おそらであいぼう!
《本当なら、空母が爆発しちゃう……なんてね。しょうがないよ、こういうの慣れてないと。まあこれは、シミュレーターだからね!良い子の皆は、やっちゃだめよ~!》
それもあったからか、ソードは強くは注意せず、軽く言うだけで。
《まあ何。気にすんな。それよりも、逆噴射して、バックすればいいぜ!そしたら、きちんとエレベーターさ!》
簡単にアドバイスを済ませる。
聞いてアビーは、頷いた感じで声を出して。
その通り、機体を動かしていく。
ぎこちなく、四角い場所に停まれば。
エレベーターが動き、アビーの機体は天井へ吸い込まれていった。
最後は、俺だ。
「……。」
とりあえず、教わった通り動かすと、機体は進みだす。
「ペダルで左右を動かすのか……。車の運転とはやっぱり違うね……。」
呟きつつ、スロットル操作や、ペダル操作して、動かしていく。
……車の運転について、注釈を付け加えておくが。
一応前世では、車の運転もしていた。当然、免許も所持していたよ。
この体になってからは、多分意味がないだろうけれど。
それで、上手く四角い位置に収まったなら。
今度は俺の機体が天井へ向かい、吸い込まれていった。
「!」
視界が広がったと思ったら、眩しさについ目を逸らして。
眩しさに慣れたなら、ゆっくり目を向けると、そこは空母の飛行甲板で。
左右見渡しては、海原が広がり、目の上は青空が広がる。
前方は、ここを走れという表示が、甲板上に施されているのを目にして。
また、先に上がった皆は、並んで待機していて。
……皆バラバラだが。
前は一応向いてはいるが。ちゃんとしているのは、現役のパイロット。
ソードだけで、後は何だかぎこちない。
そこは、やはり技量の差だね。
《……う~ん。やっぱ初心者じゃ、難しいね。……まあ、実際はこうしてそこから出すだけじゃないし。運搬車が運ぶしね……。》
ソードは、難しかったかなと言ってきた。
言ってきたうえで、他にも一つ、付け加えてくる。
《ちょ……!それがあるなら、そうしなさいよ!》
《うぇぇ……。当て損だよぉ~……。》
「……。」
本当は、運搬車が滑走路まで運んでくれるとな。
何だか、ここまでの苦労が、台無しになりそうで。
マフィンは文句を言い、アビーは項垂れている様子。
《あははは!まあ、何。体験体験!そこはほら、ね?》
《ぬぬぬぬ……。》
宥めとして、ソードはこれも体験だと。マフィンは言われて、引き下がる。
《さあさあ!それじゃ気を取り直して、疑似体験だが、お空の旅に!ああ、快適さはないけどね!》
「……。」
マフィンが引き下がったなら、手を叩く音と共に、ソードは口上を述べて。
突っ込みをしたくなる言い回しだが、……さもありなん。
元々戦闘機である以上、搭乗者に快適性はない。
俺たちが今いる、この空母と同じだ。
安全は当然として、それ以外の、そう、快適性はない。
娯楽も、ない、必要最低限の。
思いはしても、言いはせず、ソードの次の言葉に、注目して。
《お?皆行く気だな!んじゃ、今度は簡単よ!左手のスロットルを、全開にして、操縦桿を引くだけ!さあ、あの青空を行こう!》
皆が注目したと察してか、ソードは続けて説明して。そうしたなら、一番先頭の機体が動き出し、甲板を走り出す。
「?!」
走り出してすぐ、一気に上昇していった。
距離にして、たった10メートルいくかいかないかの距離で。
俺は目を丸くしてしまう。
かなりの短距離離着陸。
俺が知っている航空機は、これよりももっと長い距離を走って行ったというのに。
……そこはほら、別世界の技術ってことか。
そうして目を丸くしたことを落ち着かせ、納得したなら。
また前方をしっかりと見て。
《な!ほら。皆も!!》
ソードの誘導に従って、皆も飛び立っていく。
《きゃぁああ?!な、なにこれ?!》
勢いにマフィンは、つい声を上げて。
《うぉおおおお?!た、た~のし~ぃぃいぃ?!》
アビーはアビーで、勢いを楽しむ様子であった。
二人が飛び立ったのを見て、俺もとスロットルと操縦桿を操作すると。
「?!うわぉ?!」
俺の機体もすぐに上昇する。
軽い圧力か、座席に押し付ける衝撃があるものの。
機体自体は柔らかく飛び上がっていく。
衝撃に声を上げたが、それもすぐに収まる。
「……。」
圧倒され、声を失うが。正直、すごいなと思う。
《おっしゃ!皆上がったな!それじゃ、車輪を格納して。お空で優雅に踊ろうぜ!!》
「!」
皆が上がったと知るや、ソードは言ってきて。
今度は、空で〝踊る〟ことを教えるつもりだ。
《これも簡単簡単!操縦桿とスロットルを使えばいい!まずは、旋回から!》
始まった。
さっと、耳を立てて。
《左に曲がりたい時は、まず左に倒して!》
《こ、こう?》
ソードが続けると、マフィンが従い。操縦桿を動かしたらしい。
すると、機体は左に90度機首を傾ける。
《ひぅ?!》
マフィンがつい、声を出してしまった。
《そこから、操縦桿を引く!そうしたら、急な角度で素早く旋回できる!》
