scean12 衝突
騒ぐモニカと対照的に、クロムは事もなげに答える。
「聖句結界はバロールの邪眼対策としてはかなり有効だ。同行させれば役に立つだろう」
モニカは呻き、頭を抱え――今は目立つとまずいからねと、怒りを抑え小声で話す。
「勝手な事してくれたね……今からでもリズの船で教皇庁まで送り返すからね」
「モニカ、彼女には帰る場所はない。見方によっては彼女がフィオナを逃してしまったからこの事態になっている訳で、汚名を挽回できない場合は、命で償う可能性もある。バロールを封印しないことにはね」
「フィオナのこと殺すつもりだった子だよ! 危険すぎる!」
モニカは声を抑えながらも、迫力を込め文句を言った。
ターヤは肩をすくめて言った。
「あら心外だわ。あれは元々は地元の住人が始めたことよ。私は手伝いをしただけだもの」
「黙れ、ターヤ」
ターヤに対し、クロムが凄む。拳にかなり力が入る。全く怯む様子が見えぬターヤを睨み、拳を開く。
「いずれにせよ手放せない駒だ。いざとなればリズとヴァイスもいる。もしフィオナが危険な目に遭うようなら、その時点でこの女は始末するさ」
「駒? 始末? いつの間にそんな事言うように……随分と悪党になっちゃったみたいだね!」
モニカはぐっと、クロムの襟を掴んで顔を近づけ、睨む。彼女の顔は怒っていたが、声にはどこか憂いの色も含まれている。
「どうしたのさ……フィオナのことショックで目が曇っちゃった?」
眉の一つも動かさないで、クロムは暗い眼をして語る。
「至って視界は良好だ、モニカ。そっちこそ甘い考えじゃないか? ヴァルプルギスの禁戒では血を流すことを嫌うんだろうが、それじゃあフィオナを救えやしないよ」
「禁戒なんか関係ない! 人の道を話してるの!」
彼らが語る禁戒とはある種類の魔術の儀礼である。誓いを立ててそれを厳しく守り通せば、強い神秘の加護を得られる。逆に破れば破滅を招く。モニカを含む『ヴァルプルギスの魔女』と呼ばれる者は、不殺の誓いを立てて厳守している。
二人の声が大きくなった。ヴァイスが慌て、間に割って入って止める。




