第1巻発売記念SS ティフォンといちゃラブ『精霊愛テスター』
『精霊たらし』第1巻が発売中です!
今回は発売を記念して、スペシャルSSをお送りいたします!
それはトランスの馬車の中にあるリビングで、くつろいでいた時のこと。
ティフォンがヤカンのような魔導装置を手に、俺のところにやって来た。
「ねえユニバスくん、勇者の部屋にあったんだけど、これなあに?」
「ああ、それは『精霊愛テスター』といって、精霊がどれだけ人間のことを愛しているかが見られる装置だよ」
「面白そう! やってみようよ!」
俺は精霊がどれだけ人間を愛しているかなんて気にしたこともなかったのだが、ティフォンは興味津々だった。
ティフォンにせがまれ、俺はしかたなく『精霊愛テスター』の測定ハンドルを握りしめる。
続いてティフォンもハンドルを握ろうと、軽く手を置いたのだが、それだけで装置のメーターが動き出してしまった。
メーターは最大値である『夫婦レベル』まで振り切ったあと、次の瞬間には煙を吹いて壊れてしまう。
「どうやら、数値が高すぎて計測できなかったようだな」
「ええっ、わたしまだ、ハンドルを握ってないよ!? ちゃんと測るには、ハンドルを握らないと駄目なんでしょう!?」
「そうなんだけど、もういいんじゃないか? 『夫婦レベル』ってことで」
「わたしとユニバスくんが、夫婦……?」
ティフォンはポッと頬を染めたが、すぐに記録に甘んじないアスリートのような表情になると、
「やっぱり、ちゃんと測りたい! ユニバスくんなら直せるでしょ!? お願い、直して!」
ティフォンに「ねぇねぇ」とせがまれ、俺はしかたなく『精霊愛テスター』を修理。
測定できるキャパシティをあげ、『親子レベル』を新設した。
「血の繋がった親子以上に、人間に愛情を感じている精霊なんて、そうそういるもんじゃない。これで測りきれるだろ」
さっそく再計測してみたのだが、装置はまたしても一瞬で煙を吹いてしまう。
この時にはもう、俺も意地になっていた。俺が持つ魔導装置の技術の粋を総動員して、精霊愛テスターをパワーアップ。
測定できる最大値を、精神世界の限界である『崇拝レベル』にまで高めた。
「これでよし。神様への崇拝以上の愛情を、人間に感じている精霊なんてこの世にはいないはずだ、これで今度こそ……」
そして三度目の測定をしてみたが、俺の思いをあざ笑うかのように、装置は煙を吹いたうえに大爆発。
俺とティフォンは、黒焦げのチリチリパーマー頭になってしまった。
目をぱちくりさせていると、もうもうとした煙が、まるでランプの魔人のような姿をなす。
魔人はティフォンを見るなり、スパンとビンタをして怒鳴った。
「あんた、どんだけユニバス様のことが好きなのよ! 計測させられるこっちの身にもなってよ!」
魔人はなぜか女言葉だった。唖然とするティフォンのかわりに、俺が謝る。
「すまない、キミに苦労をかけるつもりはなかったんだ」
「あぁん、本物のユニバス様とお話できちゃったぁ! うれしすぎて死んじゃいそう! 心臓が張り裂けちゃったかもぉ!」
俺に抱きついて胸板を押しつけてくる魔人に、ティフォンは納得いかなさそうにつぶやいた。
「わたしの愛だけじゃなくて、あなたの愛もプラスされてたんじゃないの……?」
『精霊たらし』第1巻では、ユニバスとティフォンのいちゃラブな旅がたっぷりと堪能できます!
ぜひお手に取ってお確かめください!