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卒業式。

誤字報告本当にありがとうございます。

感謝しております。

おれはきれえなおんなとけっこんしたい。

それを、

「俺は綺麗な女と結婚したい。」

に変換するのに三秒かかった。


さて、どうするか、

「まあ。私のことを綺麗だなんて。」

と返すか、

「そうそう、私のような美人と結婚できるなんて貴方幸せものよ。」

と返そうかと思った。


そうすると、

「けっ!わかってないなあ!」

とか、

「自分を美人と思ってるなんて、おめでてえな。」と来そうだ。

どちらにしても空しいので無視をすることにした。

一週間前から私の心には、この男のことは何も残っていない。

切り捨てている。勝手にどうぞという感じだ。



後ろから兄達が怒りのオーラを漂わせてやってきた。

サード兄が冷たく笑って尋ねた。

「ルート、その美人に、具体的なあてはあるのか?」


レプトン兄がとりなした。

「メリイのことだろ?婚約者だもんなっ。」


ここはひとつ上のサード兄の卒業式のあとのパーティ会場である。

グランディ王国の王立学園だ。通ってる生徒はみんな貴族なのだ。


先ほど王太子のアラン様のご挨拶が行われた。

「みんな卒業おめでとう。立食パーティだが楽しんでくれたまえ。ご家族もご一緒にな。在校生諸君、卒業する先輩に最後のご挨拶をするならこの機会に。」

隣には護衛のアンディ様がいて、ついじっと見てしまった。

――ああいう風に目つきが鋭い人だったな。

忍びとかお庭番はみんなそうなのだろうか。


さっき飲み物を取りに行ったら、

「アラ、さっきこっちを熱っつい目で見ていた娘さんじゃないの。」

アンディ様から声をかけられた!

「す、すみません!つい、アンディ様が素敵で見惚れちゃいました!」


「ふーん?…嘘は吐いてないみたいね?

まあ貴女見どころあるじゃないの!

でもごめんねえ。私これでも妻帯者なのねん。」

アンディ様が左手の指輪をヒラヒラさせた。


すると、

「メリイどうしたんだ!アンディ様、うちの娘が何かご無礼を?」

「ああ!グローリー公爵のお嬢様か。何でもないよ。」

にこやかにアンディ様は去っていった。

「おい、あまり王太子様たちをガン見するから、探りにこられたんだ。でもアンディ様がオネエ言葉のままだったから、怒ってはいらっしゃらないな。」

父が青い顔をして言う。


――なんだ、グローリー家の娘か。

―――ええ、なんの意図もないようですー。


二人の会話が聞こえてきた。怖い。

 

アンディ様は隣国ギガントとの戦いでの功労者だ。

敵将の首を取ったと聞く。

普段は優しげなオネエ言葉をお使いになるが、それが取れた時は狂戦士となって暴れ回るときだと言う。

噂では三桁の人数を屠ってるとか。

ずっと、影からアラン様の護衛をしてきて、戦果をたてるたびに出世なさって、今は伯爵だ。


その後、ちょっとだけお酒に酔った婚約者のルートがやってきた。

兄と父が挨拶周りをしている時に、だ。

わざわざそれを見計らって。


「後一年だよなあ。俺らの卒業まで。」

「そうね。」

「俺とお前とレプトン兄貴とさ、三人で犬っころみたいに一緒に仲良く育ったよねえ。」

「そう。私とレプトン兄さんは双子だからね。」


以前も言ったがうちの父とルートの父は親友だった。

馬車の事故で二人そろってルートのご両親は亡くなった。

駆けつけた父に一人息子を託して。

父は公爵、ルートの父は子爵。領地が隣で良く遊んだそうだ。

実は伯爵家の三男だったのだが、ルートの母に惚れ込んで婿入りしたという話だ。



「おじさんには感謝してる。ちゃんと引き取ってくれて、学校にも入れてもらった。」

「ええ。卒業までの学費と寮費を持つと約束したわ。」

「仕事も、卒業したらおじさんの仕事を手伝うことになってる。」

「…そうね。」


――どうかしら。


そこでグラスに入ったワインをくいっ、とあけて

とん!

空になったグラスを乱暴にテーブルに置くルート。

「俺たちは、婚約者だよなあ?」

「そうね。貴方のお父さまの遺言だったと聞いたわ。」

命絶えるまえに父の手を握って頼んだそうだ。


――どうか、どうか。息子をたのむ。出来ればメリイの婿にしてやってくれ。

お互いの子供を結婚させたいねと以前話したこともあったじゃないか――


「あの時お互いに5つで仲良く育ったよな。」

小さい頃から刷り込めば仲良くなるだろう。

それに娘を外に出さずに済むしな。

何、俺の手で見所がある奴に育ててやれば良い。

そう父が言ったと母から聞いた。


それなりにルートは優秀に育った。学校の成績も良い。剣の腕もなかなかだ。

だけど、少し傍若無人に育った。

「俺はな、モテるんだよ。」

「そうらしいわね。」




そして兄達が戻ってきて冒頭に話は戻る。


「もう一度聞く。結婚したい美人とは誰だ?」

「サード兄貴。ロージイです。薔薇の様に綺麗でしょ。この学年では一番だ。」

「おいっ、黙れよ。」

「何でですか。レプトン兄貴。なーんで好きな女と結婚できなーいんでーすかーー。」


カツン。

父が持っていたグラスをテーブルに置いた。

いつの間に来たんだろう?


