そーどちゃんだいふんか!
「うっ……。」
外の明るさが入ってくるなら、一瞬目を瞑るが、すぐに慣れて開いた。
「!」
また、カプセルが開き、外の明るさと共に今度は、歓声まで響き。
何事と思い、ヘルメットを取り、体を外に出し、見渡すなら。
「!!」
今日何度も見たが、少ないながら人だかりもあった。見知った顔の人たちで。
一部はもちろん、俺が住む村の住人だが。
他はフィーさんたちと、ビリーさんたちだ。
「いよっ!稼ぎ頭!!」
「ソードに賭けた奴ら、今頃泣いてらー!」
「!」
特に、隊員さんたちの歓声は目立ち。
俺への称賛もさることながら、賭けていることもあり、として。
「……。」
あんまり、そういう気がないために、どうとも言えない。
ただ、このまま何もしないというのも悪く、よく分からないでいるが。
俺は苦笑しながら手を振って応じることにした。
歓声は高まり、指笛も飛ぶ。
「ははっ!残念だったな!ソード!ま、相手は魔術師ということで。」
「気にすんなよ!負けて泣いても、別に俺は笑いやしないさ!……多分!」
一方で、ソードのことを気にする声も。
その人たちは、ソードを見ていて。
一応、視線を向けたなら、ソードが入っているカプセルも開いていて。
さらには、ソード自身の姿も見受けられる。
カプセルから出て。
変に深刻な表情をしていた。
らしくないやと、思えて。
いつもの、アビーみたいに底なしに明るそうな表情は。
だがこの時にはしていなかった。
誰かは言いそうなことを思ってしまう。
今日は嵐かもね、ってね。
「……。」
負けた悔しさ、それも、よりにもよって、百戦錬磨なんて程遠い。
長閑な村の住人たる俺に負けた、相当なものだろう。
だが、想像できない。
分かる立場にない俺には、想像力を越えてしまう。
故に、何をされるかも、何を言われるかも、想像できない。
ソードはそんな、どんな言葉を掛ければいいか分からない。
深刻な表情を湛えたまま、カプセルから飛び降りて、こちらに歩み寄ってくる。
「……。」
せめて、失礼のないようにと努めることに俺は。
合わせるようにカプセルから降りて、バックパックを背負い直して向く。
ヅカヅカと荒く足音を立てながら近付いてくる。
俺は、ごくりと唾を飲み込んで、つい身構えてしまう。
負けた腹いせに、何をされるか分かったものじゃない。
構えとして、いつでも飛び退けるような形をしていた。
腕が届く範囲まで来るなら。
「すっげー!!!!」
「?!」
予想外のことが起きてしまった。
ソードは、真剣な表情一転して、はしゃぐ子どものような表情になる。
顔は一気に明るくなり、そう、いつものソードと思わせるような。
いや待て。
そもそも、深刻な表情をしていることこそが予想外で、想像外。
この、底なしの明るさこそ普通。
ソード、らしい。
あまりの豹変ぶりに、つい声を上げてしまいそうになったが。
冷静に考えるなら、落ち着きもする。
「やっぱ、すっげー!アニメや漫画みたいだ!!一般人がよ!コックピットに乗って、操縦してさ、倒しちゃうなんてさ!!!うはぁぁ!!」
「……えぇ~……。」
一方でソードは反対に、興奮して言ってくる。
この光景が、まるで漫画やアニメみたいだとして。
今この瞬間に現れた、伝説を作る存在に、興奮を禁じ得ないのだろう。
俺は、落ち着きから一転して、戸惑いを見せる。
また、どう答えていいか分からない。
あんまり、自慢げに胸を張るのもらしくなく。
困りについに、助けさえ求めたく、辺りを見渡してしまう。
「なぁなぁ!!!このまま入隊しようぜ?相棒!そしたら、いつも一緒に飛べるから!!」
「……え、ええと……。」
ソードはお構いなしだ、言ってくる。
挙句、俺をスカウトまでしてきて。
それは余計に、戸惑わせる。俺は、何と言っていいか、分からずにいた。
「!」
その最中、外からはドカドカと喧しい足音が多数聞こえてきて。
喧しい、だが、幸いに思えてならない。
どう言おうという迷いは、幸いに、気になる、ということにより消され。
さて、見れば、沢山の隊員さんたちが向かってきていた。
「おーい!ビリー!!どうなった?!」
「!」
開口一番、どうやら結果についてのようで。
ただ、疑問はある。
単に結果を知りたいだけなら、わざわざ駆け付けるようなことはするまいて。
言われた、ビリーさんは勢いに戸惑いを露にしているが。
ニヤッと、笑みを浮かべてくる。
「ウィズの勝ちだ!大番狂わせだぜ?……どうする?」
「!!うげぁああああ!!!」
俺が勝ったと告げるなら、聞いてきた隊員さんは、頭を抱えて崩れてしまう。
「……?」
なぜだろう?
