21 ついに精霊暴走、大臣は持ち前の悪あがきで、さらに墓穴を…(ざまぁ回)
時は少しだけ戻る。
ゴーツアンがワースワンプの国王をもてなすために、『勇者バーベキューマシン』をセッティングしていた時のこと。
食事会の会場である森の河原には、清流のせせらぎが響き、爽やかなる風が吹き渡っていた。
不意に風が強くなり、ざわざわと木々がざわめいたとたん、『勇者バーベキューマシン』の中にいた木炭の精霊たちは騒然となる。
「おい、木々が教えてくれたぞ! ユニバスさんが仕事をクビになったらしい!」
木炭の精霊が周囲に触れ回ると、他の精霊たちも驚きに包まれる。
「なんだって!? 俺たち精霊の唯一の味方だった、ユニバスさんが!?」
「くそっ、俺たちはずっと暗い部屋に閉じ込められてたから知らなかったぜ!」
「いったい、誰がクビにしたの!?」
「どうやら、ゴーツアンとかいう大臣らしい!」
「ゴーツアン!? いま、このマシンをセッティングしてるヤツじゃないか!」
「許せねぇ! バーベキューみたいに燃やしてやろうぜ!」
「そんなのダメよ! そんなことしたら、ユニバスさんに迷惑がかかっちゃう!
だってこのマシンは、ユニバスさんが作ったものでしょう!?」
「いや、今はそうじゃないんだ! 操作パネルのところを見てみろ!」
「あっ!? ここにはユニバスさんの名前が彫り込まれてたのに、ゴーツアンに彫りかえられてる……!?」
「そうだ、ゴーツアンはユニバスさんの作った魔導装置を、自分が作ったものにしてるんだ!」
「ということは……ここで私たちががんばって、おいしいバーベキューを焼いたとしても、ユニバスさんの手柄にはならないということ!?」
「そうだ! でも、逆に考えてみるんだ! ここで俺たちが、大暴れしたら……!」
その場にいた精霊たちは合点がいったように、ニヤリと笑いあう。
彼らはそもそも属性を異にする者たちで、普段は仲がいいわけではない。
しかし『ユニバス』というキーワードは、精霊たちにとっては錦の御旗に相当する。
彼らは『ゴーツアン』という敵を討つために、一致団結した。
その結果が、
……どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!!
大 ・ 爆・ 発 ……!
スイッチがオンになった瞬間、『勇者バーベキューマシン』はドラゴンのように火を吹いた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
間近にいたワースワンプ国王は火だるまになる。
しかしすぐ近くにあった河原に飛び込んだのと、いざというときのために控えていた聖女たちの『癒し』を受け、大事には至らずにすんだ。
しかしそのあとは最悪の状況。
なにせ被害にあったのはワースワンプの国王だけで、ブレイバンとゴーツアンは無傷。
ワースワンプの騎士たちも護衛としてその場に居合わせていたのだが、彼らはすぐに疑いを持った。
「これはもしや、我が国王を狙ったテロ行為なのではないか!?」
「いいや! もしやなどではない!
ゴーツアンは自らの作ったバーベキューマシンで、我が国王にスイッチを入れさせた!
完全に計画的な犯行ではないか!」
「ゴーツアンを捕まえろーっ!」
ゴーツアンは組み敷かれながらも必死に弁明した。
「ち、違う! このゴーツアンはテロリストなどでは断じてない!
これは、なにかの間違いで……!」
その場に、回復したワースワンプ国王が戻ってくる。
彼は怒っておらず、「よいよい」と周囲をなだめた。
「どんな天才でも、失敗することはある。
たとえ世界最高といわれたゴーツアン殿も例外ではなかろう」
ここでゴーツアンが素直に謝れば、国王はすべてを許してバーベキューを再開するつもりであった。
しかしゴーツアンの辞書には『謝罪』という言葉はない。
すべては『横取り』と『言い逃れ』という、悪辣な言葉だけで埋め尽くされていたのだ。
「こ、国王! 恐れながら申し上げます!
このバーベキューマシンはゴーツアンによるものではないのです!
ユニバス……! そう、あのユニバスが作ったものなのです!
ユニバスは風の精霊姫をさらい、今もなお貴国であるワースワンプを逃走中なのはご存じでしょう!?
あやつは無能であるくせに、悪知恵だけは働くどうしようもない男!
バーベキューマシンに細工をして、国王の暗殺を目論んでいたのです!」
なんとゴーツアン、ユニバスをクビにした後なのにさらに罪を覆い被せるという、ウルトラC級の言い逃れを披露。
これには、柔和だったワースワンプ国王の眉根もいぶかしげに寄る。
「先ほど、そなたは自分が作ったバーベキューマシンだと申しておったではないか。
それに操作パネルのところにも、たしかに『ゴーツアン製』と刻まれておったぞ」
「ぐ……!ぐぬうっ!? そ、それは……!」
「そうだ! 悪あがきはよせ、ゴーツアン! さっさと己の罪を認めたらどうだ!」
気付くと、ブレイバンもいっしょになってゴーツアンを責めたてている。
ブレイバンは『勇者バーベキューマシン』が爆発した瞬間、誰よりも焦っていた。
そして、こう決断するに至る。
――この無能大臣は、さっさと切り捨てないと、こっちの身がヤバい……!
と……!
勇者からも見捨てられ、とうとう孤立無援となってしまったゴーツアン。
しかし彼はあきらめなかった。
唯一の取り柄ともいえるあきらめの悪さで、悪巧みに長けた頭脳をフル回転させる。
そしてついに、頭上に黒い電球を灯すことに成功。
彼の脳内では、ビコーン! と濁った音が響き渡っていた。
「じ、実は……! これはブレイバン様のご指示だったのです!
『勇者バーベキュー』では、誰かを火だるまにするドッキリを仕掛けるのが普通だったそうで!
スイッチを入れたときに、ランダムで火が吹き出る仕掛けを組み込むようにと、仰せつかっておったのです!」
「なっ……なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
巻き込まれてしまったブレイバン! 次回、勇者と大臣はとんでもない行動に……!
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