肩こり解消40分コース ハリー4
気づくとハリーは、己のテントのベッドに横たわっていた。
「しまった! 俺としたことが……眠っている間に、部下がテントまで運んでくれたのか」
腹の上に、何かが置かれている……。
手に取ってみると、それは紙の袋であった。
ビリビリと破いて中を覗くと、白くて妙な匂いがする、厚みのあるシートがいくつも入っていた。
シートには透明な膜があり、剥がしてみるとベトベトしている。
袋には見たこともない文字が印字されていたが、一緒に描いてある絵を見ると、どうやらそのシートは、肩や腰、首筋に貼る物らしい。
試しに一枚貼ってみると、その部分にスースーとした心地良い清涼感が広がった。
「おおっ、これはなんとも気持ちがいい……!」
ハリーは立ちあがって、肩をグルグルと回してみた。
痛みはない。疲労感もない。一切の引っ掛かりがない。
今までの辛さが嘘のような軽さである。
「これならば、何不自由なく剣が振れるな。セイラ殿、感謝するぞ!」
翌日。ハリーは戦場で馬に乗り、声を張り上げ指揮していた。
相手はダークエルフの軍勢で、数は少ないが魔法が厄介だ。
ハリーは騎馬隊で相手を追い込み、戦士隊で各個撃破を狙うことにした。
「騎馬隊は右手から回り込み、敵を追い詰めよ! 後衛は負傷者と入れ替わり、前線を維持だ!」
目論見通り、敵の数はみるみる減っていく。
と、矢が風を切り、ハリーの頭に飛来する。
「なんの!」
ハリーは剣を振るい、見事に打ち落とす。
周囲の部下たちが「おおっ!」と感嘆の声を上げた。
「中々よい腕をしている! だが、このハリー・シュローダーの命を奪うには、少し足りんな」
ハリーがそう声を張り上げると、木の上から驚いた声が響く。
「ハリーだと……? お前があの、勇猛果敢で名高いハリー・シュローダーかッ!」
「そうだ。貴様は?」
樹上から、背の高いダークエルフが飛び降りる。
「俺はマグローリア。今、お前たちが戦っている部隊『静寂の矢』のリーダーだ。ハリー・シュローダー。お前との一騎打ちを所望する!」
部下の一人が、馬上のハリーに囁く。
「ハリー様。我が軍の勝利は確実です。そんな誘いに乗る必要はありません」
マグローリアは、大声を出す。
「俺の部下たちは、俺の命令がなければ死ぬまで戦い続けるぞ!」
ハリーは頷くと、馬を降りて剣を構えた。
「いいだろう。こちらも無駄な血は流したくない」
部下の命がかかっている。
お互い、時間を浪費する気はなかった。
ダークエルフは両手に短剣を構えると、ステップを踏みながら素早く距離を詰める。ハリーは剣の切っ先を相手に向けて、いつでも反撃できるよう構えた。
間合いに入ると、マグローリアはためらわず、二つの短剣でハリーの首と心臓を狙ってきた。片方を跳ね返しても、片方は致命傷。もし命をとられても、相打ちになる。捨て身の攻撃である。
対するハリーは、剣を下から跳ね上げる一撃だった。勝負は決まったかと思われた、次の瞬間。
ハリーの剣がユラリと揺れて、8の字の軌跡を描く。二本の短剣が空中に舞い、たったの一撃で勝負は決まった。
武器を失ったマグローリアは、ガックリと膝をついてうな垂れる。
「完敗だ……。約束通り、部下たちに投降を呼びかけよう」
ハリーはフッと笑い、剣を収める。
「いいや、お前も十分に強かった。昨日までの俺であったら、死んでいたよ」
次は…アロマヘッドスパ60分コース クリス1
今日中に投稿予定です。