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心の中で、震えるような。

誤字報告ありがとうございます。

目を覚ましたら、医務室だった。


ものすごく悪い夢を見たような気がする。

これは現実なんだろうか。

「良かった、気がついたのね。」

以前私を見てくれた女医さんだ。

イリヤさんもいた。

「大丈夫ですか?お兄様がそこにいらっしゃいますよ。」

「ああ!メリイ!気がついたか!!どこか痛いところは無いか?」

「頭が。頭がガンガンする。」

「そうか。」

イリヤさんが水をくれた。

薬を女医さんから受けとって飲み干した。

「立てるか?みんなが待っている。」


イリヤさんと兄に支えられて歩く。


「兄さん…夢じゃないのよね。」

「うん。」

「お花見にドラゴンが現れたのよね。」

「…うん。」

「それで、ネモ様が来て、」

「…。」

「メアリアンさんが、転生者をドラゴンが食べ、た、と。

リュウジだと。」


「今から、メアリアンさんがリード様のご尽力を得て、魂を下ろしてくださるそうだ。

とても大変なことなので、リード様にはその、ヘルプをするお力があるらしいんだ。」


そして、部屋についた。


ドアを開けてソファに倒れこむ。


すると、ドラゴンが、いた。

ネモ様の肩の上に。


コイツが。私が会いたくてたまらなかった、リュウジを、…リュウジを、その手でその口で。


よくも、よくも、よくも、よくも、よくも、よくも

…よくもっ!


「リュウジのかたき!!」



立ち上がって掴みかかろうとした時、


「母上。お呼びと伺いました。」


リード様が現れた。私の手は宙を切った。

「落ち着け、メリイ。王家の皆さんの前なんだぞ。」


兄に抱き止められてソファーに沈んだ。


「んん?みんなお揃いだね?ネモさん!ここにいたのか!あちらも大変ではないか。」

「あ、リード様、それは、ちょっとあの、ここでは。」


「あっ!しまった!ローリア様の予定日か!」


アンディ様が頭を抱える。

そんな大変な時にずっと付き添ってくださってるのか。

「―すまないネモよ!そんなこととは!」

「何をおっしゃいますか、王妃様の危機でしたのに!」


「何だって!?」


リード様の目が怖くなる。

王妃様の事になると理性を失うとは本当だったのか。

「あ、もうリード、それは大丈夫だったの!

本当よ。今から魂降ろしかしら?それにあなたのパワーが欲しかったの!」


「あ、わかりました。また、メアリアンさんやら、ランド君と手を繋げばいいんだね?」


「その通りです!リード様。」

アンディ様がにこやかに言う。

「あの?」

手を繋ぐ?


「まず説明するわね、40年もの間にドラゴンとリュウジ君の魂は溶け合ってひとつになりつつある。

――私は死者の声を聞くもの。

今回は生命力溢れるオーラをお持ちの、リード様のお力を借りて、この身にリュウジ君を降ろします。」


「え?」

「イタコのようなモノだと思って?」

レイカさんがささやく。



「メアリアンの力は本物なの。だけど生命力のようなものを持っていかれるらしいのよ。

リードの溢れる生命力は手助けするのに最適なの。」

「そんなに褒めないでくださいよ、母上。」

リード様は満面の笑みだ。


メアリアンさんの目は閉じられ、

またその手はランドさんにつながれる。ランドさんの手はリード様が包み込むように握られている。


ドラゴンも目を閉じている。


そして、メアリアンさんは目を開けた。


薄らと男の子が重なってるのが見える。

コレがリュウジ?


ああ!そうだ。学ランを着てる、そして笑うとなくなってしまう、目。


「あー、あー、あ。テステス。

うん、喋れる。

一ノ瀬、久しぶりだ。なんだオマエもこっちに来ちゃったんかよ。」


ああ、リュウジだ!この喋り方!

懐かしい。


「リュウジっ!!ドラゴンに食べられたんでしょっ!?カタキを取ってあげるっ!」

 

ネモ様の肩の上のドラゴンはじっとしてる。

さっきより小さくなってるようだ。

うん、トンビくらい?

これなら。何か殴るものはないかしら。


「あ、ちょっと待って。オレらもう一体化してっからよ。この龍太郎くんと。だからNGね?」


「龍太郎?」


「俺がリュウジでしょ。だから竜は太郎くん。字は上岡龍太郎の、龍太郎ね?

まぁ俺が勝手につけたんだけどさ。」


龍太郎に、竜嗣リュウジ


「でさ!一ノ瀬っ!オマエ病気で早死にしたんだっって!?

キューちゃんとやらの記憶で色々わかっちまったんだよっ!

長生きして、しあわせな老後を送ってると思ってたのにさっ! なんだよ!

