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ずっとあなたが好きでした。だけど、卒業式の日にお別れですか。  作者: 雷鳥文庫


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16/42

明日もきっといい日になる。

誤字報告ありがとうございます

先日、母から手紙とお金とドレスが届いた。

そして新しい婚約者候補絵姿も。

龍太郎は私の部屋にいる。今はオカメインコくらいの大きさだ。

(小さくなる方が簡単だけどさ、一応大きくもなれるんだ。でもこないだ、チュパカブラのヤロウに吸われたからさ、今はせいぜい五メートルくらいだな。)

「へえ、そうなんだ?」

イリヤさんが笑ってこっちを見た。

「また、二人で念話ですか?」

「コッチガ楽ナンダ。」


兄はリード様のところで正式に働くようになった。

今は公宮に住んでいるので、イリヤさんが一緒に住んでくれている。

私も前世では一人暮らししていたから、ある程度の家事は出来る。それに洗濯機と脱水機をエリーフラワー様が開発された。


「あとは冷蔵庫と掃除機よね。」

(三種の神器だよな。掃除機の方が簡単だろ。

冷蔵庫は触媒がいるんだっけ?フロン?)

龍太郎の声が返ってくる。

「水でも触媒になるんじゃなかった?」


イリヤさんが肩をすくめて、お茶を淹れてくれた。

「ほら、そろそろ夜ですよ。龍太郎くんも一緒に寝るの?」

「バ!馬鹿イッテルンジャネーヨ!乙女の寝室ニ入レルワケネエヨ!玄関ニイルヨ!

マタ明日ナ!!」


「ええ、また明日。お休みなさい。」


龍太郎は飛んでいった。

玄関で警備をしてくれるようだ。いつ寝てるんだろう。

「ふふ、可愛いですね。」

イリヤさんが微笑んで見ている。

「本当にね。」

「今度、ヤマシロが来るんですね。」

「ええ、シンゴさんの代わりにね。」

「アイツは最愛の彼女が居ますからねえ。アンディ様もレプトン様も安心なんでしょ。」


と言うことはシンゴさんには彼女はいないのか。


「メリイさんの元婚約者はあの女狐と結婚されたんですって?こちらに復縁迫ってこなさそうで安心ですね。」

「彼女はとてもしたたかなの。ウチの母が改装したルートの別邸をホテルに改装してオーナーになったと聞いたわ。」

「確かに。女狐の家は無くなったんですものね。

いや、名前だけ復活したのかな。」

「ロージイのお兄様たちはお気の毒なところもあるけど、下のお兄様が実質的にホテルをやられていて、なかなか繁盛してるのでしょ。」


ルートはわかっていない。

お父様が一番怒っているのは、彼女ではなくてルートなのだ。

彼女はまだ道理がわかっている。


何故お父様がルートに慰謝料を求めなかったのか。

本当は彼が自分から言い出すのを待っていたのだ。

そしたら、別邸を取り上げてそれで手打ちにするつもりだった。

茶番劇の様に子爵位の返上、またその取り消しはあったかも知らないが、それ以上は被せる気はなかったのだ。

(あちらのご両親は没落させる予定だったが。)

