たくさんあつかえるけど、どれぐらい?
「う~ん……。」
シンは、悩んだ。
「じゃあ、沢山飛ばす!」
が、すぐにやりたいことを見付けて、俺に言ってくる。
悩んだ表情はなく、期待に胸ときめかせたもので。
「た、沢山か……。」
耳にして、今度は俺が困ったと悩むことになる。
「?」
俺が悩んだなら、何かまずかったか、シンは首をまた傾げて。
「沢山は……。ねぇ……。難しいと思うよ?」
「えっ?」
悩んだ末に出した言葉は、難しいということで。
シンは、何でだろうかと、年相応な瞳で俺を覗き込んでくる。
「……一つのスフィアを上手く扱えるようになってから、複数のスフィアを使えるようになると思うんだ。」
分かりやすく言う。
複数のスフィアを扱うとなると、やっぱり基本ができていなと、難しい。
そのためには、一つのスフィアを適切に扱えるようになってからだと。
「そっかー……。」
聞いたなら、シンはがっくりと肩を落とした。
「……。」
落胆にフォローを入れる言葉は。
「……その、俺もものすごい数のスフィアを扱えるんじゃないんだ。」
「えっ?」
というもので。すると、シンは顔を上げて、また意外そうな顔をする。
見られて、かつ、自分の事実を話すとなると。
いささか恥ずかしさもあって、俺は頭を掻く。
「自分で沢山、それこそものすごい数扱える自信はないんだ。マフィンなんかは、俺なんかよりもさらに多くの数を扱えるけど。」
「え……?」
「え?!そうか?意外だな。」
シンは聞いて、先の表情のままだが。
俺が言ったことを耳にして、横からもう一人、意外そうな顔をする人が。
レオおじさんだ。
「……まあ、偉そうなこと言えないんだけどね……。」
苦笑でまずは答える。
「いやはや、あの戦闘機の件といい、お前さん結構扱えているんじゃない?それとも、まだ別の理由でも?」
「!」
レオおじさんからは、意外そうな意見もあって。
深堀されるとなると、今度は俺が意外そうな顔に。
「……ううむ……。」
余計悩んでしまう。
どう言えばいいものか。
「……ま、まあ。簡単なことならいくつでもできる、かな?もし、相当な、例えば、……超広範囲にフォトンシールドを張る、何てのは流石に難しい。」
「?!あれ結構難しかったのか?」
「……。」
説明しやすさに、いい例を出したと思ったつもりだが。
レオおじさんが余計に驚くものだから、俺の悩みは余計に深まってしまう。
苦笑した。
「俺はあれ、天才的なものでやっていると思ってたぜ?」
「……。」
レオおじさんは、続けてくるも、苦笑しかできないでいる。
「……気持ちはそうだけど……。あれをやったのは、俺だけじゃないんだ。」
苦笑しながらも、俺は言って、手をふわりと動かした。
「!あ、あれ?!お、お兄ちゃんのバックパックが……。」
そうしたなら、俺のベッドに置いてある、バックパックが光に包まれ、浮遊する。
見たシンは、驚きにまた声を上げて。
浮遊の後、俺の手元に舞ってきた。
手に取ったならば、バックパックの口を開け、中をまさぐるなら。
盾を取り出した。
俺の意思に呼応してか、点滅のように光を放った。
「俺だけじゃあ無理だけど、この盾となら……ね。」
言って、腕を通すなら、やや誇らしげに構える。
「……気になってはいたが、やっぱりそれ何だ?」
レオおじさんは言って、珍しく首を傾げてくる。
「わっかんないや。」
「……。」
答えは、残念ながら、俺でも分からない。
俺もまた首を傾げるしかなく。
レオおじさんも、聞いて、何とも言えない、小さく息を吐く。
「マフィンが聞いても、マキナの一種だとしか。詳しい人に聞いても、複製品は作れても、ブラックボックスまでは真似できない代物だったと。だからこれは今もずっと謎のままなんだ。」
「……そっか。てか、そうとしか言いようがないな。……で、そいつってよ、フォトンシールドとやら、どこまでできるのやら、色々聞いてみる?」
「!……そうだね。結構謎なことが多いし。」
俺は、未だ謎であるということで締め括ろうともしたが。
レオおじさんは、まあこの機会だし、聞いてみてはとアドバイス。
はっとして俺は、その意見に追従することにする。
「……。」
黙して、盾を見つめては。
「……ええと。その、……フォトンシールドって、最大どれぐらいできる?皆にも説明してくれる?」
考えて、出た言葉を口にする。
《管理者権限を確認。情報の一部開示を行います。》
盾はそう言った。
「!」
言ったうえで、何か行っているらしく。
装着した腕から、独特な振動が伝わってきた。
《フォトンシールドについて。私単体の場合、半径2m程度の球体状に展開できます。スフィアをリンクすることにより、フォトンシールドの効果範囲、並びに出力の増強が行えます。最大出力……効果範囲約2km。》
「……。そうなんだ。」
淡々とした声ながら、盾は説明して。
能力的には、広い範囲の防御が可能となっている様子。
……なお、それが凄いのかどうか、分からないでいる。
「……?」
「あ~……。ま、まあ、そうか?」
「……。」
聞いている他の二人も、何だかポカンとしている様子で。
