あいされているよ!そーどちゃん!
《こいつぁ。今朝、ウィザード……いや、ウィズの使ったやつでな。ほら、戦果上げたろ?だからよ!描いてみた!》
「!!」
「!んな……おま……。いつの間に……。」
トムさんが言うことには、これは、俺が扱ったウィングビットであり。
先の戦果故、祝うためもあってすぐに描いたものらしい。
思わぬそれは、サプライズであり、つい目を丸くしてしまう。
ビリーさんは、耳にしてあんぐりと口を開けてしまう。
《名付けて、〝ウィズ専用ウィングビット〟!あ、ご要望なら、この機体の塗装を変えることもできるぜ?赤く塗ったろか?3倍ぐらい速くなったりして、うはははは!!》
「……えぇ~……。」
「はぁぁ~……。マークとか描くの得意なら、このまま絵師になれよ……。」
トムさんは、自慢げに続けるなら、専用機だとして。
加えて、楽しそうに笑い声を上げるのだ。
なお、俺は用意されたそれに、戸惑いが隠せなく。
傍ら、ビリーさんは呆れに頭を抱えてしまう。
《またまたぁ~。そんな専用機とか見てみたいって、本心では思っているくせにさぁ。素直になりな!》
「……あ~はいはい。見たい見たい~……。」
ビリーさんの様子に、トムさんが言葉を掛けることには。
本心では見たいだろうということだったが。
当のビリーさんは、受け流すような様子を示していた。
……その様子は残念ながら、トムさんが期待していることとは違うのだが。
《ようし!俺は今日は気分がいい!ついでに解説も加えてやる!》
「あ~……まあ、暇でよろしいことで……。」
気付いていないトムさんは。
ビリーさんはおろか、俺たちにまでも説明しそうな様子を示した。
ビリーさんは呆れ顔のまま、多分これは、聞き流す。
《この杖のマーク、まあ、ウィッチと被るが、やっぱり魔術師ならってんで付けてんのさ!んで、この隣の沢山の整列した丸印は、回収したスフィアの数。ついでに、一番端っこには、戦闘機のも付けといた!》
「!」
解説されることには、そのウィングビットに書いてあるのには。
ちゃんとした意味があったようだ。
意匠。
杖のマークは魔術師たるウィザードを表し。
その隣の円形を沢山配置した模様は。
俺が今日回収したスフィアの数を示していると。
最後に言っていたが、よく見たら端っこには、戦闘機のシルエットもあって。
それは、その哨戒、回収作業にて。
最後ソードの機体に対して、撃墜判定を与えたとしてのことだそう。
「……。」
聞いて理解したなら、どうも複雑に思ってしまう。
果たして、いいのやら?
その戦果のほとんどは、俺ではなく、盾のはずだけど……。
なお、念を飛ばしてみるも、盾はこのことについて何も言いやしなかった。
「……っておいおいおいおい!!そんな意匠だか何だか付けてくれるんなら、俺のにも付けろよな!!」
「!」
話は当然、他の人も聞いているわけで。
気に食わないといった雰囲気で声を上げたのは、ソード。
ずっと、カプセルの席についていながらも、聞いていて。
トムさんやビリーの会話を聞いていて、面白くはない様子。
後ろ姿しか見えないが、不貞腐れていそう。
そんな雰囲気でいながら、言うことには、自分にも付けてくれとの願いも。
「だってよ!俺だって戦果上げてんじゃん!ええ?さっき、そこで色々言ってたじゃんかよ!ほら、撤退作戦に救出作戦に、とか!これを機会に、俺にも付けてくり!」
願いの根拠に先ほど述べた戦果も加えて。
また、後ろ姿ながら、微かに肩や腕が動くのが見えていて。
どうやら、拝み手もしているのかもしれない。
だがその拝み手による願いは。
《え~……。》
打ち砕かれる、それを予感させる、トムさんの声。
「んだぁと?!いいじゃん!!」
《いやぁ、言われると思って。用意はしてんだけどな?》
最初否定されたと思って反発したが。
トムさんはしかし、意外な答えを用意してくる。
「?!何だって?!」
トムさんにそう言われるものだから、翻って顔を明るくする。
その期待に応えるように、トムさんが画面を動かすなら。
別のウィングビットを映してくる。
映されたそのウィングビットを、くるりと反転させるなら。
「!」
普通のウィングビットのようだったが、違いとして文字が描かれているよう。
それも、格好よく、書体はそんな、ロゴマークにそのまま使えそうなほど。
では、その文字とは。
「……ええと、L・O・S・E・R……。……。」
俺は、口にしてその文字をよく見て、解読してみるに。
だが、理解したなら、慌てて口を手で覆い、その先を物理的に紡ぐまいとする。
な、なかなか酷い言い草だ、……〝敗北者〟とは。
ソードを傷つけかねない。
「なになぁに~!」
ウキウキして、ソードは身を乗り出して、大きなモニターをマジマジと見る。
その気分高揚っぷりに俺は途端、悲しく思えてならない。
「ええと、L・O・S・E・R。ルーザー!へへっ!恰好いいな!」
「?!」
ソードもまた、書かれてある文字を読んで。だが、意外な返答を示す。
意外な返答に、俺はぎょっとしてしまう。まさかとも、脳裏には浮かんで。
まさか、文字の意味を読めないとか、じゃないよな?
