とっくみあい!
「!」
俺も振り返り見れば、向こうにも同じカプセルがあり。
もちろん、飛行隊の面々が操縦していたのだから。
当然、その人たちもいたが他にもいて。
レオおじさんや、エルザおばさんも来ていた。
さらには、どうも面白見たさに多少の人だかりもある。
その人たちには、見覚えが。そう、スフィアの映像で見ていたが。
レオおじさんと腕相撲していた人と、ギャラリーだ。
その人たちも、盛り上がっていたようだ。
顔には、面白かったと言わんばかりの名残があり。
俺は、予想を超える人の数に、思わず息を呑む。
「やいやいやい!!ガント!!!割り込むなんてひでぇぜ!!あと、ウィッチよぉ!!晩飯にまたって、言ったじゃんかよぉ!!不意打ちひでぇぜ!!!」
「えぇ?!うぅううぅ……。」
「……。」
一方のソードは、やはり早速文句を言い。
言われたガントさんはいつもの仏頂面、腕組み威圧。
ウィッチさんは、強く言われて、先ほどの戦闘時とは翻って、怯え、委縮する。
「ふん。吠えていろ、負け犬。戦場では、どこから攻撃が来るか、教えてはくれないぞ。それに対処できない貴様の甘さだ。」
「な、ぐ、ぐぅぬぬぬぬ……。」
反論としてガントさんが言うことには。
戦場では命取りの油断だと、言い返してきて。
言われた本人は、悔しさあれど、言い返せなくて、押し黙る。
勢いはそのままのためか、どこかシュール。
「まあ。今回の模擬戦闘のこと、きちんと思い返せばいい。でないと、新入りのウィッチに抜かれたりするぞ?それと、もしかしたら、そこにいる、初めてであろうウィザード君にも抜かれかねん。ふふふ。私はなかなか、楽しめたが。」
シールドさんは、悔しがるソードに掛ける言葉は、ちゃんと省みることだとして。
だが、とても楽しんだようで、どこか爽やかさを感じる。
それは、たまたま俺が見せた芸当のせいか。
「……。」
「……?」
言われてソードは、俺の方を見るが。
やはり何も言いだせないでいる。
なぜかは分からず、首傾げて。
「かぁー!賭けに負けた!……ありったけ思わせやがって……!」
「だがよ、俺も久々に見たぜ!ありゃあ、並大抵の人間じゃ、できないしな、ええ?ウィザードってやつは、天才か?面白かったけどよぉ。」
「!」
それとは別として、ギャラリーは反省とやらとは無関係。
結構な盛り上がりを見せているようで。
注目すれば、こちらもこちらで楽しんでいたようだ。
俺と視線が合うと、言葉をやめて、面白かったと余韻を残す顔で。
手を振ってきた。
俺は、顔を赤くしながらも、手を振り返す。
「いよっ!将来有望なやつ!」
「流石、単騎で長城に乗り込んで、帝国をぶっ飛ばしたってだけはあるな!」
「腕っぷしはあれだが、ええと、技?が凄いんだろうな!」
「俺たちの所に来るか?そしたら、楽しめるぜ!」
「……あははは……。」
黄色い声援が帰ってきた。俺は、苦笑して答えるしかなく。
「……ん?」
が、齟齬を感じた。
内容を頭で反芻するなら、何かおかしい点に気が付く。
どうも、彼らの間では。
俺は単独で、帝国を守る長城に突入して、破壊したとなっていたが……。
……あの時のは、村の皆と一緒だったんだけど。
もっと言えば、俺だけじゃ、成しえない。
他の、軍隊の人も頑張ってくれたからできたことなんだ。
俺だけじゃないんじゃ。
それ以上に、……噂が何だか拡大しているのだけども、誰かな?
訝し気な表情をしながら、それぞれ見ていたなら。
「お!どうした?」
「!」
レオおじさんが俺のそんな様子に気付き、声を掛けてくる。
俺は、カプセルから出て、レオおじさんの所に駆け寄っていく。
「?皆褒めてんだぜ?どうしたんだ?」
「!ええと……。」
駆け寄ったら駆け寄ったらで、また質問を繰り返して。
俺は、多少躊躇いながらも。
「……何だか、噂がえらく大きくなっている気がして。」
「噂?」
「うん。何だか、俺が単身乗り込んで、長城を吹っ飛ばした、みたいになっていたからさ……。ええと、戦闘機の上手い下手は別としてね。」
言うことは、何だか噂が独り歩きして、大きくなっているようなということ。
「ん~。噂ぐらい、気にしないほうがいいが……。妙にでかいのも、多少は気になりはするわな……。」
聞いてレオおじさんは、気にする必要はないとアドバイスしそうではあったが。
こうも大きいのも気になりはすると。
「あの時、確かに、でっかい壁をぶっ飛ばすことを、お前はしていたからな、嘘ではないが、だが、俺だって側にいたし、母ちゃんも、クサバも、銭湯の連中自称・アマゾネス姉妹の二人も、マフィンも、まして、お前の側には、アビーもいたわけだしな。一人というには、流石に無理があるだろうよ?」
「うん。」
続けては、気になる根拠を。
その通りで、あの時は複数人突入していたし。
何だか、違和感も感じる。
「まあ、噂なんて尾ひれ背びれついて、勝手に泳ぎ出すようなもんだが、問題は、誰が最初に言いだしたってことか。一応、俺も連中に聞いてみるかね。」
「そうですね。ありがとうございます。」
噂は噂だが、なら、一体誰が広めたことか。
確かめようとレオおじさんはしてくれるみたいで。
俺は、そんな心強さに、頭を下げた。