「と、とりあえず、それ程ってことにしておくよ。……で、次だけど。最大、どれぐらいのスフィアを扱える?俺が知った様子だと、結構な量だった気がするけども。」
質問を変える。
いくら効果範囲が判明しても、実感が伴わないとさっぱり分からない。
なら、別の質問として、スフィアをリンクした場合について問う。
《コントロール可能数は、500を下りません。》
「……。」
盾は答えたが、俺は何も言えないでいる。
「……あ~……。い、いくら色んな使い手を見てきたとはいえ、それだけの数を扱う人間には会ったことはねぇな。」
「!」
言葉に困ってもいたが、レオおじさんがフォローを入れてくれる。
やや、思い出しつつ言葉を紡ぐ雰囲気で。
「……とすると、すごいと?」
俺は頭の中で繰り返しては、レオおじさんに改めて聞く。
「すごいんじゃない?いやだってよ?村のばっちゃんだって、んな数扱ったことはないし。マフィンだってよ。」
「……そう言われれば、確かにすごい。」
レオおじさんが続けるならば、身近の人物を引き合いに出してくれて。
それならば、そのすごさも理解できよう。
村長さんのはまだ理解できないが。
マフィンのことなら、身近で見たこともあって容易に比較できる。
そのマフィンでさえ、盾のコントロールには及ばないとなると。
相当なレベルであると理解できた。
「ふぇぇ……。すっごーい……。」
「……。」
傍ら聞いていたシンは、呆然としながら驚きの言葉を紡いだ。
俺は見ていて、苦笑。
「がははは……。大和のその盾も、すっげぇってこったい。やっぱり、大和はそういう物を持てるだけ、運がいいってこった!」
「……あはは。」
これらの総括としては、レオおじさんが笑いながら言ってくれて。
俺はこれにも苦笑。
運がいいとか言われても……。
実感のないことが災いして、素直に喜べないでいる。
「……。」
「!」
俺が苦笑している傍ら、シンはそっと盾に手を伸ばしており。
色々とすごさを知ったなら、ついつい触ってみたくなるもの。
呆然としていたなら、なおのこと。
俺はハッとして、さっと盾を避ける。
「?!」
視界から消えたからか、シンは目を丸くしてしまう。
俺は、嫌な予感がしてならない。
何せ、この盾は俺以外の人間が触ると、攻撃をする。
アビーもマフィンも、そうして攻撃を受けたのだ。
俺以外が、触れることを良しとはしないのだろう。
難しい言い方なら、セキュリティだ。
「……あ~……と。ごめんよ。」
なお、そうと知らないシンは、まだ呆然としたままだ。
俺は、つい、急にしてしまったことに、まず頭を下げた。
「?」
シンは、首を傾げるばかりで。
「……その……。ごめんよ。」
そんなシンに、繰り返し謝罪の言葉を述べては。
「この盾、俺以外の人間が触れると、攻撃するんだ。だから、触らない方が、いい。」
付け加える。
「!そ、そうだったんだ……。ご、ごめんなさい。」
シンは、忠告として受け止めたなら、目を丸くして、こちらも頭を下げて。
ばつが悪そうではあったが、俺はそんなシンの頭に手をやっては、そっと撫でる。
「?!」
「いいんだ。気にしていない。それよりも、怪我される方が気分が悪い。危なかったから、予め退けた。それだけだよ。」
今度はシンは、キョトンとするものの、俺は優しく言ってやる。
シンは、やがてキョトンとした表情から、何だか照れ臭そうになる。
見た俺は、これ以上盾を出したままにするのも、危険と思ったなら。
また、いつものバックパックに戻そうとする。
《注意。多数のスフィアの接近を確認。》
「?何で?」
その時盾は、何かを感知したか、俺に注意を促してくる。
その忠告に、首を傾げるばかり。
「……って。多数のスフィアを持っている、なんて人は、数が限られているような……。」
首を傾げた側から、思考は巡らせていて。
誰だか分かるような気がすると口にする。
「?え?どうしたの?」
「!」
シンは、気になっているのか、聞いてくる。
「……。う~ん。よく分からないけど、スフィアを沢山持っている人が、接近しているらしい。」
どう言おうか迷ったものの、見知ったことをただ淡々と話す。
「?誰か?」
当然、シンは余計に首を傾げて。
「……俺もよく分からないけど、マフィンかな?」
答えは分からないが、とりあえずらしい人物を上げる。
マフィンなら、さもありなんと思えてならず、俺は口にした。
なお、憶測の域を出ていない。
「……へぇ。」
シンは、納得はして。
俺は、接近しているならばと、待つことにする。
「!」
と、ノックがした。
丁寧なノックであり、雑さのないことから、マフィンであろうと予想をする。
「いいよ、入って。」
招き入れる言葉を告げたなら。
「し、失礼します……。」
「?!」
が、続いたのは、やけに引っ込み思案な口調と、小さい声であって。
何だか、マフィンにしては違和感がある。
予想外に俺は、目を丸くしてしまった。
扉が開くなら、姿を現したのは。
髪の長い点はマフィンと共通であるものの。
色合いがスモークっぽいことからして、全く違う人。
ウィッチさんだ。