「……ってなると思うかごるぁああ!!!」
「!……ほっ。」
などと思ったのは早計。
間を置いてソードは、怒りに吠える。
なお俺は、その怒り心頭に、大丈夫だったと安堵してしまう。
まさかという懸念は払拭されたようだ。
「誰が敗北者じゃ~!!」
意味を口にして、なおも燃え上がる。地団太まで踏んで。
「あ~あ~。一応言っとくが、ぶっ壊すなよ?高いぞ……。」
ビリーさんは言っておくが。
もちろん、頭に血が上ったであろうソードには、通じていない。
「まあ、事実だしな。」
「……やり過ぎな気がするけど……ねぇ……。」
ギャラリーのフィーさんたちも、口々に言う。
実際、俺に負けてしまったという事実があるのだから。
しかし、事実であっても、その言葉は、火に油を注ぐだけだ。
「!!」
「「?!」」
ぎろりと、ソードはギャラリーに振り向いて。
フィーさんたちは、意外なその喧騒に、びくっと体を跳ねさせる。
「うぅがぁああああああああ!!!」
「やっべ!!激おこだ!」
「いや、ムカチャッカファイアーじゃね?!」
「と、ともかく大噴火。逃げろぉぉ!!」
ソードはとうとう爆発し、咆哮。
それにかこつけて、ギャラリーのフィーさんたちは、逃げ出した。
所々、懐かしい言葉が呟かれたが。
感傷に浸る以前に、激昂が邪魔をして、掻き消してしまう。
……そう、トムさんが予感させたことは、ここにて的中したと結論する。
「うぅぅぅう!!!」
未だ、怒り収まらないソードは、唸り声を上げ。
またモニターに振り返り、指を、それも誰かの体に突き刺すような勢いで向ける。
「やいやいやい!!」
地団太変わらず踏み鳴らしては、言って。
「てめぇら!覚えてろ!!!今からウィングビット使って、てめぇらハチの巣にしてやる!!!」
《うあははっ!やっても無駄だぜ!その前に俺がバズーカで落としてやる!》
「?!」
挙句の果てに、煽りに文句を言うが。
それらはスルーされる。
「なん……だと……?!」
煽った本人が、逆にそう返されるのだから、意外そうだと目を丸くする。
「……?」
俺はよく分かっていないが。
もしかして、飛んでいる航空機を、そういう物で撃ち落とせるということ?
《伊達にお前目掛けて練習していないぜ?いつも帰ってくる時、実は狙っていんのよ!で、丁度いい所で、〝バーン〟なんつって!》
トムさんは言いつつ、また、画面に自分の手を見せて、丁度、ソードの機体に目掛けて、鉄砲の形を作って、撃ってみせる。
《いや?実物みせた方がいい?》
「!」
また、画面を動かすなら側の、丁度足元付近に行くと。
やたらとでかい筒状の物が目に付いた。
文字も書かれてあり。
……対戦闘機用ロケットランチャー。主にソードへ。
俺たち甲板クルーより素敵な愛を込めて(はぁと。……などと書かれてある。
「……。」
コメントのしようがない。
どうやら、常日頃用意しているということか?それもまた、何で?
そこは、ここのクルーの考えることのため。
これ以上踏み込むことはできないと思った。
「う……!うがぁあああああああ!!!皆嫌いだー!!!」
反対にソードは、またまた噴火して。
咆哮しては、嫌悪を露にする。
相当な怒りも感じる。流石に、相当数な人間に嫌われているとされると。
たとえソードと言えども、傷付くだろう。
「あ……やり過ぎたか。……その、何だ、ソード。気にすんな!ジョークだろうよ!いつもの、な!気にしていたら、わりぃ!」
「うーー!!ううぅぅぅううう!!!」
「……。」
「やっべ!マジギレしてる……。」
ちょっとしたジョークのようなものだと笑い飛ばそうとする勢いであったが。
ビリーさんは、しかし、やり過ぎたかと自覚はしていて。
フランクな感じで謝りはするが。
らしくなくソードは、どうも本気で怒っているみたいであり、効果が薄そうだ。
軽く焦りはしていて。
「!」
さらには、助けを求めるべく、俺に目配せしてもきた。
気付いて俺は、ピンと耳を立てる。
「!」
その視線には、マフィンも気付いていて。
加えて、肘で俺を軽く突いて合図を送ってくる。
「……。」
マフィンを見れば、言葉はないが、何とかしなさいよと訴えているようだ。
……そう訴えられると困りはするが。しかし、他に適任もいなさそう。
適任かどうか別の、アビーはいそうだが。
この場合、場を滅茶苦茶にしかねない危険性が高い。
なら、俺しかないが、どうしようか。
「……。」
考えるよりも先に、俺は動き、ふと、ソードの肩を叩く。
「?!な、何だぁ!!」
「!うっ。」
ただ、近付いて肩を叩くのはよかったが。
本気で怒っていると言わんばかりに。
すごまれると、俺は頼られたにもかかわらず、後退しそうになる。
「……。」
臆してしまった自分に、鞭打って見据えるなら。
「……そ、そのソード?」
「あ?!」
「……み、皆嫌っているわけじゃないと思うよ?ほ、ほら。だって、そうでなきゃ、そもそも〝愛〟なんて書かないよ……。」
「?!」
言い始める。
何と言えばいいか、よく分からない。
そうであっても言い出すことには。
決して皆嫌っていたり、本気でいじめているということではない、と。
確かに。
行き過ぎてはいる。そうであっても。
ソードのそれを、どこまでも疎ましいと思っているわけでもあるまい。
ソードの反応は、受け止め方によっては、問題になりはするが。
思い起こすことには、内心そうは思っていない。
ある意味で、ムードメーカーのようなものだと。
……だからこそ、愛されているのでは?
よく紡げないが、俺は伝える。
するとソードは、意外そうな顔を見せる。