今回は長生きして結婚もして、子供もこさえて幸せになれよっ、畜生!」


そ、そんなこと言ったって。

ああ、リュウジの威勢の良い、江戸っ子言葉。

彼は中学1年の時東京から転校してきたんだ。

懐かしくて涙が出る。


「ううっ。リュウジ、私もその龍太郎さんに食べてもらえば一緒になれるかなあ?魂が溶け合ったりしない?」


「「「何を言うんだ!」」」 

シンゴさんとレプトン兄とマーズさんの声が揃った。


「バカなこといってんじゃねえぞ。んな事したってなあ、○○○になって出てしまうだけだぞっ!馬鹿野郎っ!」


えええ。


「この竜ってさ、そっちのお狐さんと一緒でほぼ死なねえみてえだ。だから俺も多分死なないから、もう、生まれ変わることはないんだろ。ずっと竜の姿で生きて行くんだ。

もう、オマエと道が交わることはないんだよ。

……あーもう、畜生っ、桜の下で告っておけばよかった!ぐすん。」 


泣いてる。メアリアンさんの身体を使って。 


本当。私も告白しておけば良かった。


「そしたら、デコチューくらい出来たかも知れないのにっ!」


「デコチュー…。」 レイカさんがつぶやく。


「そうだよっ、悪いのかよっ!ほっぺチューがもっと良いけどさあ!うっかりくちびるにしたくなったらどうするんだよっ!男子高校生なめるじゃねーぞ!

バーカバーカ!!」


リュウジ、そんなこと考えてたの?

ああ、彼は永遠の少年なんだ。


「何だか、甘酢っぱいわ。」

「ええ、王妃様、レモン100個分ですかね。」

王妃様と、レイカさん。

私もそう思います。


「なんか、身につまされる恥ずかしさ。」

「同年代だとぐっときますね。」

マーズ様とシンゴくんだ。


私もそう。やはりあれから何十年も生きて、色んなことを見たり、聞いたり、言われたりしてきたから。


「ははははは!!可愛いなあ!キミは!」


声をあげたのはリード様だ。


「なんだよっ、綺麗な王子様っ!モテモテくんにはオレの気持ちはわかんないよっ!」


「いや、キミが心が綺麗な少年だと言うことがわかった。で、コレからどうしたいの?」

「それなんだけどさ、コレくらいの大きさだったら、時々遊びに来てもいい?

本当は近くでコイツを守ってやりてえんだけど。」


「それは願っても無いことじゃ。素晴らしい護衛ではないか?」

「本当?王妃さん。」


「うーんどうでしょうかね?キューちゃんと仲良くやれるかな?」

「良いじゃん。白狐のダンナ。お互い守りたい人間は、いるんだろ?」


ツーン、と横を向く白狐様。

「勝手にしろ。

と言っておりますな。偉いぞキューちゃん、

大人になったなあっ!」


キュー。


「それではもう人は食わないんだね?」

ネモさんが尋ねる。

「うわっ、ぺっぺっ、やめてくれよ。

俺の意識があるウチは食うわけないだろ。

ところでさ、ブルーウォーターのダンナ、

お子様、生まれたよ。早く行ったげなよ。」


「!そうなのか。確かにキミは危険が無さそうだ。

では王妃様、御前失礼致します。」


「おお、ローリアに宜しくな。アリサも来ておるんじゃろ、明日にでも顔を出す。」 


「は。有難き幸せ。マーズ、お前もこい。

ドラゴンの危険は無くなった。おまえがここに来る理由も無いな。」

「はい。」

「メリイさん、弟がすみませんでした。ここで引導を渡してやってください。」

「え?」

「メリイ、お断りするんだろう?」


そのつもりだったんだけど。ここで?公開処刑っぽくない?


「今、ここでですか?」

「はい、もう脈はないのでしょう?私はね、セバスチャンみたいになりたくないんです。」


セバスチャンって、誰。


「…ごめんなさい。あなたの気持ちには、答えられません。」


「良いんですよ。では。」


慌しく二人は去っていった。


「では、そろそろ良いか?このお姉さんの負担になるよ。一ノ瀬、オレの本体に手を置いて?」


ドラゴンに手を置いた。

メアリアンさんは目をとじて、ドラゴンは目を開けた。


「うん、もう良いかな、接続が切れた形だ。」

リード様が伸びをした。

(おい、聞こえるか?)

私の頭の中に直接声が聞こえる。

「あ、うん、聞こえる。」


みんながコチラを見る。

「頭の中に直接聞こえてくるんですよ。」


「それはすごいなあ!」

リード様がやって来た。

「ところでさ、ドラゴンって鳥系?トカゲ系?」


「さ、さあ?」

「いや、トリなら喋れるんじゃ無いかってね?」

(何言ってるの?)

「あーって、言ってごらんよ。ホラ、咽喉に手を当てていてあげるから。」

「―ガァ、」

「うん、喋れる。」

「ナニイッテ、ア!ゲホゴホ。」

「喋れないって言う固定観念打ち破ったね?

ま、無理のない程度にね。

コレでメアリアンさんに負担をかけなくて、みんなとも会話出来るよね。」


美貌の王子様は手を振って出ていった。


「そういえば私、恐竜とか好きだったのよね。

良く博物館に行ったわ。

カッコいいよね、ドラゴンって。」



肩にリュウジが乗ってきた。


「ヨセヤイ、テレル。」

続 グランディ王国物語の

「春の日の話」と「青春とはなんだ」の2つの話を読んでいただくと、メリイ以外の視点があって更にわかりやすいです。宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
リュウジくんの上岡龍太郎で今までのシリアスが… 頼りになる?守護聖獣の爆誕でメリイちゃんの心が少し軽くなりますね あとはグランディ王都のアレな面々がどうなるかナ、です
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