ミネラルショー。
五月。
随分、龍太郎の体力が復活したと言うので、本気で大きくなってもらう事にした。
(ちょっと、外に出るよ。)
「うん。」
そして敷地の外に出る。
イリヤさんとヤマシロさんがついてきた。
研究所から少しいくと荒野だ。
実験しやすい為と聞く。住宅街だと音とか薬品臭とかあるものね。
「ヨオシ、デビル○イングーー!!」
懐かしいデビル○ンの掛け声で羽を広げる。
それと同時に大きくなる。
「うわああ!」
「研究所より大きいわー!」
「カッコいいよ!龍太郎!」
「ダロ?ダロ?!」
羽ばたいて空中に舞い上がる。うわ、すごい風だ。
ラド○が建物を襲っている様だ。
上空高く舞い上がり、火山の方に飛んでいった。
「な、何事なのっ!?」
エリーフラワー様が飛び出してきた。
「久しぶりに飛んでみたかったみたいなの。」
「あ、ああ、そうなの。」
エドワード様も出てきて、隣りに白狐様がいる。
コーーン。
(人騒がせな野郎だ。みんな怯えているではないか。
ネモが飛んでくるぞ。)
白狐様の言葉がダイレクトに頭にひびく。
「ネモさんが来るかもと、言ってござるな。」
確かにあれは脅威だ。
遠くの空を飛んでいるのが見える。
もしかしたら、グランディからも見えるのだろうか。
ネモ様が馬に乗ってやってきた。
「何事ですか!牧場や動物園の動物が軒並み怯えています!」
「あの、飛びたかったみたいなんです。」
「…あ、あ!そうですか。ではもう少し小さなサイズになってくれとお伝えくださいね。
しかしたまには全力で羽を広げてみたいのは本能でしょうしね。
…ヨシ、今回はアラン様とウチの子の誕生祝いのセレモニーだと言うことにして広めましょう!」
ネモさんの手から鳩が飛んでいく。
各所に連絡するみたいだ。
「龍太郎、もう少し小さなサイズになって帰って来て。風量凄いよ。」
つぶやくと、
(がってんだ。)
返事が聞こえてきた。
キュー。
「おお、キューちゃんが、アイツわかったみたいだぞ、と言ってるでござる。」
龍太郎はハゲワシサイズになって戻ってきた。
コウノトリみたいにふくろを口から下げてる。
「コレ、土産。取ってキタ。」
石コロが入っている、これは?
「おお!見事なダイヤだ!鉱脈でも見つけたのかい?」
ネモ様が声を上げる。
「違えよ。俺ガ作ッタ。ダイヤは炭素カラ出来ルッテ、言うジャン。実験シタ。高熱ト圧力かけたし。」
「凄いですわー!!」
エリーフラワー様が絶叫する。
「マア、火口に入レルから。マグマノ中ニモ。」
「火の鳥なの?龍太郎?」
「手塚治虫のか?どうカナ?」
ギューコーーン!!
「あ、怒んないでござるよ、キューちゃん。
キューちゃんが凄いのはわかっているから。」
カッ、コロン!
「おお!キューちゃん、お腹の中にまだアメトリンを持っていたのでござるか!?」
(以前、砂漠の国で我に捧げられたものだ。
幾つかは記念にとっておいた。元は普通の水晶だったがな。)
頭に響く白狐様の対抗意識。
「良いんジャナイの?岩石コレクターの友人ガ、
水晶ニ始マリ、水晶ニ終ワル。
ト、言う名言ガアルト。コレクターの世界では。
ダカラ水晶は基本デ最強ナンダ。」
ギュー!
そこからお狐様は、アメシスト、シトリン、ガーデンクォーツ、ファントムクォーツ、
ルチルクォーツを吐きだした。
「いや、これは珍しい。」
「みんな丸玉になっているから飾れるわ。」
ギュギュー!
(どうだ、小僧。)
「ウン。見事ナ、二酸化ケイ素祭りダネ。」
ガー!
(偉そうに言うなっ!)
「はい、やめて!マウント取り合わないでっ!」
ネモ様が割って入った。
「この美しい宝石の数々。博物館を作って展示しよう。ウチの国にも欲しいと思ってたんだよ!
博物館。」
「デモ。ダイヤは一ノ瀬にアゲようと。
アトは、世話になってる、エリーフラワーサン、
イリヤサン、王妃サン、レイカサン。
そして、ネモサンとリードさんとアランさんの奥サンにも。」
ちょっと焦った顔で龍太郎が抗議している。
「まあ!」
「あらら!」
「いや、気を使わせたね!だってざっとみても50個はあるよ。」
「エ、そんなに作ったカナ。」
ネモ様は比較的大きなモノをひとつ取り出した。
「博物館にはこれをくれたまえ。
一番大きいのはメリイさんだね。あと、配り終えたら残りもみんなメリイさんで。いいかな?」
「ウン。」
「ほほほ。私が良い職人を知っていますわ。綺麗に加工してもらいましょうね。」
「アリガトウ。エリーフラワーサン。ソウダ、おチビチャンにも、あげてネ。」
「ウチのミネルヴァまで。ありがとうね。
キューちゃんもありがとう。このファントム水晶とルチルクォーツ玉は、私の部屋にかざるわね。」
キュー。
「ヨシヨシ。キューちゃんも偉いでごわすな。」
「ウチでココアを飲みましょうね。」
エリーフラワー様に撫でられて嬉しそうな白狐様。
「俺も飲みタイ。ココア。」
「わかった。」
キュー。
(同席をゆるす)
「おお、一瞬にどうぞでござるな、キューちゃん。」
「ところでね、龍太郎くん。提案があるんだがね。」
「ネモサン、何ダイ?」
「セレモニーの時に思いっきり飛ぶ気はないかな?例えばさ、新年のカウントダウンとかね?
まだ設定してないけども、独立記念日とかね?
多分四月一日になるかな?
その時の式典でね、大空に羽ばたいてほしいんだよ。」
「それは構ワナイヨ。」
「そうか!ありがとう。観光の目玉になるよ!」
ネモ様から商魂と言う文字が見えた。
そのあとみんなでココアを飲んだ。平和で楽しい五月の夜だった。
自室で二人になってから。
「硝石の場所ト、原油の場所。エリーフラワーサンに教えルベキだよナ。
アト、硫黄トカ取ってこれるケド。」
「そうね、そのうち。」
「アンマリ産業革命ススメちゃっても、ナア。」
それから目を光らせて言った。
「モウ、ダイヤのおかげでオマエ金持ちになるだろ?
実家から煩ク言われても、大丈夫ダナ。
何かアッタラ札束で頬を叩いてやれよ。」
そう言って龍太郎は目を閉じるのだった。
日本最大級のミネラルショー。池袋ショーは今週末からですね。
(2024.12.13から。)
去年は行きました。美しい石の数々。時間を忘れます。




