みんなとごはんっ!みんなとおふろっ!
そう、思い耽っているのと同時に、後方から美味しそうな匂いが漂って来て。
どうやら、料理も完成したらしい。
匂いが強くなることから、配膳が始まるか。
その通りに、振り返って見れば。
エルザおばさんや、他の奥さんたちが料理を沢山抱えてきている。
合わせて、大広間にいた奥さんは、入れ違いに台所へ向かい。
戻ってくる頃には、同じように抱えていて。
エルザおばさんと、他の奥さん、今度もまた入違って、料理や皿を運んできて。
やがて大机には、大量の料理並ぶ食卓が完成した。
端から見れば、食べきれないと思うほどの量だが、いかんせん大家族、これもすぐ食べきれてしまうのだろう。
料理が並べられたなら、各々、大机に向かい、好きな場所に座り。
食卓を囲む。
一瞬訪れる静寂、何かを待っているかのようで。
レオおじさんがその最中、両手を合わせて、食べ物への感謝を示したなら、料理に手を付けて。
それから、子供たちが一斉に手を付けて。
そうなると、あっという間に、大量の料理は、消えていき。
思った通りだ、すぐに食べきられてしまう。
「……。」
夕食に誘われた以上、何も食べないのも悪く、自分の小分け用の皿を持ち、手を付けようとするものの、子供たちの食欲旺盛なことこの上なく、代わる代わる手が伸ばされて、俺は付けようがない。
圧倒されてしまう。
「あーもー。お客さんもいるというのに、容赦ないわ……。」
子供たちのそんな様子に、呆れ顔のエルザおばさん。困ったようにも思えて。
小分け皿が空っぽの俺も見ては、何だか申し訳なさそうな表情もして。
「……しょうがない。ほぉら、大和ちゃん、お食べ!」
「!あ、ありがとうございます。」
見かねもした、エルザおばさんは言って、自分が取った料理の一部を、俺に分けてくる。
お礼言い、少量分けられた料理盛る、小分け皿を受け取り。
「……ええと、大和ちゃん、私のも上げるわ。」
「!あ、ありがとうございます。」
見かねた、というのはエルザおばさんだけじゃない、他の奥さんもそんな様子で。言ってきては、分けてくる。
気付いてお礼を言い、小分け皿を渡して。料理が盛られていく。
「私も。」
「ほら、お姉さんが分けてあげる。」
「!!ふ、二人とも、あ、ありがとうございます。」
他に二人、奥さんがまたまた、分けて来て。
差し出した小分け皿は、結果、皆に負けないほど大きく盛られた姿となる。
お礼をそれぞれに言ったなら、受け取って。
そんな俺の姿見たエルザおばさん含む、奥さんたちは優しそうに微笑む。
「いいのよ。大和ちゃんも、アビーちゃんも、私たちの子供のようなものよ、遠慮しないで。」
優しくそう言ってきた。
俺は、頷く。
「よかったね!大和ちゃん!」
傍ら、アビーが顔を覗いてきて、よかったねと笑みを浮かべて言ってくる。
俺も、ちゃんとアビーを見るため、視線を向けて。
「うん、そうだね。……って、アビー……。」
きちんと向き合い、頷き合おうとするものの、彼女の様子が分かるようになると、言葉が途切れてしまう。
何せ、当のアビーは、子供たちに負けじ、なんてものじゃない、どの子供たち以上に、小分け皿を山盛りにしていたのだ、……呆れてくる。
遠慮どころか、子供たち相手に容赦しない。
それを気にしているかどうか知らないが……。
「なぁに?」
首を傾げてきた。
「……いや、いい。アビーらしいから。」
何でもないと言葉を紡ぐこともない、らしいやと俺は片付けた。
「変な大和ちゃん。えへへ。」
そんな俺を不思議にそうに見ては、呟いて、盛った料理を口にしていく。
「なっははは!いい食べっぷりだね!」
遠慮しないアビーの食べっぷりに、エルザおばさんは脱帽もののようだ。
そう言っては笑う。
「えへへ~……。」
「……。」
褒められたと思ってか、アビーはにへらと笑い、俺は、何か違う気がすると、思うものの口にはせず、沈黙する。
なお、首は傾げた。
この家での食事は、あっという間に終わってしまう。
「……げふっ。」
俺にとっては、結構な量だったと思う、お腹をさすりながらも、失礼ながら、軽くげっぷが出てしまい、少し顔を赤くした。
その間、子供たちは同じように母親たちを手伝って、片づけをしていて。
俺も、手伝おうとしたが、お客ということで、ゆっくりとしていいと言われ、言葉に甘える。
アビーはしかし、誰よりも食べているのに、顔色一つ変えない。
悠然と座していた。
「……。」
そんなアビーを見つめて、思うことは。
同じ?猫の人ながら、こうも体力とか違うとは……。
長くアビーと暮らしているが、謎は深まるばかり。
「!」
ゆっくりしてと言われてから、奥の台所からは、子供たちの声と共に、色々聞こえてきて。
耳をすませば、今度はお風呂だと言っているみたいだ。
中には、ブーイングを飛ばす子もいるが、強制連行のように、どこかへ連れて行かれてしまう。
「……。」
何だか、お風呂も壮絶な気がしてきた。
「……やっぱり。」
その通りに、ここまで響いて来る、子供たちの歓声と、奥さんの大変そうな様子を思わせる声。
やっぱりなと、呟く。
十分ぐらいしたか、歓声が一旦やんで。今度は、手前から騒ぐ声だ。お風呂から上がって、体を拭かれているのだろう。
