まふぃんちゃんのとけいと、はなまるおむらいす!
「……。」
「……?なぁに?」
格納庫から、通路に出て。
食堂まで向かう道中に俺は、マフィンの背中をつい見てしまう。
視線に気付いたマフィンは、振り返り聞いてくる。
「!」
俺は視線が合ってしまい、つい体をびくりと跳ねさせるが。
「……ええとね。」
言い訳せずに、感じたことを言う。
「……マフィンって、何か、こう、感じのいい懐中時計持っているな、なんて思ったんだ……。」
「あら。」
聞くとマフィンは、少し嬉しそうに耳を跳ねさせて、笑む。
笑んだ後、またポケットに手を入れて。
その懐中時計を取り出して、よく分かるように見せてきた。
飾り気はあんまりないが。
大きなリューズのあるそれは、一般的な懐中時計のそれだ。
それによって、時刻を合わせたり、ネジを巻いたりすることができるのだろう。
「……?あれ?」
しかし、耳を傾けても、時計の針が時を刻む音は聞こえども。
内部にて、歯車の擦れ合う、機械式の音はない。
不思議に、首を傾げる。
この手の類って、カチカチ音がしそうなものなのだけれども。
不思議に首を傾げて。
「あら、どうしたの?」
そんなものだから、マフィンは首を傾げて。
「……いやさ、何かこれ、歯車で動いているのかな、どうかなって……。」
聞いてきたから、答える。
すると、俺が不思議なことを言うものだから。
マフィンはどこかおかしく感じられ、クスリと笑う。
「確かに、味がありそうね、それは。でも、これは違うわ。スフィアを動力として動いているのよ。だから、ネジを巻く必要もないの。あと、いくら私でも、その、あなたが思っている歯車式の時計は、高くて買えないわ。」
「!」
答えははぐらかすことなく、きちんと言ってきて。
なるほどと思ってしまう。
スフィアを動力にしているなら、納得もいく。
だから、機械式の、歯車が噛み合う音がしない。
……むしろ、小さい音、つまりはモーターの音がする。
「……だね。俺は機械式なのかなと思ったけど、あと、そうじゃないなら、太陽光で動く、ソーラーかなって……。」
「へぇ。……でも、何?ソーラーって。聞いたことあるようなないような。」
「……気にしないで。言った俺も、何か間違った気がする。」
「……そぅ。」
俺は、納得がいったなら、頭を掻きながら照れ笑いしながら、弁明する。
が、マフィンはある単語は知らない様子。
ソーラーは知らないというのか。
半面、ああそうかと思い直す。ここは、スフィアを中心に動く、世界だ。
動力はもちろん、スフィア。
ついつい、俺はうっかり忘れてしまっていたようだ。
だから、何か間違ったかもとして俺は、この先を続けないことにする。
マフィンは、不思議そうに思いながら、小さく溜息をつく。
その後マフィンは、見せていた懐中時計を戻し、また、先導を再開する。
やはり、食堂前には、人だかりがある。
昼食を前にして、お腹を空かせた隊員さんたち。
また、遠くからは、賑やかなやり取りも聞こえてきて。
それは、まだ食事にありついていない人たちの心をくすぐり。
食事を期待させてくる。
「!」
また、食事を終えた隊員さんたちが、擦れ違うならどこか。
元気そうな顔をこちらに見せていて。
「お!ウィズ!!」
「お手柄!!」
「うちらの稼ぎ頭ってか!!はははっ!」
「……?」
……ついでに、俺と擦れ違うなら、気になるようなことを言う。
そのどれも、称賛だが、今日のはいつものそれとは段違いだ。
何でだろうか、それは、今日のメニューによってか、分からず首を傾げる。
列は進んでいく。
賑やかな声はより、はっきりと聞こえてくるなら。
「なあ!姉ちゃん!!!この文字で!!!」
「あああと、元気注入のおまじないも!!」