――ロージイ嬢の次兄が仕事を追われることはなかった。


ルートはコレからこのツケを払わされる。

今だって学園内の評判は最低だと。


「お嬢様、私も任務であの馬鹿の周りを探りましたけどね、アレのどこが良かったんですか?」

「小さい頃から一緒で。父からもおまえたちは将来夫婦だって、言われていてね。

信じられないかもしれないけど学園に入るまでは仲が良かったのよ。

ふふ、あの黒髪黒目は他にいなかったし、口が悪い所もリュウジぽくて。」


「龍太郎君は口は悪いって言うか、言葉使いが荒いだけですよねえ。ただ、可愛いです。」


本当。あんなのと一緒にしたら、龍太郎に失礼だ。

「女狐はあの馬鹿のどこが良かったのでしょうか。」

「彼女の家とうちとの確執は知っているでしょう。」

「はい、有名ですから。」

「彼女は親にほめられたかったのだと思うわ。」

「あんな親でも?」

「ええ、あんな親でも。」

「私がそうだったから。」

「?グローリー公爵家は、そんなに厳しかったですか?」

「いえ、前世の話よ。私も親に認められたかった。

色々あったのよ。」

「そんな。」

「窮屈な思いをしてね、地元を離れて遠くで就職したの。」


最後に褒められた思い出は難関高校に合格した時だ。

母は私に短大に行って、地元企業に就職してすぐ結婚することを望んでいた。

母の世代はそれが幸せだったのだ。


大学時代に一度目の入院と手術をした時、命が助かった、良かった、と泣いてくれた。

それだけで充分だ。


その後、身体に傷があったら結婚は難しいから、正社員になりなさい、と言われた。

それも、母の価値観だ。その時は傷ついたけれど。


もう、遠い昔のことだ。


「ところで、龍太郎の話だけど、先日はレイカさんのところでヤキソバを御馳走になって。」

「ええ、聞きました。火を吹いて見せたんでしょ。」

「ずっと、一人で孤独だったんですって。ドラゴン本体の龍太郎の方かしら。ネモ様が現れるまで、人間と意志の疎通ができなかったって。

だから最近嬉しいみたいよ。ふふ。」


「ところでメリイ様。」

イリヤさんが真面目な顔をした。

「ずっと、こちらで研究をなさりたいんでしょ。」

「ええ、それはもう。」

「だったら、アレはどうしますか。」

イリヤさんが指差したのはお見合いの釣書の山だ。

「お嬢様は公爵家の御令嬢。親が決めたら結婚しなくては行けないのでは。」


頭が痛い話だ。


こないだの母の手紙にも書かれていた。

そろそろ考えなさい、と。


「エリーフラワー様にご相談なさいませ。

きっとお力になって下さいます。」


こないだもリュウジというか、龍太郎と念話で話をした。

(こっちの世界ってよ、人生早くねえ?

王子様だって20歳かそこらで結婚してるし、

レイカさんとか、エリーフラワーさんだってさ、十代で結婚して子供産んだり妊娠してる。)

「そうね、精神年齢も高いわね。」

(日本だったらさ、大学もいくじゃん。そっから就職するじゃないか。)

「こちらも、エリーフラワー様が学校を作られてるわよ。そのうち晩婚化するかもね。

結婚が早いのは、平均寿命が短いからよね。

貧富の差があるし。」

(じゃあ、ここも少子高齢化になるのか。そのうち。)

そうね、私が生きてるうちはともかく。

長い時間を生きる龍太郎なら、そう言う世界も見るだろう。


ともかく、結婚問題だ。エリーフラワー様にご相談した。

「ご実家からの縁談を断る方法ね。

龍太郎くんに威嚇してもらえば簡単だと思うけど。

うーん。

あ、そうだ。今度アラン様がいらっしゃるの。

ドラゴンが気になるのよ。脅威にならないか。」


なるほど。


「そこで私も口添えするけど。こないだの掃除機の試作品。アレを仕上げてアラン様に進呈なさい。

そしたら、何か褒美をとなる。

そこで意に沿わぬ結婚をしないで良い権利を下さい。と言うの。」

「え?」

「大丈夫。レイカさんも使った手だから。それでアンディ殿と結婚したのよ。」

「つまり、自分が結婚したくなるまで結婚しなくていいってことですか?」

「そう。」


実際、簡単に受け入れられた。

アラン様は目をかがやかせて、掃除機を受け取られた。それから、各国への販売の窓口になって良いかとおっしゃったので快諾した。


結婚の権利は、王妃様の後押しもあって認められた。



「アンディ、レイカさんと同じ事を言うなあ!

ははは!」

上機嫌でアンディ殿の背中を叩くアラン様。

お二人が仲が良いというのは本当のようだ。


「それに、公爵がキミを外国に嫁がせようとしている、というウワサを聞いた。

正直、キミと神獣様が他国に流失するのは、避けたいんだ。」

「多分、あのクズ野郎が押しかけてこないように外国に出したかったんでしょうけどね、コチラの方が安全よ。おほほほ。」


良かった。


「俺が守るヨ、心配スンナ。」


龍太郎の言葉も随分流暢になってきた。

ああ、これで研究ができる。


そしてこの日から私の護衛はシンゴさんから、ヤマシロさんに代わった。

「宜しくお願いします。」

太陽のように笑う、浅黒い肌の人だ。


シンゴさんは何度も私の方を見ては振り返って、去っていった。


今度はいつ会えるんだろう。

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