入学試験ってこんなもんか
「解析魔術起動」
#include<magicstd>
#include<terminaliostream>
#include"magic_manage.mcpp"
#include"coordinate.mcpp"
main<=void
{
double x,y,z;
char magic_name[1000];
image_coordinate=>x,y,z;magic_gets(magic_name);//魔法開始相対座標入力、魔法指定
if magic_run(magic_name)=-1 terminal_print("実行失敗");//失敗時処理、端末にエラー表示
}
「おいおい、見本のような脆弱な魔術だな~~」
「な、何を言っているんだ」
magic_getsを魔術に使っておいて、俺の言っている意味がわからないらしい。もしかしてコイツ、学院にいるのに俺のあだ名を知らないのか。こんなの自動ハッキング魔術で十分だから俺は向かってくるファイアボールに対してなにもしない。main関数がこんなに脆弱な以上何をしても無駄だ。
じりじりと迫ってきたファイアボールが実際俺の一メートル前まで来た瞬間に、役目を果たしたかのように雲散霧消する。
「おい、お前。何もしないのか!なぜか失敗したが今度撃ったらただじゃすまないぞ!」
「何度でも撃ってみればいいじゃないか。俺には効かないけどな」
思わずあくびをしながら俺は目の前で起きている現象に気づかない奴にそう言った。目の前の対戦相手は本当に失敗しているだけだと思っているらしく何度も何度もファイアボールを撃ってきていた。間違いなくアホだろう。この様子では俺のあだ名所かハッキング魔術すら知らなさそうである。
「お前の魔術は俺が掌握した。自動反射魔術起動」
「は?何を言っているんだよ。俺の魔術を掌握した?俺がコントロールしてるだろ?ほら、この通り」
俺に向かっていた筈のファイアボールは、きっちり反転して半笑いをしていた少年に向かっていく。少年がコントロールしているということは、ひょっとして自殺願望でもあるのだろうか。
「え、なんで。なんで。俺の所に来るなよ!!あっちいけ!!!」
錯乱して腕をあっちいけあっちいけと振り続けている。え、強制終了なり魔術同士を打ち付けて相殺するなりすればいいじゃん。意味の分からない行動をしている対戦相手を後目にそんなことを考える。国立の首都魔術学院の志願者といっても所詮この程度なのだ。冷静に自分の知らない状況に対処できたりはしない。
追尾機能のあるファイアボールはそのままじりじりと少年に向かっていく。もはや逃げるということすらしない。哀れだ。
「どうにも出来なさそうだし、降参でもしたらどうだ?」
「そ、そうだ。降参!降参する!!」
天明を得たりといった表情で降参する少年。この学院に入って本当にいいのか不安になってきたな。審判に魔法解除を指示されて、解除すればいいことをやっと気づいたみたいだし。そんなことを思っていると審判が駆け寄ってきた。
「流石は、サイコ家のハッカー。お見事です」
「これに関しては俺が強かったんじゃない、相手が弱すぎただけだ。対戦式の試験があるのをわかっているのに有力な試験者について調べてこない、想定外の事態に対して何もできない。おまけにすぐ諦める。明らかに相手が弱すぎる」
「いえいえ、想定外の事態を作り出せた坊ちゃんの手腕によるものですよ」
確かにここで対戦相手が悪いことにするとやりすぎか。過ぎたるは猶及ばざるが如しとも言うし、ここは審判の賛辞を受け取っておこう。
ありがとうございますと審判に告げて、俺は試験会場から退出した。
試験会場から退出すると、執事と妹が車の前で待っていた。俺に気づくと俺と色違いの魔術構築補助装置がセットしてある手を振って呼んでいる。微笑ましい。
妹の腕が限界を迎えない内に着くように早足で車へと向かう
車へと着くと妹がニコニコとした表情で言う。
「どう?主席合格取れそう?」
「よしんば聞くとしても、合格への手ごたえはあったかくらいでそんな圧をかけるような質問はしないぞ妹よ」
「そりゃあ、普通はね。でも、お兄ちゃん絶対に受かってるじゃん」
「確かに本当に過去問と一緒で拍子抜けするほど簡単だったけどなぁ……」
そう言う妹の言葉に思わず納得してしまった。『オリジナルの魔術を一から作成しなさいとか、条件に合うMST(魔術構築補助装置)を設計せよ』とかが出ると思っていたのだが『0<=r<=4,0<=θ<=π/4の時、∬D((rsinθ)^2+(rcosθ)^2)dθdrの値を求めよ』とかそんな当たり前のことばかりなのである。
計算ぐらい出来て当然だろ。と、思うのだがおかしいというのが妹の弁で実際おかしく思えてきたぞ……確かに一番は狙えるだろうなと思っていたが、これほどまで認識の差異が生じているとは。
愕然とした気持ちを抱きながら俺は車に乗り込む。するとそういえば、と妹が話を切り出してきた。
「やっぱりお兄ちゃんとの主席争いといえばオウル家の女の子じゃない?どうだったの?」
「余裕そうだったし、戦闘も凄かったぞ。オウル家お得意の励起魔術で一発だ。発動までの演算やそもそもの魔術プログラ……」
「そういう細かい話はいいから!気持ち悪いよ。余計」
妹は心底嫌そうに顔を顰める。え、そんなに気持ち悪いか?
「お、おう。」
「やっぱり同じNORSの内の一家だけあって、ケアレスミスをしないか勝負になりそうなんだ」
「そうだな。俺の方も圧倒的勝利を収めてきたから、問題は筆記のケアレスミスだけだ」
逆に同じNORSが居なければ安心できたんだけどな。やはり政府指定の貴族は普通の貴族と格が違う。俺の"干渉"のような特化魔術が強力なうえ、それを使いこなせる魔術が一族の間で共有されている。出来れば主席合格が取りたいが、どうなるかは合格かどうかが発表される合格発表までお預けだな。
「家に着きましたよ」
そういう執事の言葉思考を中断し顔を上げ、車から降りる。
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