表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/104

11 水着になった精霊姫と、いちゃラブバーベキュー

 俺たちはフーリッシュ王国の国境をひとっ飛びし、隣国である『ワースワンプ王国』に着地。

 そのまま太陽と競争するように街道をひた走る。


 ティフォンは御者席から身を乗り出したまま、わぁわぁと歓声を上げていた。


「見て見てユニバスくん! あそこにも、たくさん池があるよ!

 陽の光でキラキラ光ってて、すっごくキレイ!」


 その池に負けないほどに、瞳を輝かせているティフォン。


 彼女は精霊の中では、トップクラスの機動力を誇る風の精霊。

 でもお姫様だけあって他の国には行ったことがないのか、見るものすべてが珍しいようだ。


「このワースワンプは池や湖が多いことで有名なんだ。

 世界最大の湖もあって、海みたいに大きいんだぞ」


「海みたいな湖!? 見たい見たい見たーいっ!」


「うーん、それじゃ、ちょっと寄り道になるけど、行ってみるとするか」


「やったーっ!」


 俺たちは本来のルートを少しそれ、『ロークワット湖』に着いた。


 以前、勇者パーティとして訪れたときは静かな湖で、魚がたくさん獲れたのでバーベキューをやった覚えがある。

 というか勇者たちはなぜかバーベキューが大好きで、ほぼ毎日のようにバーベキューをやっていた。


 そして現在のロークワット湖は、勇者が魔王討伐の際に立ち寄った湖として名所となっていた。


 リゾート地のように整備され、入口の看板は、水着姿の勇者パーティがバーベキューを楽しむ姿が描かれている。

 敷地内ではその看板を真似するように、肌も露わな男女がバーベキュー用のグリルを展開していた。


 あふれるリア充感に俺は引き返したくなったが、ティフォンがわくわくしているのでそうもいかない。

 勇気を出して入ろうとしたら、中年太りの管理人に止められた。


「入場料は、バーベキューセットとかコミコミで、ひとり1万(エンダー)だよ。

 水着の女の子がいるなら半額で、かわいくてスタイルもいい子だったら全部タダだよ」


 管理人のふてぶてしい態度と、あまりのバカ高い値段に、俺は二重の意味でうろたえる。


「ふふっ、ふたり合せて2万っ!? そそっ、そんな金……」


「『勇者価格』ってやつだよ。あんたいい歳して、2万も持ってないのかい?」


 そういえば聞いたことがある。

 勇者とタイアップした施設は『勇者価格』となり、とんでもない価格設定になるということを。


「むうっ。ユニバスくん、ちょっと待ってて!」


 ティフォンはそう言い残すと、停馬場(ていばじょう)に向かって風のように走っていく。

 停めてある俺たちの馬車に飛び込んだあと、中で暴れているのか馬車がギシギシと揺れている。


 「おまたせっ!」と戻ってきたティフォンは、華やかなフリルビキニに着替えていた。

 清楚なかわいらしさと、健康的なセクシーさを兼ね備えたその姿に、俺と管理人は同時に見とれてしまう。


「お……お嬢さんだったらタダだ! タダでいいっ! ささっ、めいっぱい楽しんでいってくれ!」


「やったー! ありがとうおじさん! ユニバスくん、行こっ!」


 風の精霊姫が湖畔に現れたとたん、一陣の風が吹き、男たちの視線は総ざらいにする。

 ティフォンはご機嫌で、俺の前をお尻をふりふり歩いているのだが、行く手には褐色の肌をしたチャラ男たちが立ち塞がっていた。


「ねぇキミ、かわうぃーねー! どっから来たの!? 俺たちと遊ばない!?」


「ひとりだよね? おいしいバーベキューがあるよ!」


「見たカンジ、風の精霊だよね!? 精霊は、俺たち人間にご奉仕するのがなによりもの喜びなんだよね!」


「マジ!? それじゃ俺たちもいろいろご奉仕してもらおうぜ! んじゃ、行こっか!」


 チャラ男は馴れ馴れしく肩に手を回そうとしていたが、ティフォンは寸前ですり抜ける。

 風の精霊の特徴である長い耳をふわりとなびかせ、俺のほうに取って返した。


「ごめんね、わたしがご奉仕するのはユニバスくんだけなの!」


 そして満面の笑顔で、俺の腕に抱きつく。

 俺はナンパを追い払うための方便なんだと思い、「俺の女に手を出すな」的な雰囲気を装った。


 チャラ男たちは俺の顔を睨みつけると、舌打ちとともに去っていく。

 「もう、腕を放しても良さそうだぞ」と俺は言ったのだが、ティフォンは首をふるふるする。


「せっかくだから、このまま歩こうよ。ねっ、いいでしょ?」


「うーん、まあいいけど」


 そして俺たちは湖畔を散歩した。

 まわりはみんな水着だというのに、俺は油染みのついた作業服のままだったので、すごく浮いている。