「つまり、俺の勝ち。へへへ~ん!お前ら奢れよ?」
「くっそ~……!!借金がぁ~……!!」
「……ん?」
聞いていく内に、何となく分かりそうになる。
ここに行くがてら、耳にしたようなそれは。
……賭け事。
俺とソードの勝負をあてとして、やるとかどうとかしていたような。
ここにきて、ふと思い出す。
「ごるぁぁ!!ソードぉぉぉ!!!何負けてんだぁ!!」
「おかげで俺ぁ、ビリーに借金だ!!」
「どーしてくれる!!」
気付かない範囲で、話を回していたようで。
多分ソードに賭けていただろう人たちか。
それぞれ耳にしては、落胆の雰囲気を広めて。
挙句、ソードに対して、隊員さんたちは罵声を浴びせていく。
「……。」
俺は、どうにもできず、静かにしている。
「……かっちーん!!」
「!」
一方、同じような音声は、ソードも聞いていて。
耳にしては、笑いながらも青筋を立てて、子どもみたいに何かを口走る。
どうやら、口にされたことに苛立って。
首をゆっくりそちらの、入り口の方に向くなら。
「んだとぉー!!!!てめぇらぁ!!」
すぐに怒りの火山が、噴火。
こちらから飛び退くなら、一気に入り口まで詰め寄っていく。
「うわぁ!怒ったぞ!!」
「疫病神が!!!」
「逃げろぉー!!」
ソードが近付くなら、ギャラリーで和気あいあいとしていた隊員さんたちは。
翻って逃げ去ろうとして、駆け出す。
「あ!!てめぇら!!!」
追おうとするソードだが。
入り口には、エルザおばさんやレオおじさん。
シン、アビー、マフィン、他にビリーさんの同僚。
加えて、聞きつけたフィーさんたちもいて。
壁のようになってしまっている。
それが妨害して、ソードはなかなか追えないでいた。
「あ!!くそっ!!邪魔だぁ!!!」
ソードは悪態をつき、人だかりをもがきながら進んでいく。
「うっし!ラッキー!!」
それが幸運で、冷やかす隊員さんたちは、駆け出して、逃げていった。
「うがぁ!!てめぇら覚えてろー!!!家を爆撃してやる!!いや、ここの部屋ごと爆破してやる!!!」
致し方ない。
歯痒い思いを吐露しながらも、ソードは捨て文句をして。
なかなか、物騒なことを口にしている。
「やれるもんならやってみやがれ!!」
「大量の対空気銃でお出迎えだ!ついでに、SAMも用意してやる!」
「家は消し飛んでも、俺っちはここに暮らしてるからなー……。この艦を吹き飛ばすってんなら、俺だけじゃなく、他の奴も黙ってねーぜ!」
「……。」
売り言葉に買い言葉。
言われた人たちは、やはり煽るような感じでもあり。
やり合うなら、こちらも徹底的にやるといった具合。
去り際に、残して、駆け出していった。
「う……。うぐぐぐぐぐ!!!」
その姿見て。
歯痒さは広まり、ソードは歯軋りするしかなく。
「覚えてろぉぉぉぉ!!!」
追うことはできない以上、その言葉を掛ける。
「……。」
「……がるるる~……。」
そのソードの言葉が聞こえたかどうかは知らないが、駆け足が遠退いていくのを耳にして。
まだ、歯痒さが残るか。
ソードは加えて、歯を剥き出しに、唸り声を上げる。
俺は、去っていくその姿に、ソードの姿に。
