第20話 王国からの使者
六年という月日は本当にあっという間だった。俺とエリンは十六歳になり、成人を迎えた。
成人を迎えたエリンは村一番の美少女に成長していた。
光を集めたような金色の髪。長いまつ毛に、透き通るような青い目。柔らかそうな淡い色をした唇。小さい頃から可愛かったが、より磨きがかかった感じだ。それに体も女性らしく成長していた。むしろ一部分は成長し過ぎかもしれない。一緒に風呂に入って、胸が膨らみ始めているという衝撃の事実を知ってから、順調に成長を続けていた。
ゆったりとした服を着ていても、その存在感は失われることはない。出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。まさかここまで抜群のプロポーションになるとは思ってもみなかった。ずっと一緒にいた俺でもついつい視線を引き寄せられてしまう。
当然の話だが、村一番の美少女であるエリンはかなりモテる。これまでにも村の男たちが何人か告白していた。中には村の外から来た者にまで求婚されていたのをみた事がある。
まぁ、全員あえなく玉砕していたけど……
エリンはモテるのだが、この六年間俺には全く浮ついた話がなかった。強いて言えば、アルデさんの娘のノエルが「私将来、アレスお兄ちゃんのお嫁さんになる!」って言ってくれた事だけだ。その時ノエルは、まだ五歳だったけど……
懐いてくれるのは勿論嬉しかったが、その時のアルデさんの顔と放たれた殺気が恐ろしかったのを今でも覚えている。
この六年の間に俺たち二人はかなり力をつけたと思う。村で一位二位を争うほどの実力を付けている。エリンの加護は以前よりも強くなっているし、俺もかなり成長したと思う。
加護への干渉はスムーズに問題なく行えるようになったし、直接触れていなくても大丈夫だ。特に大きな成長といえば、影響を及ぼすことの出来る加護の数が一つから二つへと増えたことだ。これで俺たち二人の加護の効力を同時に引き上げる事ができようになった。
干渉できる加護の数が成長と共に増えるという事実はかなり大きい。このまま成長を続けていけばもっと増えるかもしれない。ただ、何年先の話になるかはわからないが……
隣にいたエリンが声をかけてくる。
「村長さんに届いた手紙の話なんだけど……」
そうだ。先日村長さんに王国から一通の手紙が届いた。内容は近々使者がこの村を訪れるというものだ。詳しい理由については使者から直接話がされるそうだ。
物語通りの展開なら、王国から騎士団が派遣される。そして騎士団長からアレスが勇者であると明らかになるのだ。そしてアレスは王国へと旅立つ。たしかそんな内容だったと思う。
「王国からの使者だなんて……一体この村になんの用があるんだろうね?」
「不思議だよな。こんな小さな村には何もないのに……」
適当に話を合わせておく。まさか、お目当ては俺です! だなんて言えるわけがない。
「なんだか不安だよ。来るなら早く来てくれればいいのに……」
「そうだな」
この世界は地球のように発展しているわけではない。地球にいた頃は、車や電車、飛行機を使って長距離を簡単に移動する事ができたが、この世界では難しいだろう。
ここ最近エリンは、落ち着かないらしい。王国からこんな小さな村には手紙が届いたとなれば、当然かもしれない。俺はある程度予想がついているからそこまで気にしてはいない。
まぁ、一番落ち着きがないのは村長さんだけど……
手紙を受け取ってからというもの、家の中でじっとしていられないのか、村の中をふらふらと歩き回っている姿をよく見かける。そして、村人と話すことで気を紛らわしているようだ。責任のある立場だと余計に心配になるのかもしれない。
おそらく数日の間には来るだろう。そして俺にとっても重要な日になるだろう。
本当は使者が来る前に村を出ようと考えていたがやめた。
エリンを助けようと、ブラックグリズリーに遭遇しないために、森に近づかせないようにしていたが、結局森に入って二体のブラックグリズリーに遭遇する羽目になった。逃げてもどうせ使者が来るのなら逃げるだけ無駄だ。それに逃げたことで、村の人たちに迷惑がかかるかもしれない。だったら最初から堂々と構えていた方がいいだろう。
さぁ、いつもでもかかってこいっ。
◆◆◆◆
数日後、予想通り騎士団が村に到着した。
俺は自分の家で静かに過ごしていた。すると勢いよく扉が開かれた。
エリンが飛び込むように家に入ってくる。呼吸は乱れ髪もぐちゃぐちゃになっている。相当慌てて来たようだ。
「た、大変だよ。村長さんがアレスを呼んでこいって!」
ついにこの日が来た。だが、今の俺は冷静だ。慌てたりしない。
「聖女様が村に来て、アレスのことを呼んでるの!」
そうそう、騎士団長が……………………聖女?




