ゆうしょくあとにすふぃあのれんしゅう!
俺は、その人の背中を静かに見送った。
実感はできないが。
何だかそれは、俺じゃなくて、サカマタさん一行の、誰かのアラームでは?
立ち去る背中に向けて、疑問をつい投げてしまった。
「あ~と。長居しすぎたかな。持ち場についていないと、流石に文句言われるしな……。」
「だな。ここらでお開きか。週末だかの宴に誘うか?」
「いいねぇ。」
「!」
それを皮切りに、例のギャラリーの人たちも立ち上がって、片付けていく。
「そんじゃ!またな!」
「!は、はい……。」
食器を片付けたなら、振り返っては手を振って。
半ばポカンとしながらだが、俺も応えて、手を振り返す。
ギャラリーの人たちがいなくなったなら。
空白の座席に、妙な沈黙が居座ってきて。
そうであっても、続く食堂への行列に、やがて喧騒が戻る。
あんまり、見知った人はいなかったが。
俺を見かけるなり、隊員さんたちは皆一様に手を振って。
振り返してふと思うことは。
やっぱり、有名なのかな。
「……。」
何と声を掛けていいのやら、やっぱり思い付かずにいる。
「……そろそろ、私たちも行きましょ?流石に長居しても、それこそ他の人たちに迷惑でしょうし。」
「!」
そんな迷いを拭ったのはマフィンであり。
方向性を出した。
「だな。」
「まあ。あたしたちであっても、ねぇ。流石に食堂のこの席を占有しておくのもね。」
マフィンの意見に、レオおじさんもエルザおばさんも頷き、賛同。
「!!」
アビーは反応して、びくりと体を弾ませる。
「え、行っちゃうの?ちょ、ちょっと待って!た、食べ終わるから!」
「……。」
そんな時になっても、食べることを思い出して。
なお、アビーの食器には、確かに大盛に盛られていたが。
どうも、話をしている最中に、沢山食べてと。
他の人からもよそってもらったがために、今更ながら気付いたが。
余計に盛られていた。
色々感じることがあるが、呆れて物が言えない。
もっと時間が掛かるかも。
などと考えもしたが、そこはアビーだ、あっという間に平らげてしまった。
「……。ほんと、すごい食べっぷりね。」
「えへへ~!ごちそうさま!」
「……!」
マフィンはそんなアビーに呆れて言う。
言われた本人は、にっこり笑みを浮かべては。
食事の終わりと、両手を合わせて感謝を示した。
アビーが言ったそのことに気付き、俺も皆も両手を合わせて、感謝を示す。
「ご、ごちそうさま……。」
俺も続けて言うなら、……食事はここで終わってしまう。
「……。」
何だか、寂しさを感じて、つい沈黙してしまう。
会話に夢中になっていて、気付かなかったが。
余韻からも感じることには、料理はなかなかのもので。
微かに食器に残る、料理に使われたソース、調味料、香り。
どれも、なお、美味しさを訴えていて。
正直、もう一度食べたくなるほどだ。
なるほど、ソードが言った通り。
ただでさえ厳しい環境なのに、美味しくもないなら、士気に関わりそうだ。
俺がそう思っている傍ら、皆は席を立ち、食器を片付けていく。
俺も俺で、後に続き、片付けて。
「!」
と、食器を片付けた先に見える、料理係の人たちと目があう。
俺は、頭を下げては。
「ごちそうさまでした。」
「お!そうかい!また来てくれよ!ウィザード一行なら、大歓迎よ!」
食事の終わりの文言を口にして。
そうしたなら、大層喜んで、料理係の人は、歓迎してくれた。
食事を終えて、食堂を出ると。
「!」
まだ人の列はあり。
どうやら、時間が決まっていて。
合わせて、休憩を取っている模様。な
お、見掛けたなら、列の人たちは皆、手を振ってきて。
それこそ、列の端まで、手を振ってくる。
苦笑してしまい、手を振り返す。
「すごいね!大和ちゃん、有名だよ!」
「!」
アビーが傍ら、言ってきて。アビーを見るなら、ニコニコと笑顔だ。
「すっごーい。大和お兄ちゃん、軍隊の人と知り合いなんだね!」
「!」
また、覚えたてのアビーの口調で、シンが言ってきて。
見れば。
エルザおばさんんに手をつながれながらも、凄さに感動を示しているようだ。
また、気付くこともあって。
その、エルザおばさんに手をつながれた様子は。
どうも親子のそれに見えて、仕方がない。
微笑ましくも思えて、苦笑いから、微笑みに変わる。
「……そうかな?」
ただし、俺にとってはあんまり自信のあることでもない。また、苦笑してしまう。
「そうだよ!すっごーい!」
「……。」
純粋なシンは、そうであっても、嬉しそうな笑顔をして。
俺の方は、これ以上言うと、夢を壊しそうになると。
……沈黙して頷き、頭を撫でた。
「あんまり止まるのも、迷惑よ。早く行きましょ!」
「!」
先頭を行くマフィンが、振り返り見て、言ってきた。
シンといい、俺といい、そのやり取りに、どこからしくもあると。
かつ、呆れもしていて。
そうであっても、口元には笑みがあり。
マフィンもまた、見ていて誇らしくはあるのだろう。
ただ、それ以前に、立ち止まっているのも、迷惑という状況で。
なら、やむを得ないと俺は頷いた。