何と声を掛けていいのか、分からないでいる。
「……あ、まあ。そ、ソード。気にすんな!」
「そうだぜー。別に負けたことがないってわけでもあるまい。ほら、負けた奴は他にもいんだろ?な?」
「……うぅ~……。」
フォローはフィーさんたちがしてくれる。
落ち着かせようとして。
苛立ちの原因たる敗北を紛らわすために、声掛けをしてきた。
別に、今日初めて負けたわけではあるまい。
俺が知っているだけでも、ガントさんやシールドさんには負けている。
だって、その場に俺もいたから。
昨日、一緒にやった際。
ガントさんや、シールドさん、ウィッチさんのチームに敗北しているし。
ソードは聞いて、冷静になってくるか。
軽く項垂れながらも、冷静になるために、数えるか、手を動かしだす。
「俺が負けたのは……。ゲーマーのケビン、同じくゲーマーのクレリック、同じくゲーマーのメイス……。ガント、シールド……。」
数えだすのは、敗北の数。
言葉から感じられるのは、多そうだ。
決して、敗北を知らないというわけでもあるまい。
「……?」
だが、耳にした中で、首を傾げてしまう。
敗北した相手の名前を言っているが、中にはゲーマーがいて。
ふと、ソードの交友関係を知りたくもなる。
相手にゲーマーがいるのは、またまた不思議なことで。
「……ウィッチ……。」
「……!」
俺が、首を傾げている中、ソードはまだ、カウントしていて。
途端、ウィッチさんの名前になった際、嫌にトーンが下がる。
その下がり様に、つい体を跳ねさせてしまう。
「……ウィズ……。……田舎者の正体不明、奇跡の魔術師……。」
「……ごくり。」
まだまだ続けて、俺のことを言っていて。
挙句、その際にまた、噴火前兆の、震えが始まる。
緊張して、俺は生唾を飲み込んでしまった。
「うがぁあああああああ!!!」
案の定、噴火する。
矛先は、……多分俺か?
「ありゃ、逆効果。」
傍ら、慰めるために言ったはずなのに。
フィーさんは逆効果と気付いて口を押えてしまう。
「!」
俺は閃く、この噴火を止める方法を。
「ソード待って!!敗北なんてのより、自分が勝利したこと思い出して!」
ソードを押さえつつ、俺が慌てて言うことには。
敗北よりも、勝利したことと。
初めての敗北じゃあるまいし、それはそう。
でも、この場ではあんまり、勇気付けるのには不向き。
それよりも、勝利のことを思い出すなら。
苛立ちも薄れよう。
「!!」
ソードは、言われて、ピタリと止まるならまた、手でカウントをしだす。
「……ええと、第三次円卓海海戦、北極海攻略、東南海諸島奪還作戦、中央海撤退救出作戦、そして、帝国中央部攻略作戦……。」
口にするのは、作戦名のよう。
ソードが言うそれらは、自身含む、あらゆる人間が勝利したことで。
「おー!ウィズ、ナイスアイデア。これなら、こいつも気がよくなるな!」
ビリーさんは、ソードのカウントする作戦を耳にして、俺に称賛を送る。
「!」
耳にして判断することには。
やはりソードが口にしているのは、勝利した作戦のようだ。
また、そう、気をよくさせる方法はまた、効果がありそうとも。




