じょうずだね!
アビーのように扱うと、さっきみたいにとんでもないことになりかねない。
それは、シンもまた知ったようで、浮かせる時よりもずっと険しい表情を見せた。
緊張も伺える。
「……過度に緊張しなくていいよ。浮かせたなら、移動は割と簡単だよ。すぐ下の手を、そっと動かすだけでいい。そうしたら、スフィアはきちんとついて動くから。」
気付いて俺は、安心させるためにも、コツも一緒に言って。
「う、うん!」
シンは聞いて、頷くなら、言った通り、手をゆっくりと動かしてみせる。
雑ではない、丁寧な動きとリンクして、スフィアは丁寧に飛行した。
「!で、できた!」
その様子に、シンは喜びの声を上げて。
「ふぅむ……。」
俺はその様子に、感心あれど、疑問も思い浮かんで仕方がない。
素直な喜びを示す以前に、今度は不思議さを露にして。
マフィンが言っていたことだが。
初心者でここまでできる人は、あんまりいないと聞いたが。
俺は、初めてなのにと驚かれた記憶がある。
ならシンも、相当な人材じゃないか、思えてならない。
「大和お兄ちゃん!ありがとー!!」
「!あ、ああ……。」
「?」
そんな俺に気にも留めず。
達成感溢れる、とびっきりの笑顔でお礼を言ってくるものの。
残念なことに、俺の応対は中途半端で。生返事になってしまう。
そんな様子に、シンは疑問を抱いて、一転首を傾げる。
「……。」
「……?」
疑問を口にするかしまいかの、瀬戸際にて。
なおも、シンは俺の様子を気にしてしまう。急に押し黙ったのが、まずかったか?
それはやがて、シンを不安にもさせてしまう。
「……いや、気にしなくていいよ。すごいなと思っていた。ただね、初心者にしては、結構上手かもなと、思ってしまってね。」
「!」
黙るのも悪く、俺は疑問を口にした。
シンは耳にして、はっとする。
「……ちょっとだけ、〝バスーおじさん〟に教わったから、かな?でも、ここまで真剣にやらなかったし。……うぅ~。もっと聞いておけば……。」
「!」
俺の疑問への答えとして挙げられた中には、不思議な名前があり。
以前、聞いたことのある名前だが。
気付き、疑問に首を傾げる。
「……なあ、シン。」
「?」
聞くことは。シンは、中断される形になるものの、何だろうかと首を傾げてくる。
「〝バスーおじさん〟って、どんな人?」
「!」
その自分が挙げた名前である。
聞いたシンは、はっとして。
「……うんとね。僕の故郷で、祈祷とかやっている人。……シャーマン……とか言ってたかなぁ……。でも、よく分からない単語を話すし、不思議なオーラを纏っているから、何だか近付きたくない、っていう人もいるの。でも、父さんはこの人に導かれたんだって言ってて。……でもよく分かんないや。」
「……へぇ。」
簡単だが、説明をした。
俺は、相槌を打ち。
「……その人、スフィアとかも扱えるの?」
続きとしては、その人がスフィアを使えるかという問い。
シンが前に言っていたことだが。
スフィアを少し教わったほどだから、聞いてみたくもなる。
「!……よく分からないけど、すっごい使い手だって、父さん言ってた。けどあんまり僕は見たことないんだ。聞いた話だったら、スフィアの声が聞こえたりスフィアを使って、天候を操ったりできるって!」
「!……すごいな。」
シンは続けて、俺は大きく感心を見せた。
天候まで操るほどのスフィアの使い手とは、相当だとも思う。
いくら、尊敬されるとはいえ、俺では流石に無理だろう。
それを成してみせるとは、やはり相当な使い手だ。
「!」
ならばと、気付くことがある。
「……その人こそ、ウィザードじゃない?」
「えぇ?」
ふと口にしたことには。
その人こそ、ウィザードと呼ぶには相応しくないかというもので。
シンは耳にして、意外そうな顔をする。
「……俺なんかよりも、その人こそ、皆の言うウィザードじゃないかなって、思ったんだ。……その辺はどうなの?」
「……え、う~ん。」
繰り返しては。
耳にして、シンは悩みに。
俺だって、天候を操る、なんて自信はない。
繰り返すようだが。
それほどの人材なら、その人こそウィザードと呼ぶに相応しいだろうと。
「う~ん。何でだろぅ。僕も分からない。だって、バスーおじさん、そういうの、ほとんど口にしないもん。僕も、ウィザードって話は、聞いたことがないんだ。」
「……へぇ。なるほど。そこは、その人の事情があるのか。」
悩んだ先に紡ぐことは、やっぱり分からないのことで。
その言葉の先には、シンには感じ取れないが。
やや何かの事情があると、俺は察する。
そこは本人に聞いてみないことには、分からないか。
「まあ。難しいならいいよ。そこはさあ、本人に会ってから話を聞いてみることにするから。」
「!う、うん!」
分からないなら、しょうがないとして。
俺は、バスーおじさんとやらの話はここまでにして、次に備える。
シンは耳にして、頷いたならまた、何をしようか悩んで。
「次は何をする?」
