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ずっとあなたが好きでした。だけど、卒業式の日にお別れですか。  作者: 雷鳥文庫


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研究所にて。

それから、しばらくは研究に打ち込んだ。

龍太郎も廊下から見ている。時々アラエルさんと色々話していて、楽しそうだ。

試薬を混ぜるときは、ゆっくりと天地返しを五回した方がいいとか、ガラスナイフだ、切片切りだとか、目を輝かせて話している。


「身体に優しいシャンプーやら洗剤やらを作りたいの。」

先日、エリーフラワー様が言った。

「つまり、ベビー用品を改良、開発したいのよ。」 


なるほど。確かにまだベビー石鹸とかはなかった。

自然派の原料で無添加で、オリーブオイルがいいか、シアバターがいいか、色々と研究をしている。

そういえばレイカさんは、

「私、保湿は馬油一辺倒よ。」

と、言ってたっけ。


「あとはね、自然な香料も欲しいの。アンディ様が、UMAにあげるんですって。今はバラの香料がご飯らしいの。」


「もしかしたら、チーパくんですか?」

エリーフラワー様がにっこりした。

「そうそう!良く知ってるわね!」

「…吸ってるところを見ましたから。今、秋バラが咲いてますよね。あとは季節がら、金木犀はどうですか?」

「金木犀の香り!良いわね、ソレ。」

早速、水蒸気を使って抽出だ。

精油を作って、ブレンドしてエタノールを、とピペット操作をしていたら、廊下の母と目があった。

「え?」

(何かさ、見学にきたんだ。アラエルが連れてきた。)

やはり廊下にいる龍太郎から念話が来る。

(メリイの華麗なピペット捌きを見て驚いてたぜ。)

龍太郎の話を聞きながら小瓶にふたをしてリズミカルに振って攪拌する。

「そう。」

とにかく仕事をするだけだ。


昼の休憩時間。母のところに行く。

「お母さん、来てくれたの?」

「ええ、凄いのね。白衣着て実験していて、別人みたいよ。」

そこへイリヤさんが来た。

「メリイさん、お食事をお部屋に運んで置きましたよ。お母様とごゆっくりお召し上がり下さい。」


母を寮の自室に連れて行った。

みんなで昼ごはんを食べる。

トンカツだわ。美味しい。ハイドさんが作ったのね。

龍太郎もここで舌鼓だ。

急に母の分を増やして大丈夫だったかな。

「こないだも思ったけど広いわよね。それに警備も厳重だわ。」


イリヤさんが来て笑った。

「メリイさんは最重要人物ですからね。私も泊まり込みで護衛してますし。以前はレプトンさんも、住んでらっしゃいました。」

「まああ。バストイレ付き。ミニキッチンもあるのね?」

「簡単な食料庫も完備されてますよ。危険な時はここに篭れるように。」


「お母様はどこにいるの?」

学校の立ち上げのお仕事をしてる筈だけど、そっちに寮はあったかな?


「先日までシェルターにいたけれど、今はレプトンの所にいるわ。」

「ああ、ネモ様のお城の寮なのね。」


では、お食事も出るしお洗濯も頼める筈だ。

こないだまで公爵夫人だったのだから、一から家事は出来ないだろう。


「一応ね。シェルターでは自立の為に少しずつ家事を習ったの。それにこの国は掃除機と洗濯機があるから、少しは自分でもやっているの。」


「なるほど、ご立派です。いずれレプトンさんも、寮を出られるでしょうし。その時ご自分で家事が出来るのと出来ないでは違いますよ。

まあ、人をお雇いになるでしょうけども。」

イリヤさんが頷く。


そこで母が顔を赤らめて。

「今日はコチラでお風呂に入っていいかしら。

あちらのお部屋には付いてなくて。その、落ち着かなくて。」

「ああ!シェルターはともかくあちらでは共同風呂ですからね。」

シェルターは身体に傷がある女性が多いから、希望すれば一人ずつ入れるそうなのだ。


「オッカサン。ココに住メバ良いじゃん。」

「えっ?」

「部屋余ってるジャン。」

確かに。以前はもう一人クノイチがいたのだ。

龍太郎が来てからは減っている。

「ああ、私、外付けの部屋に移っても良いですよ。」とイリヤさん。

実は、このリビングから隠し通路があって、もう一つ外に部屋がある。以前はシンゴさんやハイドさんが詰めていた。


「…メリイ、貴女は本当に守られているのね。」

「まあ、龍太郎君がいればぶっちゃけ誰も要らないんですけどね。」

「ヨセヤイ。俺ダッテ、バスルームには入れナイぜ。」

イリヤさんが続ける。

「こちらから、陸蒸気、エリーフラワー線が出てますからね、学園方面。

あちらにはまだ保育園しかないですが、ここの所員でお子様を預ける人もいますから。

外に住んで通ってくる人もいますしね。」

「オオ、通勤モ便利ナンダナ。」


「…考えてみてもいい?どうせ日中はお互いお仕事でしょ。」

「う、うん。」

「ソレニナ、ココニハ俺ト、イリヤという、第三者ガイル。行き詰ったりしないと思ウゼ。」

母は真っ直ぐ私を見た。

「いい、来ても。あちらは気が休まらない時もあるの。」

「わかりますよ。ちょっとだけ、騎士とか影とかが多くて少しガラが悪いですよね。」

イリヤさんが同意している。

「ええ、夜中にドアを叩かれて酒盛りのお誘いとかね。

お母さんもどうですか?なんて言われちゃって。いえ、悪気がないのはわかるんだけど。それからカードやらダーツやら、夜遅くまで食堂でやっていて。

お水とか飲みに行きにくいの。」


あちゃあ。イリヤさんと顔を見合わせた。


「わかった、ウチにいらっしゃいな。

エリーフラワー様にはお話をしておくわ。

とりあえず今日は泊まって。」

「ありがとう。」

母は泣き笑いの表情をして抱きついてきた。




その背中が薄くなっているのに気がついて切なくなった。

ごめんなさい。心配と苦労をかけてきました。

親孝行するわね、お母様。

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