あいぼう!
「ところで……。」
《ん?何?》
換わって、聞くことには。ソードは耳を傾けて。
「『あいつ』って誰?もしかして、ガントさん?」
《?!うぇぇ?!》
「……?」
気になった、ソードの言った相棒の正体について。
だが、途端なぜか動揺した。
《こ、言葉の文だよ!……誰でもない。……あと、ガントを相棒と言わないでくれ……。お、おっかない!!!》
「……。」
どうも、言葉の文だったようだ。そこは残念なところ。
加えて、ソードは震え声を発して。
《そんなこと言ったら……!俺、『目を覚まさせてやる!』って言われて、何されるか分からん!!滑走路引きずり回しとか、本気でしそうだ!!あわよくば俺を餌にして、でっかい魚を釣り上げたり……!ひぃいいい!!》
続けられることには、何をされるか分からないとして。
挙句、悲鳴まで上げる始末。
余計に悪くなって。
「ごめん、色々と……。」
謝ることにする。
《……いや。気を使わなくていいぜ。これは、俺の問題だし。》
「……分かった。」
気を使わなくていいと、ソードは言ってきた。
その口調はいつものソードのようで、どうやら立ち直っている様子だ。
なら、と俺は頷く。
《……と。こんなやり取りしていたら、お連れさんが戻ってきたぜ!》
「!」
そんなこんな、ソードとやり取りをしていたら、二人が帰って来た。
画面下のレーダーに、ちゃんと反応が出てきて。
気付いて俺は、さらに周囲を見た。
飛び方は上手くないが、ちゃんと追い付いてきてくれたみたいで。
《おう!良く戻って来たな!こうでなくっちゃ。たった二人だなんて、そりゃ伝説のエースパイロットならまだしも、ね。こう、ね。複数人がいないとさ、寂しいじゃねぇか!》
戻って来た二人に、ソードは声掛けする。
励ましもあって。
《……全く。酷い目に遭ったわ……。航空機って、こんなに揺れるの?》
だが、マフィンは、疲れたような口調で言ってくる。
《いや、これは戦闘機だし。快適性はないぜ?ま、それよりも、実機なら命がいくつあっても足りんさ!!あはは!まあ、ゲームだし!》
マフィンの言ったことに対しては、まあ、納得するような答え方で。
《でもでも!!すっごく楽しかったぁ!お空を飛ぶって、気持ちぃー!》
方や、アビーに至っては、そうであっても楽しんで。はしゃぐ様子が伺えた。
《あなたはいいでしょうけど、私はトラウマになりそうよ!全く、……酷いアトラクションだわ……。》
《えー?》
マフィンはアビーの様子に、呆れ果てて、軽く抗議をして。
その抗議、アビーにはあんまり響いていない。
多分、ニコニコ笑いながら、聞き流している。
《……なあ。》
「!」
置いてけぼりを喰らっていたソードが、俺に聞いてくる。
耳を傾けると。
《あの二人、ああなのか?》
「だと思う。マフィンはまとめ役で、アビーが切り込み役かな。」
《……ある意味、いいコンビか。》
マフィンとアビーについて聞かれて。
一応、暮らしてきて分かったことを俺は口にした。
マフィンは村長さんの孫娘で。
おそらく躾けられた結果が、あのような雰囲気を持つようになり。
アビーは、自由奔放に育ってああなった。
なお、親がどうの、俺はまだ知らないし、アビーも話してこない。
それがあって、アビーについてはそれより先は不明。
そんなイメージを話したなら、ソードはなるほどといった風だった。
「……。」
《ふぅむ……。》
アビーたちのイメージうんぬんはともかくとしても。
しかし、特にマフィンの通信からはまだ怒りは収まっていない。
唸り声が聞こえて。
耳にしていたソードは、珍しく思案するような声を出した。
《まあ、何だ。喧嘩はそれほどにして、よ。これからもっと楽しいことしようぜ!》
《!》
《!!楽しいこと?》
「!」
思い付いたことには、置いてけぼりもそこまでと。
アビーとマフィンの仲裁をソードが買って出て。
宥めて、付け加えることには、まだ楽しいことがあると。
マフィンは、アビー相手に唸っていたが、ソードの言うことにやめて。
耳を傾ける様子。アビーは、楽しいことと聞いて、声のトーンが上がる。
ある種いがみ合っていたであろう二人を、ソードはそうして仲裁してみせた。
「……ところで。楽しいことって?」
《!お、そうだな。》
なら、仲裁のきっかけを作った、楽しいこととは。俺は聞いてみるに。
ソードが言うことには。
《ただ飛ぶだけじゃ、飽きる。やっぱり、戦闘機ってのは、戦闘があってのもんだろう?》
とのことで。
「?」
《?》
内容に、どういうことだろうかと首を傾げて。
マフィンもその様子。
《?あり?通じなかった?あ~、まあ、その何だ。ほら、ただ飛ぶだけじゃ、このまま飽きてしまうってことだよ。それじゃ、ゲームじゃないじゃん?ゲームだったら、こう、盛り上がらないと、ね?だから、盛り上げるために、今から敵さんを召喚いたしま~す!》
「!」
《?!ちょ、それって……?!》
通じなかったとソードが思ったなら、かいつまんで言い。
挙句、最後には、これ幸いと、恐ろしいことを口にした気もする。
言いたいことは分かった。
ただ飛ぶだけじゃ、つまらないから。
それでは、ゲームとしては盛り上がりに欠ける。
なら、敵を召喚して、戦おうといきなり言われると。
俺はぎょっとなってしまった。