俺は、促すように言った。
「ええと……。」
また、軽く悩むものの。
「じゃあ、……ええと、スフィアを使って、攻撃とか、何とか……。ビームみたいなものの出し方!」
「!」
言うことには、スフィアを使った攻撃手段。
「……。」
それについては、俺は流石に教えることはできないと、口ごもりそうになる。
「うぇ?」
不思議そうに首を傾げられた。
「……ちょっとそれはね~……。」
やんわりと断れたら、断れるのだが。
難しそうで俺は、言葉がなかなか紡げないでいる。
シンは変わらず、首を傾げるだけで。
「……教えたいのはやまやまだけど、この船が壊れちゃう。」
やっと見つかったことは、流石に船を破壊しかねないとのことで。
いくら出力を調整できるとはいえ。
完全にダメージを与えないというところまではいかず。
まして、扱いなれていないシンがしたなら、船に大穴が開いてしまう。
それこそ、スフィアを使って、艦内散策の果てに。
動力炉前の扉を開くために盾がやりそうだったことの、大規模なバージョンだ。
「!!」
俺の忠告と、また、俺が醸した雰囲気に気付いたか、シンは思わず口を覆う。
「……そ、そんなに怖いの……?」
恐る恐る、聞いてくることには、どれほどのものかということで。
俺は、頷き、加えて。
「出力にもよるけど、巨大なマキナの装甲を破壊できるぐらいにはあると思うよ?ということは、このような軍艦の装甲も、貫通できるかもしれないさ。そうでなくても、小さな出力でも、何らかの危険性はあると思うんだ。ちょっと、それはね……。」
理由も付け加えた。
「……。」
その理由に、シンは余計に口ごもってしまう。
「!」
怖がらせてしまったと感じ、申し訳なさが溢れてきた。
「……その……。ここでは危険だけどさ、もうちょっと、損害とか、そう言うのがない場所でなら、教えられるかも。攻撃方法は、今回は教えられないってことで、どう?」
「!」
代わりとしてだが、俺はある提案する。
ここではできないが、もっとこう、自由にできる場所でなら、いいと。
それならば、恐怖も幾分和らぐだろう。
「うん!じゃあ、大和お兄ちゃん!それで!」
その通りに和らいだなら、シンは嬉しそうに頷いてきた。
その和らぎを確認したなら、俺も頷いた。
「……と。他にスフィアを使ってやりたいことは……と。」
さて、攻撃方法は後回しにして、次に何をしたいかと問う。
折角だから、色々と教えたいことは教えたいし。
「!ええと……。」
シンは耳にして、一転、どうしようかとまた悩み。
よく知らないのが、災いするか。
唸り声出しながらも、考える。
「じゃ、じゃあ、バリア!」
「!」
導き出したことは、フォトンシールドのことで。
期待の眼差しを、俺に向けてきた。
「……これも、ダメ?」
期待があるからで、だが、攻撃手段のことがまだ頭に残るか。
表情は転じて、不安そうになっては続けてくる。
「いいや。」
俺は、首を横に振った。
そうしたら、また、ぱっと顔を明るくさせた。
「防御なら、大丈夫だと思う。周囲を破壊することはないから。」
「!」
前提として、理由をまず述べる。
……流石に、防御なら大丈夫だと俺は思う。
盾の場合は別としても。
単純に、スフィアだけの防御なら、周辺を破壊するまでには至るまい。
「そ、それで……。やり方は……?」
「!」
シンは、無邪気な勢いのまま、俺にやり方を急かしてきた。
つい、押されそうになるものの、俺は落ち着いて。
「まあ、慌てないで。」
ついでに、シンの興奮も押さえておく。
「!う、うん!」
宥められて、シンは大人しくなった。
「簡単なバリアの張り方は、まず、浮かせたスフィアを、自分の前に持って行くことから。そこで、自分の前に、壁を作るように、円を描かせる。」
大人しくなったなら、説明を始めて、俺が実践を示す。
スフィアを浮かせたまま、自分の体の前に持って行き、静止。
手で、壁を作りまるで、手で円を描くように動かす。
スフィアは、合わせて動き、同じように円を描く。
「!」
そうしたなら、光の膜が形成されて。
しばらくしたら、泡のように弾けて、消えた。
破裂するその瞬間まで、シンは見とれていて。
「!……やってみるかい?」
「!う、うん!」
俺が催促したなら、シンは我を取り戻しては、また、ちゃんと向いて。
自分のスフィアに意識を集中させる。
浮かせたなら、俺のように自分の体の前にスフィアを持ってきて。
俺が実践したように、手を回して、円を描く。
スフィアは合わせて動き、円を描いたなら。
光の膜を発生させて、弾けさせ、消滅させる。
「!おー!!」
自分がやったことに感嘆の声を上げて。
子供らしく、はしゃぐ姿を俺や、レオおじさんに見せた。
俺はそっと笑み、傍ら、レオおじさんは見ていて。
さも自分の子供がやったように微笑ましく見ていた。
「すげぇな!おい。俺がシンと同じぐらいの年じゃ、実際アビーみたいなことになってたのに……。」
感心に心躍らせて、レオおじさんは言う。




