れんしゅうのあいまになれそめ!
「うぇ?!そう……?」
レオおじさんがそう言うから、シンは意外そうな顔を見せて。
「へぇ……。」
俺は、興味深く思えた。
「……いやぁ……。」
俺とシンが、そんな顔をするものだから、思い出して恥ずかしいか。
顔を紅くしたなら、体を起こしては、自分の頭を掻く。
「俺はな……。シンと同じぐらいだった時は、超下手だったんだぜ?」
「!」
「……!」
何を言うか、気になるような感じであったからだが。
やはりで、レオおじさんは何か語りだす。
どうも、昔のことのようだ。
「……さっき、アビーがやったようにな、スフィアをどこかに吹っ飛ばしてしまったんだ。俺も雑でね……。そうしたらよ、母ちゃん、あ、いや、エルザのことじゃないぞ、俺の生みの親だ。母ちゃんがよ、大激怒してね。大切な物なんだから、って言われて、ぶたれて。探し終わるまで、ご飯抜き、って言われたこと思い出したのさ。」
「!」
言って、どこか、懐かしむ様子で。
「?」
だが、それだけなら、その懐かしむような雰囲気じゃないなと思う。
それじゃ痛い思い出、いいや、記憶だ。
「!」
けれども、そこで終わりじゃない、レオおじさんの口は動き。
「……泣きながらさ、母ちゃんに許して、ってね。でも、厳しくてよ。仕方なく、町中を彷徨い歩いたさ。そしたらな、夜道でよ、誰かがスフィアを渡してくれたのさ。……誰だと思う?」
やはり、続きだ。
それこそが、懐かしむポイントだと俺は思う。
なお、言葉区切りとして、誰だったかと聞いてきて。
ヒントはなく、その区切りの向こうに、どこか親しい何かを感じ取る。
ならその人物って?
とても、親しい人としか、思えない。
「誰?」
シンは純粋に問う。
「……。」
レオおじさんは、聞いても、言葉区切りのすぐにて、言葉を紡がずにいる。
それでいて、そっと、壁の向こうを見るように向け、優しい笑みを浮かべる。
「!」
まさかとは思うが、……だが、俺は口にはしない。
何だか、悪いなと思う。
この人の名前は、レオおじさんの口から言ってくれた方がいいような気がして。
「エルザだよ。」
「!」
「!!え、エルザおばさんが?!」
口にしたのは、エルザおばさんの名前で。
俺は何となく気付き、やはりなと思う傍ら、シンは、驚いて。
レオおじさんは、笑みを浮かべたまま、こちらに振り返り。
大きく頷いてくる。
「そうだ。エルザ、母ちゃんだよ。初めての出会いさ。……がはは。」
懐かしんでは、さらに笑みを浮かべて、どこか嬉しそうだ。
「その時な、持ってきてくれたのは、シンぐらいの年齢の母ちゃんだったんだよ。持って来た時は、ちょっとおでこが腫れていてね。見たらさ、俺がなくしたと思ったスフィアが、直撃していたのさ。ちょっと涙目で睨みながらよ、手渡してさ。ありがとう、って言ったらさ、文句言われ放題よ。男の子なら、しっかりしなさいってね。」
「!……あはは。」
まだまだ続く。
聞いていて、想像はできた。
幼いレオおじさんが、幼いエルザおばさんと出会ったが。
当のレオおじさんがあまりにも不甲斐ないために、怒って叱る様子が思い浮かぶ。
この前みたいに、正座して、説教されて。しゅんとなって。
「……でもさ、母ちゃんのやつ、泣くばっかりの俺の手をな、引っ張ってな、家まで連れて行ってくれたのさ。俺は怒られると思ったんだかよ、母ちゃんがなああと、エルザがな、俺をかばうみたいに前に出てよ。俺の母ちゃんはな、睨んだがよ、でも、気に入ったか、笑って、許してくれたのさ。」
「……。」
その先として、エルザおばさんらしいエピソードがあり。
俺は、静かに聞き入った。
溜息ついて、幼いエルザおばさんが、手を引っ張って。
レオおじさんの家に行く様子が想像できる。
そうして、玄関を開けたら、睨み付ける母親がいて。
レオおじさんは、怖くてすぐ、エルザおばさんの背に隠れて。
それでも、嫌がることなく、むしろ、両手でとうせんぼして、守って。
母親は見て、呆れて笑い、許してくれて、その日が終わる、そんな様子。
「……それが馴れ初めだったなぁ。あれから、何でか知らんが、よく訪ねに来たのさ。いつも見せる、あんな笑顔で、な。」
「……レオおじさんも、そんな時があったんだ。」
「当ったり前よ!がははは。」
馴れ初めを言い終えて、また、豪快に笑う。
笑ったうえで、シンの頭に手をやり、撫でてくる。
「?!」
思わぬそれに、目を丸くして。
「シン、お前さん、すごいぜ?その年で、それぐらいできるってなるとよ、大和みたいな年には、ウィザードになっているかもしれないな!」
「えぇ?!」
言うことは、褒めることで。
褒められた方は、加えて顔を赤くして戸惑ってしまう。
言葉はそう、憧れのウィザードであるとのことで。
言われてか、俺やレオおじさんを交互に見る。
「な、なれる……かな?」
「……どうかな?でも、努力次第かな?」
口を震わせながら、ぽつりとシンは言う。
俺は、首を傾げながら、努力次第と言うものの。
正直どうなのか分からないでいる。
「まあ、そうだな!頑張るってことだ!そうすりゃ、大和兄ちゃんみたく、沢山のスフィアを使える人になれるかもな!」
