いっきうち!
「……。」
手を顎に添えて考えることには。
相手だって、本気で来るのなら。
得意なことでやり合うというのは、決して悪いことではあるまい。
それに、ウィングビットなら。
スフィアを扱えるなら、この選択肢以外は、存在しない。
「……これで行こう。」
言うなら、その兵装にして、俺は出撃する。
準備が整ったとなると。
画面下のモニターにスタートと表示され、俺はその場所を押した。
「!」
コックピットが明るくなり、場所が格納庫を表示していた場所から。
一気に大海原と、大空の場所へと出てくる。
《シチュエーションを確認。季節は冬の模様。北の方に高気圧があり、南の方角に風が吹いています。気温10℃を下回っています。風速……。また、風が乱れていることから、天気は移り変わりしやすい状況です。突風などに注意してください。》
「!」
明るくなったなら、状況を解析しているようで、冷静に言ってくる。
見れば、所々に雲があり。
強い風になびいて、雲の移動速度が速いことから、風速もある。
機体から感じる振動も強く。
「……。」
機体が安定性を失って、墜ちそうだとも感じ、冷や汗を流す。
だからか、握る手の力は強くなってしまった。
そうであっても、周りを見たりしては、相手がどこにいるのかを探して。
「……この場所は……。」
見覚えがあるような気がする。
「!」
気付くことには。
最初このシミュレーターで選択されたシチュエーションじゃないか。
楕円ながら、闘技場を思わせる、海。
かつての海戦、空戦で、多くを飲み込んできた、戦場。
《戦う理由は見つかったか?》
「!!」
思いについ、耽っていたなら、通信が入る。
やけに、真剣な面持ちさえ感じさせるような、口調。
はっとし、目を見開いたなら。
《相棒!》
「?!」
ソードが言い切ったその時に。
不意に脳裏にて、オールドギターの一節が、流れ消えていく。
《機影を確認。》
「!」
合わせて、僅かながらの影を見付ける。
それも、こちらを眼前に捉えている風の。
……ソードだ。
まるでこれは、本当に一騎打ちのようだ。
《機体解析完了。表示します。》
「……ありがとう。」
丁寧に盾は言って、解析結果をコックピット備え付けのモニターと。
こちらのヘルメット搭載のモニターに表示する。
「……?」
元となる機体は、こちらと同じだが。
主翼や胴体などに、兵装は一切見受けられない。
《強力なジャマーを搭載して、敵の目を欺き、一気に接近して攻撃すると思われます。ミサイルによる攻撃は、有効打にはなりません。》
「!」
盾が説明をすることには。
その代わりとして、ジャミングを起こす兵装を各部に搭載している様子。
このため、ミサイルによる兵装は有効打にはならない模様。
どうやら、盾のアドバイス通りに選択してよかったのかもしれない。
これなら、下手であっても、上手くは立ち回れるかな。
《加えて、フォトンシールドエクステンションジェネレーターを搭載していることから、防御力を上げています。安定性も向上しています。このことから解析される、相手の戦い方は……。》
「……ごくり。」
なおも、解析はやっていて。
唾を飲み込みながら聞くことには。
《単騎でドッグファイトを挑み、乱戦に持ち込む戦い方と推測します。》
「……らしいね。何だか……。」
相手の行動を予想することには。
ウィングビットのような姑息な手段を採るのではなく。
接近して相手を叩きのめす戦い方。
ソードらしい。
しかしこれこそ、搭乗者の技量に左右されるのかもしれない。
俺の持つ兵装のような、多方向からの戦い方に対して。
接近戦を持ち込み、叩いてくることは、絶対たる力を誇示するようなものであり。
今ここにそれを、本気で見せ付けるつもりだ。
「!!」
戦いの火ぶたを切って落とす如く、眼前よりソードは、機銃を撃ってきた。
俺は、機体を倒し、かわしていく。
その横を、光弾がかすめていく。
《!……ちぃ。勘のいい奴。》
舌打ちが聞こえて。
やがて、その横を風切り音を上げながら、高加速で通り過ぎる。
「!うぅ?!」
衝撃に、軽く機体が揺れた。
軽く、呻いてしまう。
そうであっても、相手は勝負を仕掛けてきている。
見逃すまいと、追うものの。
もうその姿は、空の彼方、レーダーで。
もう捉えられない所まで行ってしまっているようだ。
《へへっ。だからか……。》
隠れて、余裕を持っているか。
ソードは言っている。口元に、笑みが浮かんでもいるようだ。
《……このセリフ、言ってみたかったんだよな。……不死身のエースってのは戦場に長くいた奴の過信だ。》
「!」
余裕があるか。
通信はなおも続き。
《お前のことだよ、相棒。》
「!!」
言っては、レーダーに影が微かに映る。
嫌な予感がするなら、機体を反転、迎え撃つ姿勢を取るなら。
またまた光弾がかすめていった。
同じように通り過ぎるなら、風が巻き起こり、機体を揺らしていく。
「!」
と、軌跡に白が舞う。
一瞬、鳥の羽が抜け、舞う様子と見間違えたが、違う。
空にてふわりと舞うそれは、雪。
冷えた空気に乗り、舞う羽のような雪であった。
見れば、雲も多くあり、戦場を囲むかのよう。
《外気温低下。降雪を確認。気圧の谷が接近。突風に注意。》
盾は冷静に分析するなら、告げて。
急激な外気温低下に、気圧の谷として。
「?!おわっ?!」
現に、お告げ通り突風が揺らした。
だからか、連れて、機体が軽く下に落ちてしまう。
「うぐぐぐっ!!」
操縦桿を引き、落下を防ぐなら、姿勢を戻す。
「!!」
異様な風切り音が聞こえるなら。
俺の後ろから、風を伴って。
