05 精霊たらしのサバイバル料理
新連載、開始いたしました!
学級裁判で追放された器用貧乏 器用だったので1人で生きていく
器用だったので上級職のスキルと魔法が全て使えるようになり、無敵の存在に
1人で生きていくと決めたのに、まわりがほっといてくれません
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05 精霊たらしのサバイバル料理
俺は水の精霊に頼んで、ひとまず5匹ほどの魚を手に入れる。
どれも全長が、俺の片腕の長さくらいある大物だ。
すると、島の人たちは騒然となった。
「え……えええっ!? さ、魚が飛び込んできたぞ!?」
「ぐ……偶然でしょ!?」
「いや、偶然であんな大物が5匹も飛び込んでくるかよ!?」
「このあたりの海じゃ、もう一匹も魚が獲れないってのに!」
俺のそばで正座していたイズミは、「わぁ……!」と胸の前で指を絡め合わせ、尊敬のまなざしを俺に向けていた。
「これほどの大きなお魚様を手に入れるのは、わたくしども水の精霊でも簡単にはまいりません。
流れる石でございます、ユニバス様!
あっ、でも、そのお魚様をどうやって調理なさるおつもりなのでしょうか?
この牢屋の中には、調理器具になりそうなものは、なにもございませんが……」
「そうだな、じゃあ魚を調理する前に、道具を作るとするか」
俺は、腰のベルトに提げていたミニハンマーを引き抜く。
さらにポケットから取りだした十徳ナイフをノミとし、足元の岩礁にあてがった。
「おい見ろよ! あんなショボイ金槌とノミでなにしようってんだ!?」
「このあたりにある岩は、船でぶつかっても砕けねぇほど硬ぇのを知らねぇのか!」
「特にあの岩礁はヤベェぞ! 人工島を作るときにジャマだったんだが、削れなかったからそのまま残しちまったくらいだ!」
なんてヤジが聞こえてきたが、俺は無視してささやきかける。
「岩の精霊たちよ、久しぶりだな。ちょっとだけ手伝ってくれるか?」
すると、デコボコした岩肌が沸き立った。
「あっ、ユニバス殿!?」「なぜ、このようなへんぴな所に!?」「なんにしても、ユニバス殿がお望みなら、喜んで!」
すると岩は軽石のように柔らかくなり、ハンマーがなくても砕けるほどになった。
ゴツゴツしていた床にノミをガツガツと打ち付けて成形する。
「えっ……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
周囲がざわめいている間に、俺は岩礁を平らにならす。
それだけでなく、砕いたパーツを流用し、岩のまな板や皿を作り上げた。
「これで、正座してても痛くないだろう?」とイズミに言うと、
「わ、わたくしの脚のことを心配してくださっていたのですか!?
ま……誠にありがとうございます! 身に余る光栄でございます!」
大げさなくらいに感激して、平らになったばかりの床に、額を押し当てるようにして平伏していた。
「まあ、とにかくリラックスしよう。すぐに、うまい魚を食わせてやるから」
周囲の驚きとイズミの感謝を横目に、俺は魚の調理に入る。
十徳ナイフで手早く、5匹の魚を3枚におろした。
目の前で正座して、俺の手元を凝視していたイズミは、手品を見たかのように拍手する。
「お……お見事です、ユニバス様!
わたくしも花嫁修業としてお魚様をさばいておりましたが、ここまできれいな三枚おろしは初めて拝見しました!
あっ……でも、それをどうやってお召し上がりになるおつもりなのでしょうか?」
「それについてはちゃんと考えてある。イズミ、ちょっとだけ手伝ってくれるか?
海の水を取りだして、ここに浮かべてほしいんだが」
イズミの瞳が、はじめてのおつかいを言いつけられた子供のように、キラリンと輝いた。
「か……かしこまりました! ようやくこのわたくしも、ユニバス様のお役に立てるのですね!
不束者ではありますが、精一杯つとめてさせていただきます!」
イズミはサッと立ち上がると、その場で踊り始める。
ティフォンのように、嵐のような激しいダンスではなく、穏やかなる海のようにゆらゆらと、たゆたう舞踊。
水色の振り袖が翻った瞬間、水芸のごとく海が噴き出し、岩礁に小さな橋をかける。
俺はすかさず、かざした人さし指を橋の中腹に向けた。
「俺と遊びたい風の精霊たちよ、この指、とーまれっ!
海の橋の中から、塩を取りだす遊びをしよう!」
すると潮風が「はーいっ!」と返事。
タンポポの綿毛のような風の精霊たちが実体化し、水遊びをする子供のように海の橋に飛び込んでいく。
「ぷはあっ」と橋から出たタンポポたちは、みな手に手に塩の塊を抱えていた。
俺が両手を差し出すと、あっという間にその塊でいっぱいになる。
その一部始終を見ていた島民たちは、信じられない様子で顔を見合わせあっていた。
「な……なんだ、今の……?」
「ま……魔法……? 魔法で海水から塩を、取りだしたのか……?」
「そ……そんな魔法、聞いたことないわ……」
「あ……あの男、いったい、何者なんだ……?」
「よーし、これで調味料ができた。イズミ、水の精霊たち、風の精霊たち、ありがとう!
そして次は……火の精霊だ!」
「うぉぉぉぉぉぉーーーーーっ! 待ってましたぁぁぁぁーーーーーーっ!」
人工島に設置されていた、かがり火が渦を巻き、炎龍のように俺の元へとやってくる。
「うっ……うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
頭上にあった、かがり火台からいきなり炎が吹き出したので、島民たちはドミノ倒しのように倒れ、腰を抜かす。
俺はつまんだ魚の切り身の半分を、飛び交う炎龍たちにかざして、炙ってもらう。
あとは、生のままの切り身と、こんがり焼けた切り身を、食べやすい大きさに切り分けて……。
塩を振りかければ、2品できあがり。
これだけじゃ寂しいかなと思い、鍋のかわりに作っておいた床の窪みに海水を移す。
そこに、魚の頭と中落ち、さらにはヒレを入れ、炎龍たちに加熱してもらえば……。
「魚のあら汁の、できあがりっ! よぉーし、イズミ、さっそく食べよう!」
しかし、イズミはポカーンとしている。
そのまわりにいる島民たちもみな、魂を抜かれたようになっていた。
「す……す……すげ、すげぇ……!」
「ほとんどなにも道具がないってのに、魚を手に入れたばかりか……」
「それを調理して、3品もの魚料理を作りやがったぞ……!?」
「俺たちなんて不漁で、ずっと干物ばっかり食べてるってのに、あんなごちそうを……!」
「アイツ……いったい何者なんだ!?」
「な……流れる石の、ユニバス様でございます!」
次回、飯テロ回! イズミの意外なる能力が明らかに!
そして新連載、開始いたしました!
学級裁判で追放された器用貧乏 器用だったので1人で生きていく
器用だったので上級職のスキルと魔法が全て使えるようになり、無敵の存在に
1人で生きていくと決めたのに、まわりがほっといてくれません
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