締め括りに、レオおじさんは言って、また、にんまりと笑った。
「?!うぅ~う?!な、何か、ちょっと、胸の奥が……!」
「?!」
「……あぁ~……。」
そんな、笑い合う中にて、隣の部屋から妙な声が聞こえてくる。
どうも、エルザおばさんの声で。
何事と俺は思ったが、レオおじさんは、何か思い当たるか、苦笑をしてしまう。
「!え、エルザおばさま?!だ、大丈夫?!ど、どこか痛いのですか?それとも、何か悪いものでも……っ?!」
「……。」
何事と思ったのは、俺だけじゃない、マフィンもだ。
慌てている様子が、伺い知れる。
「い、いや、いいんよ……。」
エルザおばさんは、手で制している様子。
「で、でも……。お顔も……。」
そうであっても、余計に気になる。マフィンは心配の声をより高くして。
「こ、これはね……マフィンちゃん。び、病気じゃないわ。胸の奥がムズムズするけど、うぅぅ……。は、恥ずかしい!!!」
「……っ?!」
エルザおばさんは、まだ何か続けていて。挙句、恥ずかしいとも。
その言葉にマフィンは、最早何事というのさえ通り越して、絶句したようだ。
「だ、誰だか、……大体分かるけど、あたしの過去を噂話してんよ!ああ!恥ずかしい!!!!うぅ~!!!」
「……。」
噂話に勘付いたようだ、それこそ、自分の恥ずかしくなることが。
そのためにエルザおばさんは途中、何かに潜ったか、くぐもった声になる。
どうも、恥ずかしさのあまりに、布団に潜り込んでしまった様子。
レオおじさんは黙っていて、苦笑しているものの、俺も何だか、苦笑してしまう。
「えへ~!エルザおばさん!可愛い!!」
「……。はぁ。アビー……。」
一方で、同室のアビーは察してか、微笑ましく見ている様子だ。
俺は、何で、こうもこういうのは察しがいいのやらと、何だかちぐはぐに呆れて。
「?ど、どういうこと?」
「ん~?」
マフィンはまだ、気付いていない様子で、アビーに聞いている。
聞かれた方は首を傾げている様子かも。
「きっと、大好きな人が噂しているんだよ!」
「だ、大好きな……。あ、あ~……。」
隠すこともないと、アビーは表にすることには。
何だかこそばゆくなるようなならないような言い回しで。
マフィンはそこで、察して頷いている様子。
「……まあ、それなら、ね。ふぅ……。びっくりしたわ。」
ならばと、マフィンは安堵し、息を吐いて。
落ち着いた様子であった。
そのやり取りを、壁の向こうから察しているレオおじさんは。
可愛いとばかりににんまりと笑みを湛えて。
「ああ見えても、乙女なのさ!」
「……ですね。」
言うその言葉に、全てが詰まっていた。
俺は、こっくりと頷きを返す。
レオおじさんに負けず劣らず、豪快な人ではあるが。
そういう可愛らしい一面もあると。
現に、だから壁の向こうで、顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
物怖じしないながらも、流石に自分の過去は恥ずかしいのかもしれない。
多分それは、……男勝りが祟ってのことか。
それは察し付くものの。
なお、子どものシンには、まだ理解ができないようだ終始交互に見て。
首を傾げるばかり。
「その、ね。エルザおばさんも、恥ずかしがることもあるってことだよ!」
「!そーなんだー!」
ならば、軽く説明をした。
とりあえず、理解はしてくれたようで。大きく頷いて、笑ってくれた。
「……っと。すまねぇな。何だか、邪魔しちまったみたいだな!」
「!」
そんな笑いの中、思い出したかのように、レオおじさんは言って、手を叩く。
そう言えば、スフィアの練習中だったよな。
我ながら、忘れていたことを、何だか恥ずかしく思える。
レオおじさんが言ってくれて、気付いたものの。
さて、お次はスフィアの何をしようかとも考えてしまう。
「いやはや。つい昔のことになると、俺も語っちまうわ……。悪いな。」
「……いえいえ。まあ、昔のことを語りたくなるのは、分からないでもないですから。」
俺が恥ずかしいと思っているならば、レオおじさんもまた。
つい長く話しすぎたのを詫びて。
俺は俺で、理解は示す。
語りたくなる人は、過去の、前世でもよくいたからね。
聞いてあげるのも、悪いことではない。
責めることを、俺はしない。
スフィアの練習を中断されたからと、嫌な顔もしない。
「?」
そんな、大人のやり取りに、シンはまた、不思議そうにするだけで。
「気にしなくていいよ。大人になれば、分かるようにあることもあるって、ことだからね。」
「!うん!」
不思議そうにしていることと、置いてけぼりも悪いと思ったなら。
俺は一応、言っておいた。
シンは、頷く。
「……と。何だか話が随分逸れたよ。じゃあ、続きしよっか?それとも、ここまでにする?」
「!」
頷いたなら、また元のスフィアの練習に戻ろうと俺は促して。
シンは気付き、頷く。
確認したなら。
「スフィアの、何をしようか?」
スフィアの練習の続きに取り掛かるとして、何をしようかと言うと。




