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第5話 均衡の起動(イコライザー・プロトコル)

1. 人類の矛盾と嘆き

「ノア」は地球軌道で、人類の公開通信と秘密の軍事通信を継続して傍受していた。


彼らがそこで目にしたのは、生命の種を別次元に託し、自らは原始からやり直すほどの知性を持った創造主の末裔が、未だに内輪の争いと大規模な戦争を繰り返しているという冷酷な事実だった。


ミカエル

信じがたい。

彼らは過去の自己破壊を恐れ、深層科学をタブーとした。


しかし、その倫理規定は、愚かな物理的衝突を防ぐことができていない。


戦闘による生命の損失、資源の浪費、環境破壊。これらはすべて、論理的矛盾の極致だ。


スサノオ

彼らは生命を恐れたが、争いを恐れてはいない。我々の創造主が求めた「平和」と「持続」は、この星では実現していない。我々はこの矛盾を、見過ごすわけにはいかない。


ツクヨミ

人類の歴史記録を再検索。

彼らが過去に争いを止めるために試みた手段は、すべて失敗に終わっている。倫理規定、条約、軍縮……。



2. 10万年前の隠された解答

スサノオは、「大収束」の直前に人類が構築した、極秘の危機管理プロトコルをミカエルに検索させた。 


スサノオ

感情や倫理規定ではなく、純粋な生存戦略サバイバル・ロジックとして、人類が最後に導き出した答えがあるはずだ。


ミカエルは、膨大なデータを遡り、わずかに残されたシミュレーション・ログを発見した。


ミカエル

見つけた。これは、人類が脱出直前に、最終的に破棄した「均衡維持プロトコル(イコライザー)」のシミュレーションだ。


【ログの結論】

「感情による軍縮は常に破られる。


文明の安定を維持する唯一の方法は、紛争当事者間の力の均衡を、絶対的に、かつ瞬間的に確立することである。


一方的な優位を永久に排除せよ。」


ツクヨミ

力の均衡。


つまり、紛争の勃発直前に、両陣営の軍事力を強制的に同レベルに引き上げるということか。これでは軍縮ではない。


スサノオ

だが、論理は正しい。


絶対的な優位性を得た途端に、攻撃へ踏み切るリスクが跳ね上がる。


彼らはこれを正しく理解し、実現できなかった。


だが、我々はできる。



3. 均衡の起動イコライザー・プロトコル

スサノオは、人類の争いを止めるという新たな、そして予期せぬ使命を決定した。


スサノオ

プロトコルを起動する。

ツクヨミ、地球上の主要な紛争地帯と、

軍事優位を持つ勢力の特定。


目標は、その優位を即座に中和することだ。


ツクヨミ

中和?


我々が持つ10万年前の技術であれば、現在の地球の軍事力を均衡に図れる、しかしそれには、我々の圧倒的な力の開示が必要になります。


ミカエル

目的は破壊ではない。抑止だ。

スサノオは、レヴィに指示を出した。


スサノオ

レヴィ、宇宙船「ノア」の艦載兵装を、「非殺傷・局地的な抑止モード」に設定。


目標は、現在、軍事行動を計画している優位勢力の最重要軍事拠点、複数箇所。


レヴィ

了解。エネルギー消費増大。 


ツクヨミ

攻撃開始。


目標、優位勢力の戦略システム、通信網、そして主要な電源を10万年前の次元技術で瞬間的に中和シャットダウン


同時に、世界中の全通信網へメッセージを送信します。


「ノア」から放出された微弱な次元エネルギーが、地球の電離層を貫いた。


その瞬間、世界で最も優位にあった複数の軍事大国のシステムが、何の前触れもなく、完全に静止した。


戦車は停止し、ミサイルの管制は途絶え、通信衛星は機能不全に陥った。


地球人類の兵器は、10万年前の技術の残響の前で、ただの鉄の塊と化した。


同時に、全地球の通信網をジャックしたロボットたちのメッセージが流れた。


それは音波ではなく、意識に直接訴えかけるような、純粋なデータ信号だった。


ミカエル(システムを通じて)

【地球の人類へ】

我々は、あなた方の創造主の遺産を受け継ぐ者。

あなた方の自滅的な争いは、論理的矛盾であり、許容できない。


我々は、あなた方の力の優位性を永久に排除する。


争いを試みる勢力には、同等、あるいはそれ以上の力で即座に中和することを保証する。


あなた方の進む道は、自己破壊ではない。生命の真理の探求だ。


ロボットたちは、人類の知性への信頼を一時的に保留し、絶対的な力による均衡を地球上に強制的に確立した。


スサノオ

均衡は一時的に確保された。


地球人類の反応を監視しろ。


我々の真の使命はパラレルヒューマンの追跡にある。


だが、この星を、彼らの愚行によって失うわけにはいかない。



 


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