「……?」
ただ賑やかなのは不思議ではないが。
妙なやり取りがあり、気になってしょうがなく。
つい、できる限りの背伸びをして、向こうを見るなら。
「!」
なんと、今朝の食卓を配膳していた、少女がケチャップを持って。
配膳された食事に書いているようで。
加えて、何か印を切るように手を動かしては。
にっこりと笑顔を添え、手渡した。
「いぇぇぇい!!最高!!」
「元気になるなー!」
「……?」
その後に歓声が上がる。
元気が出ているようで。
だが、何をしているか詳しく分からない。
首を傾げた。
列が進んでいく先に、やがて俺たちの番になる。
昨日や今朝と同じように、金属プレートを持ち、歩み進むなら。
前菜として、サラダ、デザート、次々と配膳されていく。
「!」
やがて、メインディッシュになったなら。
中央の大きな窪みに与えられたのはオムライスのようだ。
「……ん?」
ふと、何か気付くようなことがある。
このパターンって……。
そうして、脳裏に浮かぶ、ちょとした光景。
昔、テレビか何かで見たことだが、ええと確か。
メイド服を着た女の人が、料理にケチャップで描いているという光景だ。
それを今、まあ、メイド姿ではなく、軍服の少女が執り行う。
「では、行きますね!あと、ウィズさんにはこの文字を差し上げます!」
「!」
やがて、俺の番になると。
また、ケチャップの入れ物を掲げてはいるが。
しかし、俺に対しては、言葉のチョイスは受け付けない模様。
裏に感じることには、既に俺のあだ名は広まっている様子。
ならば、俺の評判も広まっているということか。
……断ることはなく、俺はお願いすることにして、自分の食器を差し出した。
「それっ!」
「!」
すぐさま、その隊員さんは描き出す。
描かれたのは、文字ではなく、模様。
……〝花丸〟、だ。
「はいっ!出来上がりました!」
描き終えて、にっこりと笑顔を手向けて。
加えて、指で何か、オムライスに向けて描くなら、それは、多分まじない。
「……。」
元気になったといえばそうで、そっと何だか、笑みが浮かぶ。
「あと、これも!」
「!」
さらに、何かをプレゼントするためにまた、食器に手を伸ばすなら。
空いた場所に、まるで手品のように、品物を出現させる。
これもまた、花丸を模した物品で、手製の勲章。安全ピンで留められるタイプの。
子どもたちへの、ご褒美みたく付ける、あれだ。
勲章すぐ下には、幟みたくあり。
可愛らしい文字で、『よくばんばりました』とも書かれている。
「どうぞ!」
「……はい。ありがとうございました。」
笑顔をさらに添えて、俺を送り出すなら。
俺は、そっと笑みを浮かべて、お礼を述べて、受け取った。
見送られて、俺は列を外れていく。
「お~い!俺にはこれを!!」
「あと、素敵なおまじない!!元気が出るやつ!こってり、絞られたんだよおおおお。」
「……。」
俺の後ろから、皆もまた。
それぞれ何か描かれたオムライスを持ってきているなら。
さらに後ろからは、またまた喧騒のような光景が再燃する。
元気をもらうために、後続の隊員さんたちは色々と言っている様子。
俺の笑みは、やがて苦笑に変わってしまう。
さて、視線を戻して。
食卓にありつこうとするなら、先のマフィンが手招いてくる。
頷いて、見るなら。
やはり、沢山の人たちがすぐ側にいる。
ぎゅうぎゅう詰めの中の、一瞬空いた空間。
持っていき、座るなら。
「?!」
いきなり隣の隊員さんが動き。
何と俺に、紙でできたネックレスを掛けてきた。
色とりどりの紙を細くして、切り、チェーン状に括りつけて作った、簡素な代物。
おまけに、同様の物を、冠のように載せられる。
まるでこれは、祝いの席のよう。