マフィンもマフィンで、気付いて、何だか青冷める様子も窺い知れた。
《そのとーり!飛び方を覚えたなら、後は実践あるのみ!行ってみよー!》
《や、やっぱり……?!》
ソードの言葉を借りれば、実践あるのみと。口調は意気揚々で。
耳にしたマフィンは、やっぱりと。
その間、ソードが何か、パネルをタッチする音を響かせていて。
《よし!さあ、盛り上がる場所へ行くぜ!!》
その一言を告げた。
「?!」
《?!きゃぁ?!》
《うぉーー!!》
途端、画面が移り変わり、悪天候の、大海原の上空に出た。
《……ここが一番盛り上がる所よー!俺の中で一番好きな場所だ!》
「……ここって?!うぉ?!」
《ど、どこよ?!そ、それに、横揺れが、きゃぁあああ?!》
ソードの選んだのは、好きな場所であるが、しかし、悪天候。
まだ、バランスのとり方もよく分かっていない自分には、難しく。
現に、時折吹き荒れる暴風に、機体は揺れて。
大きく煽られたマフィンの機体は、それこそ暴風に流されそうになり。
けれど、耐えて、持ち直している。
一方、アビーの方は、……楽しそう。暴風に煽られているにも関わらず。
合わせて動かして、また、時折歓声を響かせている。
俺も俺で、負けじと機体を立て直しながら、思うことは。
そのお気に入りのこの場所は、シチュエーションは、何だと。
《ここはな。かつて、激戦が繰り広げた場所だ……。》
「?!」
やがて、暴風に煽られながらも、ソードは語りだす。
その口調は、どこか遠くの方を見るかのもの。
いつもの、バカげたことを口にする、お調子者なそれではない。
モノローグのような。
《……『円卓の海』、そう呼ばれた場所。大陸と、列島を隔てる、大きな海でな、帝国や共和連邦が誕生する遥か前から、領海問題のあった場所だ。》
「?」
語り続けることは、不思議な単語を述べ。『円卓の海』?
ただまあ、俺の前世の時代でも、領海問題は耳にしたことがあるが。
それは、この世界でも同様のようで。
《……そこって……すぐ近所じゃない!今はそう呼ばれていないだけで。まあいつも悪天候で、航空機は通りたがらない場所だそうよ。》
《?!お、マフィンっち、知ってんだ!》
「!」
マフィンは知っていた様子。割り込んできて、言ってきた。
……近所だったのは驚きだったよ。
《私たちが住んでいる場所は、その端っこ。その、円卓と呼ばれた場所は、楕円形の海の、真ん中ね。》
「!そうなんだ。」
近所ではあったが、マフィンが言うことには、それは端っこで。
あんまり地理は詳しくないことが仇となったか。
どうもここは、近所とは違い、真ん中の大きな場所のようだ。
《あ、そうだな。西の端っこだったら……。まあいいや。ここはな、空を舞うイカレ野郎どもの、墓場みたいなもんさ。現に、共和連邦、帝国、共々この場所で、互いに衝突し合っていたからな。まあ、闘技場のようなもんさ。》
「……と、闘技場……。」
ソードが続けることには。
いわゆるエースパイロットたちの戦場だったということだ。
そんな、闘技場に、俺、アビー、マフィンの初心者が、ソードに連れられて。
入場する、それは異様な緊迫感を生んだ。
俺は反芻したなら、緊張感に、言葉詰まらせてしまう。
《そう。闘技場。腕だけが試される。》
「う、うへぇ……。」
《階級も、身分も、そんなもん関係ない。腕の立つ奴が、生き残る、ただそれだけだぜ。へへっ……!》
「……。」
ソードがその例えを採用し、付け加えて。
格好のいいことが述べられたなら、嫌な溜息一つ、俺は漏らし、緊張してしまう。
《ちょっと……。腕って……。私たちは初心者よ?!む、無茶よ?!》
マフィンが幸いにも、止めに入ってきてくれた。
あわよくば、緊張も解けるだろう。
マフィンが言ったことにより、期待が湧いてくる。
《んなことより!お出でなすったぁ!!!!いえぇええええええい!!》
……しかし、そんな待ったなんて、聞く耳持たず。
ソードが言い、歓声を上げたなら、そのタイミングで警報が鳴る。
画面下のレーダーに、航空機の影が映し出されて。
《警告!ミサイル!ミサイル!》
「!!」
機体は警告を告げて。
途端、嫌な風切り音が響くなら、言葉通り、ミサイルが接近していた。
素早く機体を傾けて、旋回するなら、ミサイルはすり抜けていく。
《ちょ?!こ、攻撃って?!い、いやぁああ?!》
マフィンが叫んだ。
旋回した時に、マフィンの機体が見えたが。
そっちもミサイルがかすめたのを俺は見逃さない。
幸い、マフィンも回避行動をしていた。
《さぁて!どちらさん?っと!》
「……。」
当の、シミュレーターでこうした張本人は、より意気揚々として。
相手の攻撃に臆することなく、観察しているか。
《……Se-37……、機体のカラー……。帝国軍の先鋒、赤の飛行中隊こと『レッドドラゴン』か!》
「?」
やがては、相手が何であるか分かるや、名前を叫ぶ。
同時に、ソードからデータが転送されたか。
コックピットのキャノピー画面、端の方に情報が表示される。
3Dモデルで機体が表示されて。
機首に小さな羽を持つが、ほとんどの形は、一般的な戦闘機そのもの。
表示される文字列は、多分機体名だろう。
また、モデルに彩色が成されるなら。
竜を思わせる赤い湾曲した模様に、竜を模したエンブレム。
まさしく、ソードが言った、名前だ、らしいや。




