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癒しの異世界リラク~耳かき、整体、ヘッドスパ、足つぼマッサージなど~  作者: 森月真冬


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10/10

アロマヘッドスパ60分コース クリス3

 と、お湯が止まった。


 チュ……チュ。プチュ……プチョ。

 ムニョ……クチュ、クチュクチュ、クチュッ。


 頭の上で何かが漏れ出る音、それがかき混ぜられる音がする。


「シャンプーつけますね」


 その声と共に、覆うように両手が頭に被さった。

 ヒヤリとしたジェル状の何かが、髪と頭皮にじんわり滲む。

 赤毛の男の指が立てられて、指先の腹で頭皮をリズミカルに、揉むように動き出した。


 シャワシャワシャワ……シャワ、シャカシャカシャカ……。


 指は前髪の生え際、こめかみ、耳の横、後頭部へとゆっくり移動していく。


 コシュコシュコシュ……クリックリッ……ゴシゴシゴシ、ゴシュゴシュ。


 かき混ぜられた部分が、冷たくてスースーする……。

 先ほどつけられた、薬液の効果だろうか?

 お湯で温められて血行が良くなっているのに、頭皮が冷たい感じがするのは奇妙な感覚だ。


(お、おおう……人に頭を洗ってもらうのって、こんなに気持ちよかったのか……)

 

 クリスはすっかり脱力して、口をポカンと開けて目をつぶってしまう。


「お痒い所はありませんか?」


「えっ? あ、あの、頭頂部の左側……」


 急に話しかけられて、素直に答えてしまう。

 指先は指示した場所へと的確に飛び、軽く爪を立てられた。


 ショリショリショリ、シャリシャリシャリ……シュリ。


 爪は、痒みの元をピンポイントで刺激する。

 『掻かれる』と『撫でる』の中間くらいの、ごく弱い刺激である。

 今まで、ただなんとなく頭が痒いから掻いていたが、本当に痒いのはそこなのだと、そう自覚するような正確な場所だ。

 クリスは背筋がゾクゾクした……。


「お湯で流します」


 シャワー……ショワショワショワ……。

 シュワワワッ。


 また、あの柔らかくて優しいお湯の流れだ。

 薬液を落とすように、指先が頭皮全体を撫でまわす。

 入念に、入念に。毛穴にギチギチに詰まった皮脂が薬液に溶けて、周りを押されてズルズル絞り出されるような。そんな妄想をしてしまうような、力加減だ。

 お湯が途切れた。髪をフワフワの布で拭われる。


「では、スパクリームでのマッサージに入ります」


 プチョッ、ムニュニュ……ニョルッ。


 頭皮に、クリームを撫でつけられる。

 いい香りだった。バニラのような、黄桃のような、甘い香りだ。


 スーッ、シャ、スーッ……シャ。


 指先の他に、目の粗いクシを使っているらしい。

 さきほどの薬液の効果か、頭にはまだスースーとした清涼感が残っている。


 そんな頭を挟むようにして、手で側頭部をギューっと挟まれた。

 中指先は頭頂へと添えられている。

 こめかみ、耳の上。手の平の肉厚な部分で、その部分をグリグリと押される。

 力強い。少し痛みを感じるほどだ……。


 グーーー…………ッパ!


 と、しめつけられていた頭蓋骨が解放される。

 同時に、血行が戻って目の裏が赤くなってフワっとし、こめかみがカーッと熱くなる。

 後頭部と首をつなぐ筋肉に、親指がグイっと入ってきた。


 ぐり、ぐり……ぐいっ。


 頭を持ち上げられて、可動域を確かめるように、何度も左右に回される。

 決して無理やりではなく。一回ごとに、少しずつ筋肉をほぐすように。


 ぐっ……ぐいっ……ぐり……ぐっ……ぐいっ……ペキィ。


 後頭部から肩にかけて、温度が上がって徐々に首の動く角度が広がってきた。

 頭頂部を、親指で強く押される。

 先ほどほぐされた肩が、今度は上から押されて少しだけ沈み込む。


 ぐぐぐぅー~……ッパ!


 髪の生え際にそれぞれの指先が当てられ、頭皮を前後左右にスライドさせるように動かされる。


 グニッ、グニッ、グニッ、グニグニグニグニグニッ。


 指先は左右に押したり開いたり、あるいはグルグルと回転させたり、縦横無尽に頭皮を動かしまくった。

 この頃にはもうクリスは、連日の仕事の疲れとあまりの気持ちよさに、半分寝ているような状態である。


(な、なんだ、この心地よさは……。頭を触られてるだけだというのに、人生で一番気持ちいいぞ……!)


「髪をコンディショナーで整えます」


 耳に遠く、男の声が響く。

 また髪全体にクリームが回り、柔らかなお湯で流された。布で水気を拭かれる。


「ドライヤーで髪を乾かします」


 クリスは、赤毛の男の声を聞き、「ああ」とか「うう」とか、そんな声を出す。

 もう、ほとんど眠ってる状態だ。


 フォーーーーーーーーーン!


 奇妙な高音と共に、熱風が髪に吹き付ける。

 髪の水分が飛ばされて、急速に乾いていくのを感じる……。

 それと共に、男の指がパタパタと軽く頭皮を叩き……。


(あ、ダメだ……。これは完全に寝てしまう……)


 まあ、いいか。

 寝たからと言って、叱られることもあるまい。仕事の時間が削られるのは困るが、これほど気持ちのいい眠りならば、その価値はある。

 クリスはそう思い、眠りの中に落ちていった。

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