音速を越える勢いで駆け抜けるソードが姿を見せて、通り過ぎようとしていく。
「……?」
チャンスのはずだが、相手は撃ってこない。
何の意図があってか分からないが。
通り過ぎたその先刹那、相手はこちらに背を向けた状態であり。
また、合わせてか、こちらのロックオンマーカーが動く。
「……。」
盾の言葉を思い起こしたなら。
ミサイルによる攻撃は無効だとして、俺が選択するのは、機銃だ。
「くぅ!」
トリガーを引くなら、こちらからも光弾が射出されて相手へと向かう。
「?!」
後ろに目があるのか、ソードは見切ってか、軽々とかわす。
《へへっ!奮い立つか。ならば、俺を墜としてみせろ!!!》
「!」
ついでに、煽るような文句も言ってくる。
余裕な様子であり。
ひょいっと機体を翻しては、雲の中に消えて。
かつ、レーダーからも消える。
「……。」
ステルス機とは、こうも難しいものかと、素人ながらも思ってしまった。
《アドバイスがあります。》
「!」
俺が小難しいことを考えているなら、盾が言ってくる。
見えているかは知らないが、俺は頷きを返した。
《現状、ステルス性能に差がありますが、挽回する手段はあります。》
「……うん。」
静かに聞き入るなら。
《ウィングビット全射出をお薦めします。完全射出状態であれば、ステルス性能は互角。また、ウィングビットを通して、レーダーとリンクさせることにより範囲を広げることもできます。》
「!」
そのアドバイスとは。
ステルス性能を著しく下げている、主翼下にあるウィングビットまでも。
まるで投棄するように扱うことで。
レーダー反射面積を小さくして、こちらも相手と同じようになることである。
現状、相手からは丸見えなのかもしれない。
「……。」
アドバイスに従うことにして、だが、懸念もあってか。
俺は、ごくりと唾を飲み込んでしまう。
扱いこなせるかということだ。
スフィアの扱いには長けているとはいえ、果たして、どれほどか。
「!!!」
煽るかのようか、アラートが鳴る。
それは、ロックオンアラートであり。
それは、喉元に刃を突き立てる。
……いつでも、殺せると。
振り切るために俺は、急旋回をした。
「っ!!!」
かかる圧力は強く。
シミュレーターでさえ、再現してくるか、呼吸ができなくなりそうだ。
振り切る振り切らないとかは、別としても。
その後ろをまた、ソードは駆け抜けて。
合わせて、降る雪が舞う。
《……降ってきたか。》
「!」
相手はなおも、感傷に浸るようなセリフを呟く。
どうやら、自信があるか、なおも余裕を見せつけるようで。
……一方で俺は、避けるのに精一杯。
このままだと、精神力を失い、やられてしまう。
いや、まさかとも思ってしまう。
そのようにして、俺の精神を削ることを目的としているなら。
合点がいくことと感じてしまう。
だから、さっきから、狙い撃てるだろうに、しなかったと。
「……。」
四の五の言っていられないか。
余裕がないならと俺は、兵装を選択して。
ウィングビットを起動する。
「……うっ?!」
途端、体や頭に、スフィアの感触が沢山来るのを感じた。
いきなりのそれに、呻きはするが。
やれるかどうか、分からないならと。
呻きにうろたえることなく、真っ直ぐ見据えては。
一瞬、目を瞑るなら、イメージを浮かばせる。
また見開くなら。
「いけっ!」
声を放つ。
合わせて、ウィングビットたちも、放たれる。
主翼からも、胴体のウェポンベイからも、矢じりが放たれていく。
そして、命令に従うように、空を駆けていく。
《ウィングビット、ドライブ。》
盾は、冷静に言ってくれた。
「……。」
一旦操縦桿から手を放し、ありがとうと念と一緒に。
撫でるように手を動かしてはまた、手を戻した。
どうやら、モニターもしてくれているようで。
邪魔は、多分しない。
「!」
また、気付くことだが。
レーダーの精度が上がったか、像が鮮明になっている気がする。
アドバイス通りだ。
ウィングビットを通して。
こちらのレーダー捜索範囲を広げることができたようだ。
そのおかげで、……はっきりとソードの機体の姿を捉えられる。
いくらステルス機とはいえ。
沢山の、それも、広範囲、多方向からのレーダー照射には。
その姿を露にするしかない。
「そこっ!」
見据えたなら、叫ぶ。
俺は、叫ぶだけであっても、それでいい。
ウィングビットが仕事をしてくれるようで、相手に対して、光弾を放っていく。
その光弾は、相手に直撃をしたようだ。
「?!」
が、相手は平気そう。
確か、フォトンシールドを強化している仕様とかなんとか。
言っていたような気がする。
《相手にダメージはありません。フォトンシールドが妨害していることを確認しました。》
「やっぱり。」
《しかし、いくらフォトンシールドであっても、連続照射には耐えられない模様ですので、レーザー照射に切り替えましょう。》
盾が冷静に分析して、言ってくる。
やっぱりなと思ってしまうものの、だが、アドバイスはあって。
いくら防げても、フォトンシールドの回復時間を上回るなら。
有効打になり得るとして。
「……分かった。」
盾には、頷きを返すなら、また、見据える。
《うおっと?!へへっ!そうでなくっちゃ!》
一方で、相手は相手で、だが、楽しそう。
ダメージはないとはいえ、直撃にニヤリと笑っている様子。
「!」
と、レーダーに映された影は、動き。
この際とばかりに、こちらに攻撃を仕掛けようとしていた。
俺は、捉えたなら、ただかっと目を見開くだけで。
光弾と、レーザーが交互に放たれていく。




