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母よ。

誤字報告ありがとうございます。

※今回からメリイ視点に戻ります。


サード兄から手紙が来た。母は今、実家に帰っているらしい。

アラン様の前で泣きわめいたとか?


夕方寮の部屋で何度も読んだけれど、よくわからない。

「ハイドさん、何か知ってる?」

今日は、ハイドさんは茶色のカツラだ。

髪型はダビデ像みたい。目鼻立ちがくっきりしてるから、似合ってる。

(なあ、アイツ、ダビデ像みたいだよな。)

龍太郎から念話がくる。

「うん。」と答える。


「おや、また二人で通じあってるんですか?」

にこやかに笑ってハイドさんが来た。

それから真面目な顔になって、

「ヤマシロがそこにいたらしいけど、アイツ腹を立ててました。レプトンさんは戻ってきてるんでしょ。あちらから聞いたほうが。」

「それがね、またトンボ帰りしちゃったの。」


「うーん、そうですか。簡単に言うとお父上が悪いかな?とにかく、昔の価値観なんですね。」


ハイドさんが、奥歯に物を挟んだ様な言い方をする。

「お母上はメリイさんが羨ましくて、それを認めたくないみたいですよ。ひどい縁談を用意したのも、お父上に止めて欲しかったとか。  

コチラを向いて家族と向き合って、ちゃんと考えてってね。

それに、お父上がお城の事務官を巻き込んで、あの女狐に嫌がらせをしたのが、許せなかった様なんです。」


え?そんな事を?


そこへ。

「メリイ。母上を引き取るぞ。もう父上には愛想が尽きた。」

レプトン兄が入ってきた。

「え?そうなの?」

「母上は壊れた。とにかくアラン様の前で泣き喚いた。お前が自由に結婚できる。

それが羨ましくて、引き金になった。」

確かに。父と母の間によそよそしいものが流れているのは感じていた。


「とにかく、なんとかアラン様の御前から失礼した。

あんな無礼な事をして。大目に見てくださって良かったよ。

その後、自宅で父上が怒鳴りつけたけど、母上は無表情で、ああ、とか、はい。としか言わないんだ。」


「そんな。」

「それから母上がポツリポツリと言う事をつなぎ合わせるとだな。

自分は婚約寸前の相手がいたのに、無理矢理、父と結婚させられたのだと。お祖父様の言いつけでな。」

「え!」

「自分はダメだったのに、自由に結婚できる、おまえが羨ましい。喜ばなきゃいけないのに、喜べないのが辛いんだって。」


「…。」


「父は困惑していた。公爵家に嫁げて喜んでいるのだとばかり。って。」


「ウワア。」

龍太郎も固まってる。

「あの時、婚約破棄してくださいって言ったでしょ!貴方だって好きな人と結婚すればよかったんです!

いつまでも写真を眺めて!未練タラタラで!って言うんだよ。

すると父上が固まって。見ていたのか。って!

なあ、おまえどう思う?俺、頭ぐちゃぐちゃになっちゃって。」


「それで母上はご実家に帰ったのね。」

「お祖母様もカンカンだ。結婚させるんじゃなかったって。

でもな、伯父さん達の手前、いつまでもそこに厄介になってる訳に行かないだろ。

俺のところに引き取るよ。父上から引き離す。

おまえのところじゃ、マズイよな。」


「…そうね。」


リード様にご相談する。そう言って兄は出ていった。


八月のある日。王妃様に呼ばれた。


「素麺を振る舞って下さるそうですよ、

と言っても作るのはオイラと、レイカさんですけどね。」

ハイドさんは屈託の無い笑顔で笑った。

レイカさんは六月に双子の女の子を産んで、そろそろお料理も作るらしい。

アンディ様が過剰な程に囲い込むので、産後会ったのは、よほど親しい人のみだ。

アンディ様にお会いした時、お祝いを述べたが、


「ちょっと教えて?」


と、レイカさんの前世の旦那さんについて根掘り葉掘り聞かれて閉口した。


今回久しぶりにお会いする。

龍太郎が、追加でダイヤを持ってきたのをお祝いで渡す。

「ぜひ、お嬢様にも。」

「あら!ありがとう!ブルーダイヤ?これ?」

「洗剤の名前ミタイでイイダロ?」


金、銀、パール、プレゼントね!


