46 下された裁き
コミカライズ版が、いよいよマグコミにて連載開始です!
ユニバスの『精霊たらし』っぷり、ティフォンのかわいさ、そのすべてが絵になって、これでもかと楽しめますので、ぜひ読んでみてください!
46 下された裁き
俺への裁判は中断され、俺は罪人としてではなく、証人の扱いとなった。
『属性相生』で国王から引き取った傷は名誉の負傷とされ、宮廷聖女たちの手厚い治療を受ける。
国王とポーキュパインも回復し、陪審員として新たなる法廷に臨む。
それは、ブレイバン、オンザビーチ、ロザリアの『国王暗殺計画』の裁判。
法廷では、俺も何度か証言を求められたが、俺は緊張していて、ほとんどマトモに喋れなかった。
ポーキュパインがずっとフォローしてくれたおかげで、最低限の証言だけはすることができた。
かたや被告の3人は饒舌で、見苦しい言い逃れと、醜い罪のなすりあいを最後まで繰り返していた。
そして裁判長が下した、判決は……。
「国王暗殺の首謀者である、ロザリアは死罪! 一族は全員、王族の身分を剥奪し、奴隷とする!」
「そっ……そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
被告として化粧の許されなかったロザリアは、老樹のような肌を歪めて絶叫していた。
「勇者ブレイバン! そなたは直接的ではないとはいえ、国王の暗殺をほう助!
度重なる暴言と逃走は許しがたい! よって永続的な国外追放とする!」
「ええっ!?」と驚愕の声があちこちから起こる。
勇者が裁判に掛けられるというのでも前代未聞だというのに、その裁きがあまりにも重すぎたからだ。
ブレイバンは、ちょっとしたイタズラなのに親子の縁を切られた子供のような、とうてい納得いかないという表情をしていた。
「なっ……なにぃっ!? この俺様が国外追放だと!?
それじゃあ完全に犯罪者扱いじゃねぇか! 勇者の俺様を追放だなんてありえねぇだろっ!?
そんなことをしたらどうなるか、わかってんだろうな、おいっ!?」
ブレイバンは裁判長ではなく、陪審員席にいるトコナッツ国王に食ってかかる。
「俺様は世界の勇者様だぞ! 俺様を追放するってことは、世界から孤立するってことだ!
そんなことになったら、この国は終わりだぞっ!
今すぐ、あの裁判長をクビにしろ! そしたら、今回だけは特別に許してやる!
俺様をいますぐ無罪放免とし、賠償金を……!」
国王は「ばかもんっ!」と勇者を怒鳴りつけた。
「勇者ブレイバン! 貴様を拘留した時点で、すべては覚悟のうえである!
各国からの非難は避けられんじゃろうが、それ以上に、貴様のしたことは許しがたいっ!
貴様のようなゴキブリをワシの国に招き、あまつさえワシの娘の婿にしようとしたことは、ワシにとって一生の不覚といえよう!」
そして国王はなぜか、俺に向かってしゅばっと手をかざす。
「ワシは大いに見誤っておった! このユニバス殿こそが、これからの我が国に必要な若者であることを!」
「おおーっ!」と拍手喝采がまわりからおこる。
しかし俺は照れるどころではなかった。
なぜなら俺のそばにいたポーキュパインが、
「よかったね、ユニバス! パパが認めてくれたよ!」
と腕に抱きついてきたからだ。
人間の女性に抱きつかれるのは慣れていないので、頭が一瞬にして焼き切れてしまう。
ボンヤリとした頭で、俺は裁判長の判決の続きを聞き流していた。
「……それでは最後に、オンザビーチの判決を言い渡す!
そなたは国王の暗殺を実行に移しただけでなく、過去にはポーキュパイン様の理事長の座を狙い……!」
俺は腕に押し当てられ続ける感触の柔らかさに、心ここにあらずだった。
ようやく正気に戻ったのは、
「そっ……そんなのヤダぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
耳をつんざくような、被告人席のオンザビーチの絶叫のおかげだった。
「や……ヤダヤダっ! あーしは勇者パーティの魔導女だし! なのになんで!? なんでなんでなんでっ!? なんでそんな、酷いことをっ!?」
オンザビーチは俺をすがるような瞳で見上げていて、俺は思わずドキリとしてしまう。
捨てられた子供のような表情をした彼女を見たのは、初めてだったから。
「ね、ねえ、ユニバス! あんたからも、やめてって言ってよぉ!
今のあんたは国王を救ったヒーロだから、あんたの一言があったら、判決だって覆せるし!
あーしはババアに騙されただけなのに、酷い目に遭わされようとしてるんだよ!?
そんなの、あんただっていやだよね!? だから……いやああああああっ!
ユニバスっ! ユニバスぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
衛兵たちに取り押さえられ、退廷させられるオンザビーチ。
彼女は最後までずっと、俺の名前を呼び続けていた。
そして裁判が終わったあと、俺は幽閉されていた精霊姫たちと再会した。
彼女たちは俺の顔を見た途端、スッポンのように張り付いてきて、わんわん泣き出す。
ほんの数日離れていただけだったのに、俺は久しぶりのような気持ちで、彼女たちの頭を撫でてやった。
「巻き込んでしまって悪かったな。そんなに泣くだなんて、酷いことをされたのか?」
「ううん! 待遇は国賓みたいに良かったよ!」
「じゃあなんでそんなに泣いてるんだよ」
「ユニバス様のおそばにいられなかったからに、決まっているではありませんか!」
「そうだよ! もうわたしたちはもう、ユニバスくんのいない暮らしなんて考えられないんだから!」
「左様でございます! 頭がへんになってしまいそうでした!」
その日、俺たちは国賓以上の待遇を受けた。
王城で、王家の者たちのみが入れる居住区に案内され、まるで王家の一員になったみたいな扱いをされる。
国王や王妃、そしてひとり娘のポーキュパインといっしょに囲む食卓は、俺が今まで食べたことがないほど豪華だったが、緊張のあまり味がほとんどわからなかった。
夜は、王女の婿が使う予定になっているという、特別な部屋に案内される。
本来は勇者祭の最中に、勇者ブレイバンに与えられる部屋だったそうだ。
勇者クラスの人間が使うような寝室を、この俺なんかが使っていいのかと気になってしまう。
そしてティフォンとイズミにもそれぞれ部屋が用意された。
しかし彼女たちは、寝る前になってから俺の部屋を訪ねてきた。
パジャマ姿のティフォンと、白装束姿のイズミ。
おずおずしているイズミの後ろから、ティフォンが肩に手をかけて励ましている。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ! 『はじめて』だから怖いし、恥ずかしいかもしれないけど、ユニバスくんを信じて!
ユニバスくんならきっと、やさしくしてくれるから!」
「はっ、はひ、ティフォン様……! きっ、ききっ、清水の滝から、とっ、飛び降りるつもりで、ががっ、がんばりたいと思います……!」
イズミは全身を強ばらせて震えまくっており、言葉はしどろもどろだった。
ティフォンはキングサイズのベッドにイズミを正座させると、「じゃあ、がんばって!」と寝室を出ていった。
俺は、ベッドサイドに腰掛けながら、イズミに尋ねる。
なぜかかなり緊張しているようだから、言葉を柔らかくして。
「あらたまって、どうしたんだ?」
するとイズミは、ベッドに三つ指をついて、ぺたんと頭を下げた。
「こっ、ここっ、今宵は……! わっ、わたくしが、『よとぎ』をつとめさせて、いたっ、いたきます……!」
特別に、コミカライズ版ページをチラ見せさせていただきます! このあとがきの下をご覧ください!















