第13話 運命
今日は俺の家に二つの家族が集まっていた。俺たちと、エリンの家族だ。
目の前には豪勢な食事が並んでいる。
この料理は、エリンのお母さんと俺の母さんの二人が腕によりをかけて作ったものだ。今日の朝からいろいろやっていた。かなりの力作だ。
今日はエリンの誕生日なのだ。いつから始まったものなのか覚えていないが、俺とエリンの誕生日には、両方の家族が集まって誕生日会が開かれる。
なぜ俺の家で誕生日会が開かれるかと言うと理由は単純だ。うちにあるテーブルの方がエリンの家にあるものより大きいからだ。
俺たちは豪勢な料理を囲むように座っている。
今日の主役であるエリンは照れ臭そうにはにかんでいる。
「よし、準備ができたことだし乾杯しようか」
父さんはそう言って飲み物を配り始める。大人たちはお酒で、俺とエリンは甘いジュースだ。
「ほら、アレス」
父さんが催促してくる。改まって言うとなるとなんだか気恥ずかしい。
エリンの方を見て言う。
「エリン、誕生日おめでとう」
「ありがとう!」
「エリンちゃんおめでとう」
「ありがとうございます」
今日はめでたい日だが、それと同時に来て欲しくない日でもあった。
本当にエリン死なせないように出来るのだろうか? 出来ることはやったと思うが、不安は一向になくならない。むしろ運命の日が近づくたびに不安で押しつぶされそうになっている。訓練を始めた頃は強くなることが目的だったが、今では不安を打ち消すためにやっているという部分が大きくなってきている気がする。体を動かして他のことに意識を向けているのだ。
今だってそうだ。俺はちゃんと笑えているだろうか?
エリンを不安を与えるべきではない。死ぬ可能性が高いだけで、確定事項ではないのだ。
いや……俺がそう信じたいだけなのかもしれない。
だが、この数日を乗り越えれば何かが大きく変わるはずだ。
今はエリンの誕生日をしっかりと祝おう。
俺は目の前にある料理を頬張った。正直味はあまり分からなかった。
◆◆◆◆
自室のベッドで目を覚ます。起き上がり体を伸ばすと、ポキポキと骨がなる。エリンの誕生日から数日が経過していた。
外を見る限り寝過ごしてしまったようだ。
最近あまり寝ることができていなかった。転生前は試合前とか大事な予定がある前などは緊張して寝れないタイプだった。それは転生しても変わっていなかったようだ。人はそう簡単には変わらないらしい。
それにエリンの死を回避するために、夜に準備をしていたこともあって寝不足気味だった。
だが、今日はよく寝たおかげで体調はかなり良い。
今日はアルデさんとの訓練はお休みだ。アルデさんはノエルと遊ぶ約束があるらしい。
身支度を整え部屋を出るとちょうど、家のドアが開いた。
エリンか?
扉から入ってきたのはエリンではなく、エリンのお母さんだ。
「おばさん、どうしたの?」
「あら? アレス君。ちょっとあなたのお母さんに用事があって来たのよ」
てっきりエリンが遅くまで寝ている俺を起こしにきたのかと思ったが違ったようだ。
「そうなんだ。ところでエリンは?」
「エリンならさっき一人で出かけていったわよ。てっきりアレス君のところに行ったのだと思っていたけど違ったのね」
え? エリンが一人で……
「そ、それっていつのこと!?」
「さっき出かけたばかりだから、あまり遠くには行っていないと思うわよ」
俺はおばさんの言葉を聞くとすぐに、アルデさんから貰った剣を持って家を飛び出した。
なんだか嫌な予感がする。
ここまでエリンをなるべく一人にしないようにしていたのにここにきてやらかした。完全に俺のミスだ。
家を出てエリンが行きそうなところを片っ端から当たる。しかし何処にもいない。
村の中を走り回る。焦っているせいか時間が過ぎるのが早く感じる。そのせいで余計に焦る気持ちが大きくなる。
いったい何処にいるんだよ!
その時ふと、ノエルと遊んでいるアルデさんの姿が視界に入る。
「アルデさんっ、エリン見ませんでしたか?」
俺を見て一瞬驚いたような顔をした。
「エリンか? エリンならさっきデルたちと一緒に森の方へ歩いていくのを見たぞ」
一瞬頭が真っ白になる。なんでデルたちと? そんな疑問が頭に浮かぶ。
ここ最近デル達は、俺たちに絡んでくることがなかったので完全に油断していた。
「ありがとうございましたっ」
森の方へと駆け出した。
「お、おい」
アルデさんが声を掛けてくるが、答えている暇はない。
よりによってなんで森なんだよっ、あいつら余計なことしやがって!
何処にぶつけたら良いかわからない怒りが込み上げてくる。
頭の中が怒り、焦り、不安と言ったさまざまな感情で支配される。
今は、エリンの無事を祈ることしか出来ない。
頼むっ、無事でいてくれ!
一章も残り数話です!