 ティフォンは全然かまわないようで、ニコニコしながら俺の腕にしがみついていた。


「あんまりくっつくと、匂いと汚れが付くぞ」


「ユニバスくんが、わたしたち精霊のために一生懸命がんばってくれた証でしょ? なら付いても平気だよ」


 服の肩口に頬を寄せ、ニオイ付けするみたいにスリスリしてるティフォン。

 そのくびれた腰、控えめに穿たれたおへそから、「きゅうん」と仔犬のような鳴き声がした。


 俺は自分の腹を押えながらつぶやく。


「そういえば朝からなにも食べて無かったんだった。せっかくだから、バーベキュをやってみようか」


「ホントに!? やったーっ!」


「この湖は『モーサン』っていう、牛肉みたいな赤身の魚が獲れるんだ。それが絶品なんだぞ」


「うわぁ、楽しみっ!」


 俺たちは湖畔の片隅に移動すると、バーベキューグリルを組み上げ、炭で火起こしする。


 勇者パーティではバーベキューのセッティングは俺の仕事だった。

 毎日のようにやらされていたので身体が覚えている。


 バーベキューセットの食材はモーサンを初めとして、さまざまな魚介がセットになったもの。

 俺が火加減を考慮して並べたそれらは、じゅうじゅうと音をたて、香ばしい匂いをあたりに振りまき始めた。


 気がつくと、なぜか湖畔じゅうの視線が俺たちに集中していた。

 俺はてっきりティフォンを見ているんだろうと思ったんだが、違った。


 彼らの視線は、バターが溶けソースと混ざり合い、こんがりとした焼き色になっていく食材たちに釘付け。


「な、なあ……。あの海鮮、めちゃくちゃ旨そうじゃねぇ……!?」


「なんでだ……!? 食材は、素潜りで獲った俺たちのほうが新鮮なはずなのに、俺たちが焼いてるのとは大違いだ……!」


「見るからにぷりっぷりで、ジューシーそうで……まるで別モノじゃねぇか!?」


 そこに、待ちきれない様子で「いただきまーす!」とティフォンがモーサンの切り身にかぶりつく。

 アツアツをはふはふしながら頬張り、ごくんと飲み込んだあと、目をカッと見開いて、


「おっ……おいしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」

次回はついに、新たなる伝説誕生! ユニバスがついに勇者を……!


「続きが気になる!」と思ったら、ぜひブックマークを!

「面白い!」と思ったら、下にある☆☆☆☆☆からぜひ評価を!


それらが執筆の励みになりますので、どうかよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みくださりありがとうございます!
↑の評価欄の☆☆☆☆☆をタッチして
★★★★★応援していただけると嬉しいです★★★★★

▼コミックス6巻、発売中です!
m7tr6rsj2ncxlnqu90ua4dlhhbp_1dow_ak_f0_78jq.jpg

▼コミカライズ連載中! コミックス発売中です!
ix0s40e57qxt33v43hvp6sa1b4tq_d3j_7n_53_a06.jpg liv1nc3gnnsjqxl9i33inre6rpy_nnp_3j_53_10vx.jpg 7torhnt1466d5k1v1a0yhxkg3yud_dnb_3k_53_15d4.jpg 3780l3ki5oa0e7a3cwgaa107gtbm_104l_3l_53_1547.jpg c2km7fnbuyxf9i1h9909diq55m1_313_3l_53_14fd.jpg d0t94jt64sntm8ydcomjfloiebe2_krf_3l_53_14k8.jpg bn203zyneufhihaxh3rm6a6whu7b_arg_3j_50_14h0.jpg
▼小説2巻、発売中です!
4qal7ucn4ecv3bmwhixjlinz1h24_1aru_3l_53_12uj.jpg ah438036f57n9yf3bm6i65zrj1za_pfu_3l_53_13p3.jpg
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] 「かわうぃーねー」に作者様のチャラ男への憎悪を感じる(笑)
[一言] より、飯テロっぽくするなら、焦がしバターの甘く香ばしい香りと肉汁の香りが合わさり芳醇に肉は外はかりっと香ばしく、中はジューシーで肉汁が溢れてたまらない という感じかな
[良い点] ユニバスとティフォン、バーベキューデート(?)を思いっきり堪能してますねぇ。(●´ω`●)ホワホワ〜 あらいやだ、あんまり二人が仲睦まじいから、ホワホワしちゃった。青春だねぇ。アオハルだね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