くない?
隣の席の柊さくらは、距離が近すぎる。
物理的にも、精神的にも。
肘が当たるくらいならまだいい。
気づけば、机の半分くらい占領されている。
「ねえ」
唐突に、顔を覗き込まれた。
近い。
息がかかりそうなくらい、近い。
「……なに」
視線を逸らしながら答えると、
さくらは楽しそうに笑った。
「今日、部活ないでしょ?」
「あるわけないだろ」
「じゃあ一緒に帰ろ」
即決だった。
相談でも、確認でもない。
決定事項。
「なんでそうなる」
「えー? だって昨日も一緒だったし」
理由になってない。
「それ、理由じゃないからな」
「でも帰ったじゃん」
「……帰ったけど」
「ほら」
勝ち誇ったように笑う。
意味が分からない。
なのに、否定できない自分が一番分からなかった。
教室のざわめきの中で、
さくらは当然のように僕の椅子の背に寄りかかる。
近い。
やっぱり、近すぎる。
「ねえ、今日コンビニ寄っていい?」
「……一緒に帰る前提なのやめろ」
「え、帰らないの?」
その一言に、なぜか胸が詰まった。
「……帰るけど」
「ふふ、やっぱり」
そう言って笑う彼女の横顔が、
やけに楽しそうで。
その瞬間、思ってしまった。
——これ、恋人じゃないのに、甘すぎないか?
でも僕たちは、まだ何も始まっていない。
ただ距離が、
近すぎるだけだ。
読んでくださりありがとうございます。
新作を書きました。
全然違うジャンルの小説です。
ブックマーク・評価もよろしくお願いします
次回更新:明日19時半更新予定です。




