ランタン駅 1
偶然というものは不思議なこと。
向かった目的の街はランタンというらしい。
僕、アト=ミックスとレディ=レックスを乗せた列車は、山岳地帯へとノロノロと登っていった。キメラ――戦略型キメラの写真が撮られた場所から、そのランタンが山奥と推測できた。
「着いたんじゃないか」
レディに起こされた。少しウトウトとしていたようだ。
車窓を見ると、ホームに列車はすでに停車していた。
どれぐらい列車に揺られていただろうか? 恐らく一晩は過ぎているような気がする。車窓越しではあるが、日が昇りはじめているのが見えた。
「――ありがとう」
珍しいこともある。すでに契約の一日は過ぎているが、レディは襲ってこないようだ。
チラリと僕のダイリチウムを見ると赤く染まっている。かなりマナニウムが蓄積されているようだ。それもあってだろうか?
ともかく、僕はドアを開けて、赤帽を探した。荷物を運んでもらうために。しかし、魔法協会が運用していないためもあるのか、肝心のポーターがいない。
「サービスが悪いなぁ……」
仕方がなく、僕は革製の大きなトランクを、椅子の下から引っ張り出す。
「それぐらい自分で持てよ」
「手伝ってくれない?」
「男だろ」
レディは自分の背嚢を片手で背負い込むと、先に列車から降りてしまった。僕を置いて……薄情な!
ホームにカートだけ置かれている。ポーターはどこかにいるはずだが、サボっているのかどうか、人影はいない。
(――自分で使えということか?)
いないものは仕方がない。
それに僕のトランクを乗せて、彼女の後を追うこととした。
「ところで、レディはどこに行けばいいのかわかっているの?」
「あッ……」
勝手にさっさと歩いていたが、バツの悪そうな顔をするとフードを被り、顔を隠した。
そして、スッと僕の後ろに付く。
(こういうところがかわいいんだから……)
ちょいちょい意地を張っているが、肝心なところが抜けている。