私達にしかわからないネタでほっこりだ。


それから隠れ家レストランに入ったら、王妃様と、リード様。ヴィヴィアンナ様もいらっしゃった。


ハイドさんの茶色のカツラは王妃様たちにも好評で、

「ダビデと言うより、アム○・レイみたい。」 

とおっしゃった。

「ホント!ホント!」

龍太郎も大喜びで同意する。

「褒めてますか?」

ハイドさんは困惑顔だ。


美味しい素麺を頂いた後で同席されていたリード様にご相談した。

「うん、聞いてるよ。なかなか大変みたいだね。

お母上をコチラに引き取るんだよね。」

「まあ貴族なら良くある話だけどね、親が結婚相手を決めて強いるのは。」

王妃様がため息をつかれる。

 

「もう、ご両親は離婚なさったら?いつまでもお父上に恨みを持っていてもね。

しばらく別居されるのでしょ。そしてそのまま、ね。」

レイカさんが言う。確かに。それが現代の日本での考え方だ。


「コチラでメリイさんがイキイキ働いているところをお母さまに見せつけてやるのよ。

貴女の価値をわかってないわ。酷い縁談でも押し付けて、結婚させて体裁を整えたいなんて。許せない。」

レイカさんが自分のことの様に怒って下さった。


この国には虐げられた女性が逃げ込むシェルターがある。

王宮の元侍女長、ヘレナ様が責任者をやっているとか。

しばらく母はそこで心の傷を癒やすこととなった。


その後、龍太郎が

(俺が人間だったらなあ。他の奴と結婚させないのに。つれえなあ。チキショウ。そんな親なら焼いてやろうか?)

と言うのが聞こえて来て、泣けてきた。


一週間後。母が来たらしい。

レプトン兄がシェルターに連れて行った。

そこなら父の手は届かない。

父は離婚は渋っているそうだ。妻がいないと体裁が悪いのだって。


そして次の日。ルートが事件を起こして捕らえられたと、聞いた。

「何かね、ヨソの国の間者が入り込んでいたらしくてね。ま、ルートは薬を盛られたんですよ。」

ハイドさんはそれだけを言った。


更に一週間後。


朝一番でアンディ様が来た。

「ちょっとね、コイツに喝を入れてやってくんない?

随分弱ってしまっててね。」


物陰からゆらりと現れたのは。


「アレ、シンゴ?」

「シンゴさん?」

「メリイさん、龍太郎。会いたかった。」


泣きそうな顔をして、シンゴさんが立っていた。


「あっちで色々あったらしくてね。

いやあ、おまえにハニトラの才能があったとはね。」

「アンディ様。からかわないで下さい。」 


「ニ、三日休暇をやるからゆっくりしなよ。

なあ。美味いモンでも食って。ハイド、頼むよ。」

「ガッテン承知のすけでございます。」


いいよね、そのフレーズ。アンディ様は声を立てて笑って出て行った。


「とりあえず、昼を一緒に食おう。な?

何か食いたいものあるか?」


「巨大なハンバーグ。あ、ワラジサイズかあ。」

「あ、私も。」

「オレも!頼ムナ!」

「あいよっ!でさ、シンゴ、オマエ休みのとこ、悪いけどよ。メリイさん今から仕事なんだわ。

オレの代わりに見張って?」


「ああ!それはもちろん!」

シンゴさんは晴れやかに笑った。


「おやぁ。珍しいわね。」

「オッス、イリヤ。」

廊下でイリヤさんと合流した。


実験室の窓からチラチラと廊下を見たが、シンゴさんは龍太郎をかまっていて、楽しそうだった。


昼。

「大分顔色が良くなったな、シンゴ。朝なんか土気色だったぞ。」

「そうか?美味いな、コレ。」

「何があったんですか?」

そこでシンゴさんは食べ終わってナイフとフォークを置いた。


「うん、そうですね。メリイさん。あの馬鹿達の相手をしてましたから、気持ちが荒んでました。」


そして伸びをした。


「ここは、良い。気持ちが落ち着きます。

ブルーウォーターに戻ってきたいなあ。」


シンゴさんはポツリと言った。


「オメエ苦労したんダナ。黒い瘴気がまとわりツイテルゾ。」


ぶるん。

カチャ。


身体を捻って龍太郎がウロコを一枚落とす。

それは虹色に輝いていた。


「ホラ、ヤルヨ。」


「コレは?」


「ドラゴンのウロコだよ。ナンカサ、毒の浄化ニ効くンダッテヨ。」


「あー、これ。毒消しの水筒に使われてるやつだ。

ちっこいカケラが埋まってるだけだけど、

効果は抜群だぞ。」


ハイドさんが覗きこむ。


「ソウイエバ。千年前、人間共が取りにキタナア。」


「あ、手にもったら見る見る楽になったかも。

女狐からの精神的ダメージにも効くんだな。 

龍太郎ありがとうよ。」


「良いなあ!龍ちゃん、オレにもくれよ。」

ハイドさんが食いつく。

「以前住ンデタトコロにアル。火山の近クネ。取って来るヨ。落ちるたびに貯めてタカラ。まず、メリイにアゲテカラだな。」


「うん、やったあ!」

喜ぶハイドさん。


シンゴさんも上機嫌になってニコニコして見てる。

疲れも癒されたみたいで良かった。


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父親のせいで実家が崩壊しちゃったな……
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