拭き終わって、広間に歩いてくる音と入れ替わりに、お風呂に入る音と、再び始まる、子供たちの歓声、大騒ぎ。
「……。」
その多さに、大変さを禁じ得ない。
「!」
大広間に、奥さんと子供たち数人が、洗濯したてのきれいな服に身を包み、湯気を伴いながら現れた。
「!大和ちゃん、アビーちゃん。お風呂使ってもいいよ。子供たちと遊んだりして、汚れているでしょ?大和ちゃんも、旦那様のお相手していたし……。」
「!」
現れたらで、子供たちの世話をしながら、こちらに目線を向けてては、そう言い、微笑みを見せる。
「……ええと。……。」
お風呂を使っていいという誘いに、嬉しい反面、何だか申し訳なさが、ここでも出てしまい、はっきりと決断できないでいる。
「遠慮しなくていいのよ。」
付け加えられる。
俺は、ならば断わるまいと、頷きを見せて。
一方のアビーはというと。視線向けると。
「いいの?わーい!じゃあ、大和ちゃん、一緒に入ろっ!」
子供みたいに飛び上がり、嬉しそうに笑いながら、言ってくる。
「へっ?!」
その言葉に、素っ頓狂な声を上げて、目を丸くしてしまい。
……すかさず、顔が紅葉してしまう。
年頃の男女が、一緒に入るのは、さすがにまずいだろうよ。
いやま、前例があるけれども……。
その言葉聞いていてか、広間の入り口から、呆れ顔のエルザおばさんが顔を出してきて。
「アビーちゃん。さすがに年頃の男女同士は、まずいよ。あんたは、あたしと子供たちと一緒だよ。」
「えー……。」
「……ほっ。」
言うことは、救いの言葉で。俺は聞いていて安心し、ほっと胸を撫で下ろす。
一方のアビーは、残念そうだ。
「あとさ。」
「?」
「洋服も洗濯してあげるよ。洗濯機に放って大丈夫さね。」
「!あ、ありがとうございます。」
残念そうなアビーは置いといて、エルザおばさんは、ついでに着ている服も洗濯してくれるとのことで。
有難く思い、この時は頭を下げた。
「?!」
頭を下げたその時に、ふと思うことが。
着替えのこと。
顔を上げたなら、俺は急いで自分のバックパックの元へ向かい。
広間の隅に置いてある、自分のバックパックに急いでは、中身をまさぐる。
「?どうしたんだい?」
俺が急に動いた様子が気に掛かり、エルザおばさんは聞いて来る。
「ええと、洗濯してくれるのはありがたいですけれども、……着替えのことが気になって……。」
エルザおばさんの方を向き、事情を説明しながらも、手はバックパックを探していて。
「!あった。」
手に触れる物があって、それを引き出した。
予備の服。
虎柄の、猫耳少年用に、マフィンが作ってくれた服と、ショートパンツ。
他に、下着を。
それら、汗をかいたりして、汚れることを想定して、俺はバックパックに入れていたのだ。
「……へぇ。いい子ね。ちゃんと準備しているなんて。ほんと、息子にしたいわぁ。」
そんな俺を見て、エルザおばさんは言って、一層優しく微笑むのだ。
俺も、嬉しさに笑みを浮かべて。
「!あれ?あたしはどうしよー。」
「……あ。」
これにて、洋服も解決、と言いたいところだったが、別の問題が。
アビーのはどうしよう。俺の言葉を聞いて、アビーは少し困った様子を見せていた。
……残念ながら、アビーのまでは用意していない。
だって、女の子の下着や洋服まで、俺のバックパックに入れていたら、俺は、誤解されてしまう。
「ああ、気にしなさんな。下着はあたしたちのお下がりだが、、合うのを見付ければいい。……う~ん。服はどうしようかね~……。ライオン用のなら、沢山あるんだけど……。サイズ合うかな……。」
助け舟第二弾。
エルザおばさんが出してくれたよ。ただ、最後、服については残念な様子。
「……。」
聞いていて、少し考えたら俺は、アビーを向いて。
「……下着は用意できないけど、服とかなら、俺の使ってよ。」
「!」
「!!」
提案することは、俺の予備の服の内、予備の一つを貸すこと。
幸い、もう一組揃って入れていたんだ。
一つぐらい、アビーに貸しても、悪くはないだろう。
それにこれは。
「……アビーだって、裸だった俺に、服を貸してくれたじゃないか。ちょっとした恩返しだよ。」
続けて、そっと笑う。
そう、俺がこの世界に来た時、裸だった俺に、貸してくれた、そのお返しも、この時でいいかな。
「!大和ちゃん……!えへへっ!ありがとう!」
聞いたアビーは、気付いたか、表情を明るくし、先の困り顔を吹き飛ばすほどの笑顔を向けて、喜んだ。
「なははは!大した器じゃないか。やっぱり、ウィザードってからには、これぐらい器があるもんかね!」
アビーと共に喜んだのは、エルザおばさんだ。俺とのやり取りを見て、嬉しさに思いっきり笑い飛ばしてくる。
ウィザードという言葉も添えて。
そう言われて俺は、……何だか恥ずかしくなった。
「おっと!次はあたしたちの番だよ!ほら、アビーちゃん、一緒に!」
「!分かったー!」
そのタイミングで、アビーたちの番になり。
この場を中断するみたいな形になるが、アビーはエルザおばさんに呼ばれ、一転して、スキップがてら、お風呂場へと向かって行った。
「……。これで、よかったの、かな?」
それがよかったかは、実感掴めないままで。首を傾げて、俺はアビーの後ろ姿を見送っていく。