50 炎の精霊姫ガミメス
『精霊たらし』1巻が、Kindle Unlimitedにて読み放題となっております!
1巻には書き下ろしも収録されておりますので、2巻発売前に読んでみてください!
そして2巻はいよいよ明日、マッグガーデン・ノベルズ様から発売になります!
イラストレーターはあんべよしろう様です!
今回は書き下ろしとして、『ブレイバンの末路』を収録!
Web版において、ブレイバンはトコナッツ追放を言い渡されましたが、追放なんて生ぬるい!
なんて思いませんでしたか?
2巻では、その追放シーンを新規書き下ろししています!
これぞ真の追放、ぜんぜん生ぬるくないざまぁを、ぜひお確かめください!
また書籍版ではさらに、書泉様・芳林堂書様店におきまして、購入特典としてSSペーパーが配布されます!
『イズミといちゃラブ 旅のルール』です!
本編では見られない、いちゃいちゃするユニバスとイズミをお楽しみください!
特典配布には開催期間、および配布数には限りがありますのでご了承ください。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、営業状況や時間が変更になっている店舗様もございますので、ご確認のうえお求めください!
そして電子版限定の書き下ろしとして、『イズミの宝物』を収録!
ユニバスとイズミの初めての出会い、そしてイズミが真珠の涙を流すに至った、初めてのときめきが明らかになります!
Web版から加筆修正を施した、『精霊たらし』!
ユニバスの活躍、精霊姫たちのかわいさもさらにパワーアップしております!
明日の3月10日(木)はぜひ、お手にとってみてください!
50 炎の精霊姫ガミメス
俺は気がつくと、無限の柔らかさに包まれていた。
純白の意識のなかで、まるで雲のなかを漂っているような感覚。
ふわふわで、もこもこで、すべすべで、ぷにぷにで、もちもち。
……すべすべで、ぷにぷにで、もちもち……!?
手触りのない雲とは違う感覚を感じたところで、俺は意識を取り戻した。
背中は、雲の上に乗っているように柔らかい。どうやら、極上の羽毛布団のようだ。
顔面、いや全身には、生温かい感触に埋もれている。
抱き枕のようだが、しっとりとしていて、肌に吸い付いてくるよう。
その生々しさに、俺は覚えがあった。
「ま……まさかっ!?」
目をバチッと開けて飛び起きると、抱き枕は「あんっ」と鳴いた。
情報の洪水が、一気に俺の中に飛び込んでくる。
俺は丸い回転式のベッドに寝かされていた。
ベッドは魔導装置が仕込まれているようで、ゆっくり回転している。
傍らには褐色の肌の女性がふたりいて、ひとりは中学生くらいの少女、ひとりは熟女だった。
俺はそのふたりを知っているが、それよりも、周囲に目を奪われる。
ベッドのまわりは高いステージになっていて、下の客席は炎の精霊たちで埋め尽くされていた。
まるで溶岩の海に漂っているかのように、全方位が赤熱している。
上を見上げると、ドーム状の巨大な水晶に覆われていて、天井には俺の顔がアップで映し出されていた。
どこからともなく声が鳴り渡る。
『ユニバス様が、目を覚まされました! それでは女王様とガミメス様の、公開初夜とまいりましょう!』
そのアナウンスじみた声と同時に、夜の帳が降りたようにあたりが暗くなる。
ベッドはムード満点にライトアップされ、観客席の熱気も消え去った。
客席にはいくつかの炎がポツポツと残っており、それは人文字のようになっていた。
『我らが王 ユニバス様』と読める。
気付くと、ベッドにいた女性たちは俺の投げ出した足のところに移動していた。
俺はタキシード姿で、靴だけは作業靴のまま。
女性たちは深紅のウエディングドレス姿。
肌も露わで、ドレスというより下着に近い。
ガミメスと呼ばれた少女のほうはまだ発育途上なのでともかく、女王様のほうは豊満なので直視できないほどのビジュアルになっていた。
ふたりは俺の作業靴に手を添え、あーんと口を開けながら、ベールと長い髪をかきあげる。
すると炎の精霊特有の、プロミネンスのような耳がふわっとこぼれ出た。
頬を染めた上目で俺を見上げつつ、汚れた靴の上で、だらしなく舌を出している。
舌から垂れ落ちた唾が、靴のつま先に垂れ落していた。
ふたりがなにをしようとしているのか察した俺は、慌てて大声で制する。
「や、やめろっ! そんなことをするな!」
すると女王とガミメスは一瞬ビクリとしたものの、すぐに妖艶に笑う。
「いいえ、ユニバス。私たち母娘はこれから、あなたのものになるのですから」
ガミメスは甘えるような仕草で、俺の靴に頬ずりすしている。
「女の子に、恥をかかないでぇ、ユニバスぅ。
この様子は、ヒートアイランド全土で中継されてるんだよぉ?