パンパンパン!

父が拍手をする。

「なるほどね!そうか。結婚したい娘がいるのか!

いや、まったく素晴らしい発言じゃないか?」


周りが静まりかえる。


「おじさん。わかってくれるんですか?」

「ははは。分かるとも。君の父親も愛の為に伯爵家から子爵家に婿入りした。

ははっ!君にもそういう情熱の血が流れているんだね?

いやー、めでたい。」


ああ。物すごく怒ってる。

「君も17だ。16から結婚も出来る歳だ。一人前という事だ!もう私の庇護も要らないな!

将来の伴侶を自分で見つけることができたのだからな!」

「え、メリイと結婚しなくて、良いんですか?」

「もちろんだとも!悪かったねえ?ウチの家で囲いこむようなマネをして。」


周りの好奇の目がささる。いたたまれない。


「しかも!ロージイ嬢とは!

ウチとはね、なかなかの因縁のところだね。恐れいったよ。どれ?ご挨拶しようか?」

「ロージイおいで、おじさんが僕らの結婚を許してくれるって!」

そこで赤いドレスの女性が出てきた。

「嬉しいわ。」

――出てくるんだ。そうなの。

すごい心臓ね。状況がわかってないのかしら。


「みなさん!

私はメリイと婚約破棄をしてロージイと結婚します!!」

 

ああ、言ってしまった。


周りは水を打ったようになる。


「馬鹿、オマエ、状況わかってんのか!」

レプトン兄がさけぶ。


「そうだ。もうおじさんと呼ぶな。グローリー公爵だ。もうこの日を限りに君の保護者ではない。」


父の目は氷のように冷たかった。


「父上、約束通り卒業までの学費と寮費は出してあげてください!お願いします!」

レプトン兄が懇願する。


「――そうだね、それはそうしよう。

ではな。ルート・カドック子爵令息。

そちらのロージイ嬢と仲良く、な。

ロージイ嬢。お父上には私からお手紙を差し上げよう。いつもお世話になっております、とな!

学生時代からの因縁をよくまあ、引きずってくれたものだよ!

何、ルートはもともと正式にも、うちの養子でもなんでもない。

すぐに婿入りできるよなあ!

うちの娘に恥をかかせた慰謝料も請求したいが、無い袖は振れないだろうし。

そちらに払ってもらうかもな。」


父はさっさと退場した。サード兄もだ。


「え?」


「おい、ちょっとこい!ルート!」

「レプトン兄貴?」

「もう兄貴と呼ぶな。このバカ!いいか、俺はまだオマエに情がある。だから忠告する!

いいか、あと一年死に物狂いで勉強しろ!

そしてお城勤めの道をもぎ取るんだ。文官でも、騎士でも。そうしないと生きていけないぞ!」

「えっ?だって仕事は決まって?」

「そこまで馬鹿か?身内でもないものに父が仕事をくれるもんかっ!」


「え?なんだよ、それ?」


「あとな。領地の屋敷に大切な私物はあるか?

持ってきてやるよ、オマエはもう、ウチの領地には入れないからな。」


「良いじゃありませんか。」

「ロージイ?」

「お父さまの後をついで子爵になられるのでしょう?王都のお屋敷はあるのでしょう。」


「―あんた、結構調べてるんだな。ロージイ・ベリック子爵令嬢。

そうだよ、ルートのご両親のお屋敷はちゃんと、ある。

小さいけどな!それだけじゃやってけないぞ!

ルート!オマエの父親だって王宮の騎士をやってたんだ。

でもな、小さい屋敷でも管理は必要だ。

卒業したら渡してやろうと父が思って、管理していたのさ。その手配や費用もウチが出してるけどな!

とりあえず王都のお屋敷の管理人は引き揚げる。

または自費で雇うんだな!

もちろん。ウチからの調度品も。

――あれは新婚夫婦の為にとウチの母が用意したものだ。」


そこへ、父が戻ってきた。


「何をグズグズしている。行くぞ。

レプトン、メリイ。ほらお前たちの卒業証書だ。

――本当は飛び級で二人とも今日卒業だった。

ルートと一緒に卒業を合わせる、来年にすると言ってたが、

その必要はなくなったな。

…行くぞ。」


「ほう。なるほどね。」

「あ、これはアラン様!お見苦しいところをお見せして!」

「ああ、気にするな。母上に言われてたんだよ。

卒業パーティで婚約破棄をするものが出るかも知れない、と。」


「なんと!」


「本当にそんな輩が出るとはねえ。

公爵、貴方は立派だ。本当に腹の中が煮えくりかえっているだろうに。

貴方に瑕疵がない事は私が保証しよう。」

「有り難き幸せ。」


「では、この件は王にご報告しておく。貴族間の婚姻は把握していただかないとな。

行くぞ、アンディ。」


「ははっ。」


私達も退出した。


「レプトン。お前は知らなかったのか?あの二人のことを。」

「サード兄上。噂では聞いてましたが。」


「一週間前。」

父が話しだした。

「あの馬鹿者は中庭であのアバズレにプロポーズしたそうだ。

熱い接吻つきで。あのアバズレはメリイがそこにいる事を知っていた。見せつけてきたんだ。」

 

「えっ、そんな。」


「レプトン。もうあの馬鹿のことは放っておきなさい。全く舐められたものだ。」



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シリアス調の王国スピンオフ… これからのお話の広がりが楽しみです バカ男の未来は光も指さない真っ暗闇でしょうけど
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