早速と、レオおじさんは、ギャラリーの人たちに寄っていく。
俺は、遠くから見ていることに。
「そういや、さっきのよ。長城を単独で吹っ飛ばしたって噂。」
聞き出して。
「おう!俺たちの間じゃ、有名なもんだな。!その様子だと、言い出しっぺは誰だって感じか。ははぁ。自分も有名なのにってか?嫉妬しちゃって!」
「ああ!そうとも!俺だって……って違う違う。あんまり調子に乗らせないでくれよぉ。母ちゃんに叱られちまう……。」
ギャラリーの内の一人は、勘付いて、ニヤニヤとからかうように言いだす。
すっかり意気投合しているのか、様子からして、よそよそしさはない。
レオおじさんも、気を大きくして、何だか笑うものの。
それじゃあ、自分を調子に乗らせてしまうと、自ら戒めた。
「噂好きの連中は、うちらじゃ沢山いるからねぇ。誰だろうかねぇ?」
「あぁ~。簡単だよ。長城近くまでいて、バカ騒ぎしていた連中の内の一人というなら、類推可能だろう?」
「それってあいつしかいねぇぞ?陸の狼野郎は、そういうたまじゃないだろうからな。他に、先遣隊、潜入部隊の、情報重要視する連中は、はっきりいって、味方を混乱させるようなことは流さねぇ。なら、一人だけだ。」
情報ソースは誰だと聞き回し始める。
時間が掛かりそうな気もしたが、案外、早く終わりそう。
もう、該当しそうな人を、導き出しそうだ。
「ソードだろうよ。」
「違いねぇ。ウィザードと聞くや、飛び上がって喜ぶような奴だ。第一、前線に真っ先に飛び込む鉄砲玉だし。現にいたしな。」
「まあ、何だ!噂さ噂!現実は、そうじゃないだろうがよ。でもよ!俺たちにとっちゃ、現状に風穴を開けた、英雄さね!」
「そうだ!それでいいじゃねぇか!」
「話はでっかくってか!いいねぇ!そのうち、本当になるかもしんないぜ!」
「……。」
ソードのようだ。
しかし、そうであっても噂は噂で、大きくなりもする。
気にすることはないとまとまりそうで。
聞いていて、レオおじさんに言われた通り。
気にしないことにするかと、思い始めていた。
「だ、そうだぜ?」
「!」
まとまったところで、レオおじさんがこちらに振り向き。
視線合わせて、にんまり笑うなら、話は終わったということで。
気付き、俺も頷く。
「あははは!気にすんなよ!」
「そうだよ!どうであっても、俺たちゃ、お前を応援しているぜ!」
「もっと、胸張っていいんだぜ!!」
「稀代の……何だ?って奴なんだし、むしろ俺たちは、その瞬間を見れて、光栄さ!」
「……皆さん……。はい!」
レオおじさんが視線を向けたと同時に、そのギャラリーの人々も向けては。
皆それぞれ、応援のように言ってきて。
何だか俺は、心の底が温かくなって、笑みを浮かべて、強く頷いた。
「だったら!!俺のことも応援してくれよぉ~~!俺ぁ、ガントやウィッチにボコられてんだよぉ~!」
「……あ……。」
そんな群衆に一石投じるはソードで。
どうもあれから、軽くガントさんから説教を受けていて。
心身ともにボロボロになっていたようだ、涙目で訴えてきた。
俺やレオおじさんもそうだが、ギャラリーも注目。
しかし、ギャラリーの様子は一変して、どこか、よそよそしい。
いや、何か、近寄りたくないような感じで。
「えぇ……ソードをぉ?」
「よせよせ!こいつ、調子に乗ると厄介だぞ!調子に乗らせたら、明日の出撃とかで、機体を下手すりゃ新しく作らなきゃいけなくなるぞ!」
「げぇ!!そう言えばそうだ。こいつの操縦、かなり荒いからな……。」
「整備の連中が何て言うかな。」
「聞いた話だと、戦闘機一機分作れるぞ……。俺は、工場にでも就職しようかなとか、ぼやいていたなぁ。」
「ひっでぇ!!誰も、彼も!!傷付いて、ボロにまみれた俺を、慰めてくれる奴はいないってか!!!!うわぁあん!!このぉぉお!」
「……。」
口々に言うことは、あんまりよろしくない評判で。
全然フォローになっていないことに、涙交じりでソードは言い。
だが、怒りも併せて、カプセルから飛び降り、助走付けてはやがて、殴りに行く。
元気だなと、思ってしまう。
そうとしても、泣きたいのか、怒りたいのか、よく分からない。
その様子に、俺は呆れてしまう。
当のソードは、殴りかかったのはいいものの。
あっという間に組み伏せられてしまった。
「あだぁ?!」
ギャラリーの一人が、殴りかかる腕を取り。
そのまま、柔道の技のように、組み伏せているようだ。
硬い床に、倒された音は激しく、痛そうで、現に、ソードは叫んだ。
「よっと!ソード。艦長に処罰されたくなきゃ、頭冷やしたがいいぜ!そうしたら、手を出したことは黙っといてやる!」
「いででで……。」
そのままの状態で、乗っかっては、ギャラリーの一人は宥めるように言う。
そうか。軍艦故、規律正しくなければならず。
このような無鉄砲者は、こう、処罰される。
涙目でありながらも、ソードはまだ、睨みをやめないようで。
「それくらいにしておけ。どうせ言っても聞かん。それに、そいつは、その体だけが唯一の取り柄だからな。あんまり処罰して、ダメにするな。任務に支障が出ては面倒だ。」
「!」
その騒乱を止めるのは、意外にもガントさんで。




