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第3話 情報収集

 まずやるべき事はこの世界についての情報収集だ。

 この世界で八年間暮らしているが、この世界について考えた事は一度もない。

 まぁ、当たり前の話だ。

 転生する前、自分が8歳だった頃のことを思い出してみる。

 その時に、「世界とはなんだ? 地球とはなんだ? 物理法則は?」そんなことを考えたことはただの一度もない。

 もし、そんなことを考えている子供がいたら天才か、でなければ間違いなく変人だ。


 俺はとりあえず本を読むことにした。本を読む事は昔から好きだったし、本には沢山の情報が書かれているに違いない。

 村長さんの家には大量の本が置いてあるのを見たことがある。最初見たときは全く興味を惹かれなかったが、今では宝の山のように感じる。

 それに村長は村一番の物知りで知られている。完璧だ!


 村長さんの家を目指す。隣を見れば当たり前のようにエリンが付いて来ている。

 調べ物するだけだから、付いて来てもつまらないよ、と言ったのだが「アレスと一緒ならどこでも楽しいよ!」だって!


 なんていい子なんだ! 死なせないからな、絶対助けてやる!

 覚悟を新たにした瞬間だった。その為にもまずは情報だ。


 村長さんの家に到着した。村長さんの家は他の村の人の家と比べても大きく、立派な家だ。

 扉を叩く。するとすぐに反応が返ってくる。


「ちょっと待っておくれ」


 しばらくすると扉が開いた。

 出て来たのは人が良さそうな顔をした初老の男だ。


「おや? どうしたんだい二人とも、何か私に用かな?」


 そう言ってしゃがみ、俺たちの視線に合わせてくれた。

 優しそうな笑みを浮かべている。


「こんにちは村長さん。今日は村長さんにお願いがあって来ました」


「お願い? 私に出来る事ならなんでも言っておくれ」


「実は調べ物をしたくて、村長さんの家にある本を読ませて欲しいです」


「勿論いいとも! 二人でお勉強なんて偉いねぇ」


 そっと俺の頭を撫でる。大きく温かい手だ。


「どんなことを知りたいんだい? 植物のことかい? それとも魔物のことかな、もしかして魔法のことかな?」


 魔法! そう言えばこの世界には魔法があったのだ。完全に忘れていた。

 俺も魔法を使うことが出来るのか!? テンションが上がって来た!


 魔法のことに意識を取られ、黙っていた俺に村長さんは優しく声をかける。


「遠慮する必要はない。自慢じゃないがこの家には多くの種類の本が沢山ある。なんでも言ってごらん」


 そうだ今は、魔法よりこの世界のことだ。


「えっと、この世界について知りたいです!」


 村長さんの動きが止まる。


 しまった! 言い方間違えた!


 表情は笑顔だが、顔が僅かに引きつっている。

 当然の反応だ。いきなり来た8歳の男の子が、世界について知りたいなんて言い出したらびっくりするに決まっている。俺だって表情を引きつらせるわ!

 表情にあまり表れていないのは、さすが大人と言ったところだ。

 急いで言葉を繋げる。


「え、えーと、そう! 魔物! 魔物について知りたいんだ」


 固まってた村長が動き出す。


「そ、そうかい。魔物の本ならいっぱいあるよ。いくらでも読んでいいからね。ほら、家に入りな」


 そう言って温かく家に招いてくれた。

 俺たちは本棚があるところまで案内される。大きな本棚が並んでおり、壁一面が本で埋め尽くされている。

 前世で俺は本を読むのも好きだったし、気に入った本を買い集めるのが、数少ない趣味の一つだった。だから、こう言った大きな本棚には憧れがある。

 前世ではお金やスペースの問題で買うことができなかった。羨ましい……

 そんなことを考えていると村長さんが一冊の本を持って来てくれた。


「これは一般的な魔物が沢山載っている本だよ」


 手渡された本はずっしりと重い。かなり大きく厚みもある。


「ありがとうございます!」


「読み終わったら声をかけておくれ。私もそこで本を読んでいるから」


 そう言って椅子のある方へと行ってしまった。

 俺は受け取った本を床に広げる。

 そこには地球でも見たことがあるような狼や猪に似た魔物から、地球では絶対に見ることができない奇妙な姿の魔物まで様々な種類の魔物が載っている。


 おぉ! ワイバーンやグリフォン、ユニコーンまで載っている。これぞファンタジーの世界って感じだ。

 ぺらぺらとページをめくっていく。ある魔物が目に入り、思わず手を止めてしまった。


「どうしたの? なんか怖い顔してるよ?」


「いや、なんでもない」


 顔に出てしまった。エリンに心配かけないように笑って見せる。

 そしてもう一度本へと視線を落とす。

 本にはある魔物が載っている。


 ブラックグリズリー


 この魔物にエリンは殺される。

 巨大な体に大きな爪を持っている。太い腕から繰り出させる攻撃は、簡単に人を殺すことが出来ると言う事は容易に想像ができる。

 エリンを守る為には、最悪この魔物と戦わなくてはならない。

 物語通りなら、エリンが死ぬのは二年後だ。その時にこの凶悪な魔物から、10歳の俺がエリンを守りきることが出来るのだろうか?

 いや、絶対に守るのだ。

 ブラックグリズリーの姿を目に焼き付ける。

 少しでもこの魔物について知りたい。俺は手始めにブラックグリズリーについて調べ始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 丁寧に、テンプレをなぞっていて安心感がありますね。文章はとても読みやすいです! [一言] 頑張ってください!
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