なぜだか、よく分からず、目を丸くするだけで。
「真打登場!!」
「いよっ!!稼ぎ頭!!」
「稀代の魔術師登場!!ははははっ!!」
やがて歓声交じり、手を叩いて、俺を讃えてきた。
……何となく理解する。
なるほど、先の活躍が耳に入っていて、そのために準備をしていたのか。
「……あ、ありがとうございます。」
理解したなら、こそばゆく思いながらも、俺は頭を下げて、お礼を言う。
「おめでとー!」
アビーが笑顔を湛えながら、その人たちの間から声を掛けてくるなら。
それもまた、他の人たちと同じようなもの。
祝いの言葉だった。
「ありがとう。」
アビーから言われたなら、アビーの笑顔につられて。
はっきりと笑み、お礼の言葉を述べる。
「ままま!そんなこんな、かしこまらんでよ!どんどん食べよーぜ!」
「!フィーさん!」
その祝いの言葉交う中で、フィーさんが顔を出すなら。
せっかく用意された食事が冷めてしまうと判断か、声を掛けてくれる。
俺は、頷き、食事に取り掛かろうとしたなら。
「あー!あー!待った!記念撮影しようぜ!!ほらさ、その花丸オムライスが見えるようにしてさ!!」
「!」
別の人が、その瞬間に待ったを掛けてくる。
その人が立ち上がるなら、手にはカメラを持っていて。
小さいながら、見たことのあるそれは、デジカメの様相だが。
「ほらほら!顔こっち向けて!オムライスも見えるようにしてさ!あと、勲章付けてさ!」
「!」
こちらにカメラを向けてくるなら、ついでに指示を出してくる。
「!は、はい。」
言われるがまま、俺は食器の隅に置かれた勲章を胸元に取り付け。
食器を持ちちゃんとカメラに見えるように持っていった。
「……。」
なお、カメラを見据えてつい、緊張してしまう。
「……ありゃ~。表情硬いな。」
結果として、ファインダーの向こうで見た際、どうやら俺の顔は固い表情に。
カメラの人は、軽く困ったように、頭を掻いた。
「なあ、いっそさ、同じまじないやってみる?俺たちで!」
「だはははっ!やめろよ!!気持ち悪い!」
「なーにおー!俺のまじないは効果があんだぜ~?……当たるようになるのさああ、宝くじとかじゃなくて、弾にな!」
「はぁ?!おいおい!!やめろっ!!縁起でもない!」
「うあははははっ!!」
ならばと、冗談めかしてもう一人が声を掛ける。
ただ、縁起でもない内容だ。
不幸になるぞと、言われて、だが、その冗談を言った人は。
思いっきり笑い飛ばして、感じた縁起でもないということは、掻き消えてしまう。
「……ぷふっ!」
緊張も相まって、それが横腹を突いたような感じがして。
俺はつい吹き出してしまった。
「いい顔いただき!!」
「!」
と、その笑んだその瞬間に、カメラがシャッターを切る。
カメラを解き、画面を見て確認するなら。
そっと笑い、ぐっとサインを示してきた。
いい写真が、撮れたらしい。
「よぅし!それじゃ、早く食っちまおうぜ!!」
「!はい!」
終わったなら、このまま居続けるのも悪く。
カメラを持つ人は、指示することには早く食べてしまおうとの催促。
俺も察するなら、頷いて。
食事にありついた。
他の皆も、見届けたなら、同じように食事を口にしていく。
「!」
サラダは相変わらず。
なにより驚くのは、メインディッシュである、オムライスを口にした時。
思わぬ食感だった。
ケチャップの酸味の後、玉子が口の中で溶け。
その後に来る、キチンライスの独特な味わい。
どれも、邪魔をせず、美味しさを際立たせてくる。
「うわぁ!おーいしー!!」
アビーが、素直にコメントを述べる。純粋なアビーの性格らしく。
それこそ、お世辞とか、裏表なんてない。
にっこり笑顔は、そのおいしさを物語る。