つれないこと言わないで、あたしたちとここで初夜を迎えようよぉ。
そして、この国でずっといっしょに暮らそうよぉ」
ガミメスは今にも靴にキスしそうだったので、俺は足を引っ込め、あぐらをかいた。
「キミたちほどの立場にいる精霊なら、もうすでに知ってるはずだ!
俺が精婚をしないって宣言したことを!」
「きゃはっ! もちろん、知ってるよぉ。
それでもあたしとママは、どうしてもユニバスをふたり占めしたいんだぁ」
ガミメスは挑発的に笑いながら、ひとさし指を上に向ける。
つられて見上げると、天井には、ベッドにいる俺たちの姿が映し出されていた。
ガミメスがパチンと指を鳴らすと、映像がパッと切り替わる。
それは、ヒートアイランドの外の様子だった。
炎の壁のそばに停めてあるトランスの馬車、そのまわりを、燃え盛る兵士たちが取り囲んでいる。
「あれは……!」と驚く俺に、ガミメスが「きゃはっ!」と独特の笑い声をあげた。
「あたしがチョチョイって合図すれば、あの兵士たちは馬車に火を放つ手筈になってるの。
あの中には、ティフォンとイズミがいるんでしょぉ?
水の精霊のイズミはともかく、風の精霊のティフォンはひとたまりもないかもねぇ?」
「脅しているのか」
俺が真顔でガミメスを見据えると、ガミメスはビクッと肩を震わせる。
しかし人質を取っていることを思い出し、すぐに余裕を取り戻した。
「い……いいのぉ? あたしにそんな態度を取ってもぉ?
あたしがその気になれば、ティフォンは死んじゃうんだよぉ?
精霊にやさしいユニバスは、そんなこところ見たくないよねぇ?
だったら、あたしたちとここで契って……」
「やれるもんならやってみろ!」
俺が一喝した途端、ガミメスも女王もびくーん! と座ったまま飛び上がった。
明らかに動揺している。
「お……大きな声を出したら、あたしがビビると思ったら大間違いだからね!
本当にやるよ!? 本当に燃やしちゃうよ!?」
俺は即答する「いや、お前にはできない!」と。
ガミメスは豆鉄砲をくらったハトみたいになった。
「な、なんでよぉ!? あたしはユニバスと一緒にいられるんだったら、なんでもするつもりだよ!
精霊姫のひとりぐらい殺したって、なんとも……!」
「いいや、お前にはできない! 絶対にな! なぜならこの俺が、信じているからだ!
お前は、そんな女の子じゃない!」
「な、なにっ、それ……!? 意味わかんない!?」
「これは難しい話じゃない。信じるか、信じないかだ!
お前はどうなんだ!? お前を信じている俺を、裏切れるのか!?」
ガミメスはとうとう、半泣きになった。
「ユニバスを裏切るなんて、そんなことできるわけないじゃん! ずるいよ、そんな言い方して!」
「ずるいのはキミだっ!」
俺はガミメスの手を掴み、問答無用で抱き寄せる。
「きゃっ!?」と俺の胸に飛び込んできた彼女を、俺のあぐらの上で腹ばいにさせた。
「な、なにするの、ユニバス様っ!?」
「ティフォンとイズミは、俺の大切な精霊だ! 俺にはなにをしてもいいが、彼女たちに手を出す者は許さない!
今からそれを、思い知らせてやるっ!」
俺は振り上げた手を、Tバックの尻に振り下ろした。
……ぱちーん!
静寂に満ちた場内に、乾いた音が響き渡る。
「いっ、いたい! や、やめて、ユニバスっ!」
驚愕で固まる母親の前で、俺はガミメスの尻を打ち据え続けた。
「悪い子には、お仕置きだ! 自分がなにをしようとしていたのか、わかっているのか!?」
「いやあっ!? いたいいたいっ! いやぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」
ガミメスの絶叫。彼女はとうとう泣き出してしまったが、俺は叩くのをやめない。
「俺の大事な精霊に手を出した悪い子め! どうだ、反省したか!」
「はっ、はひっ! もうしません! もう絶対に悪いことはしません!
だから許して! 許してくださいっ! ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!
ユニバスさまぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!」