寂しいながら、やり取りを中断して、あてがわれた部屋に戻っていった。
そうして、また男女に分かれて。
「……。」
……暇になってしまう。
部屋に戻ったなら、寝転んで天井を見上げるしかない。
レオおじさんもまた、何もすることなく、天井を見上げていて。
視線をちらりと動かして、唯一の丸窓を見るならば、もう夜の闇に包まれていて。
かつ、海原のために、明かりない世界は。
村で過ごす宵闇とは違い、深い深い黒であった。
耳をすませば、波の音さえ聞こえそうなものだが。
生憎、それほど静かなものでもない。
軍艦がまるで、生き物の鼓動のように蠢く、様々な音があるために。
静かでもないし、かといって、暇潰しのいいものがあるわけでもない。
酷い退屈に、強く鼻息を吐いた。
「あの……。」
「!」
と、シンが下から声を掛けてくる。
俺は、体を起こし、覗くなら。
「……ごめんなさい……。寝てました?」
「いや。」
何か、気を悪くしたみたいな顔をされてしまう。俺は、首を横に振って。
「それよりも、どうした?」
何もなく、声を掛けやしない。俺は、促すようにシンに尋ねる。
「ううん。ちょっとね……。その、どうやったら、スフィアを上手く扱えるかな~、って思って。」
「……へぇ。ん~……。」
シンは、そうであっても、ちょっと悪いなと言いたげな顔をしながら言う。
内容的に、スフィアの扱い方のようだが。何だか少し、困ってしまう。
もしかしたら、ウィッチさんに言っていたのを聞いていたのかもしれない。
悩ましさに、俺はつい、頬を掻いてしまう。
「……俺でよければいいけど。あんまり、教えるのには自信がないよ?」
自信はないけどいいのか?聞いてみる。
「うん!大丈夫!大和お兄ちゃんから、教わりたいの!」
「……。」
シンは、にっこりと笑って、教わりたいと宣言してきた。
ウィッチさんといい、シンといい。俺も頼りにされたものだな。
自信がないものの、やるからには、と俺は無言ながら頷いて。
ベッドから出て、降り立つなら、そっと、手を動かす。
すると、ベッドの隅に置いてある俺のバックパックが、光輝いた。
「!おー!」
シンは、それだけでも喜んでいる。
「いや、まだだよ。まだ始まっていないし。今から、スフィアを取り出すからね。」
なお、まだ始まっていないよ、そう付け加えておく。
《こんばんは。現在時刻は……。》
「……。」
などと格好を付けるのはよかったものの、反応があったのは別の物で。
盾が真っ先に反応してしまい、俺は予定外のそれに、沈黙してしまう。
「?」
シンはどうしたのだろうと、首を傾げて。
ベッドから降りて、俺の側に来て、俺の目線の先や、俺を交互に見る。
「……いや、何でもない。ただね、ちょっと別の物が反応してね。」
とりあえず、包み隠さず言い、また、手を動かして、盾を静かにさせた。
「……本当は、格好つけたかったのだけどね。やっぱりらしくないや。待ってて。」
今度は、横着せず、普通にベッドに行き。
バックパックからスフィアを二つほど、取り出して戻る。
「!」
その内の一つを、シンに渡してあげる。
「あげるよ。大丈夫、村から出る前に、もっと持ってきているから。」
「?!え、ええ?!そ、そんな、わ、悪いよ……。」
言うことには、一つはあげようと思い。そっと、笑顔も添える。
そうしたならシンは戸惑ってしまう。
「……そうだなぁ。お守り、かな。持っておきなよ。」
「!!」
戸惑うシンに、掛ける言葉はそう、お守りであるということで。
耳にしたなら、シンは余計に戸惑ってしまう。
「そうだぜ?いいのさ、シン。大和があげるってんなら、素直に受け取っていいのさ。ただの小遣いみたいなもんじゃねぇさ、何せ、ウィザード印の、素敵なスフィアってんなら、誰だって欲しがるぞ?がははは。」
「!」
そのやり取りは、レオおじさんも耳にして。
困っていると感じたなら、レオおじさんは、寝返り。
頬杖ついては、笑いながら諭してくる。
「……。」
見ていて俺も、そうだねと心で言いながら、頷く。
「……!」
レオおじさんに諭されて、シンは一転、嬉しそうな顔をしてくる。
言葉はないが、分かったと大きく頷きを見せた。
「じゃあ。始めるか。」
ならもう、始められると感じたなら、俺は早速取り掛かると、言う。
「!う、うん!」
シンもまた、追従して頷きを返した。
始まりとして、俺はマフィンに教わった通り、行ってみせる。
「まずは、優しくスフィアを包んで……。」
そっと、手にしたスフィアを優しく包んで。
ほんのりと、熱を感じたなら、手を開く。
そうしたなら、手にしたスフィアは淡く光を放っていて。
「!」
「やってみて?」
シンはつい見とれていたが、俺はやってみてと促す。
「!う、うん!」
はっとして、シンもまた同じようにスフィアを手に、優しく包んで。
開くならそのスフィアもまた、柔らかく光を放つ。
「!で、できた……。」
「うん!そうだね。」
それだけながらも、シンは喜びに声を上げて。
俺は、何だか微笑ましく思えて、一緒に頷く。