《こ、こうね……?》
次には、操縦桿を引くと指示を出した。
マフィンはそうしたなら、機体は急な角度で、風切り音を立てながら左に曲がる。
《?!ひぅわぁ?!》
「!」
旋回だ。その際、急な圧力感じてか、マフィンは軽く悲鳴を上げた。
《はい、戻して~。水平にしないと、延々と旋回し続けるよ?》
《わ、分かったわ……。はぁぁ……。びっくりした……。》
そんな急旋回だが、立て直して機体を水平にしたなら終わり。
その位置はちゃんと左に曲がった先になっていた。
《あたしも~!》
アビーも続き、マフィンの後追いで旋回をして。
《うぉー!たーのしー!!》
今度は楽しそうだ、声を上げて曲がり切る。
俺も俺で、彼女らに追い付こうと旋回をした。
「?!」
傾けて、操縦桿を引いたらまた。
押し付けられる感覚に、息が詰まりそうになる。
曲がり切ったなら。
「はー!はー!……。」
つい荒い吐息を吐いてしまう。
《あらよっと!》
最後は、先生こと、ソードが旋回を見せつけて。
俺たち以上の速度で曲がったにも関わらず。
何事もないように姿勢を正してみせた。
途中聞こえた風切り音は、非常に甲高い。
それを余裕でこなすとは、ソードはすごい。思ってしまった。
《へへっ!慣れよ慣れ!慣れたら、実機でもこれぐらいできらぁ。そしたら、もっと踊れるようになるぜ?こんなようにっ!》
「?!」
《!!!》
お次は見本だと言わんばかりに、ソードが先頭に出て。
そうしたら、ソードの機体は思いっきり速度を上げる。
急上昇を見せたなら、空中でくるりと回転し、急降下。
からの、急旋回を見せてこちらの位置まで戻ってくる。
風切り音が響き渡り。
また、突っ切る時に生じる、飛行機雲はその複雑な軌跡を空に描き上げる。
そのすごさに、呆気に取られてしまった。
《すっごーい!!》
アビーが代表して言う。
《へへへっ。だろっ!》
言われた本人は、とても機嫌よく答えてきた。
自分の鼻を、自慢げに擦る音も聞こえて。
鼻高々だ。
《あたしもやるっ!えいっ!》
その凄さに、やってみたくなったアビーは、早速と動かすが。
《?!ちょ、ま、わ、私にっ?!》
周りを見ていなかったか、近くにいる人に当たりそうになる。
「!」
暴れるアビーの機体に、嫌な予感覚え、俺は咄嗟に旋回した。
その直後である。
《きゃぁあああああ?!》
《うぎゃぁああああ?!》
アビーとマフィンの悲鳴が上がったのは。
俺が、旋回しきった時に見えたのは両者の戦闘機が、衝突する場面である。
なお、その瞬間に、俺とほぼ同じタイミングで避けていたのは、ソード。
《ありゃぁ……。実機だったら、お陀仏だ……。》
「……だね。」
旋回しきって言うことには、実際やったら死にかねないと。
同意見だと、俺は頷いて。
《まあ、じき戻ってくるよ。ゲームみたいなもんだし。》
ゲームでよかったと、ほっと胸を撫で下ろしていたら、ソードは言ってきて。
体勢を整えて、また、水平に戻り。
俺も、合わせて水平に戻し、ソードについてきた。
《……よう、相棒!》
「?!」
戻ったら戻ったらで、急にソードが俺に対して何か言いだしてくる。
何事とつい目を丸くしていたら。
《乗り悪いな~。遊びだよ遊び!ほらさ、生き残ったじゃん?なら、つい、こう言いたくなるのさ。》
「……あ、うん。分かった。」
何だか、冗談やら、ゲームへの乗りが悪いと言われた。
とりあえず、気を取り直して、従うことにした。
《よう、相棒!まだ生きているか?》
「あ、ああ。」
《こんな大海原でベイルアウトっちゃあ、やってられないぜ!》
「……。」
始まったよ。
俺は、どう答えていいやら、困ってしまう。
《なあ。》
「!」
また、ソードが言ってきて。
注意されてしまうのかと、つい身構えてしまうが。
《知っているか?》
「……?」
いや、何か違った。
《エースは3つに分けられる。》
「……あ、うん。ど、どんな人たち?」
何か語りだしてくる。俺は、戸惑いながらも聞くと。
《鉄砲玉みたいに突っ込んで、戦局をがらりと変えるイカレ野郎。執拗に敵を追い詰めて、容赦なく喰い殺すおっかない奴。戦場を俯瞰で見て、冷静に対処するサイボーグみたいな奴。この3つだ。》
「……?」
語りだす先に、不意に古びたギターの音色が聞こえた気がする。
なぜだろうか不思議でならず、首を傾げて。
《……『あいつ』は――。》
「!」
変な言葉区切りが気になってしょうがない。
どこか、遠くを見ているかのような雰囲気さえ、感じてしまう。
「……。」
……。
―彼は、『鉄砲玉』と呼ばれたパイロット。
―『あいつ』の相棒だった男……。
……何だかつい、乗りで俺は妙な間を作り。
妙なモノローグを頭の中で語ってしまう。
ところで、ソードの言う『あいつ』って、誰?
《~~~くぅううう!その間!たまんねぇ!!!!》
「?!」
なんて思考の中で逡巡していたら、傍らのソードは、堪らなく喜んでいた。
何でだろうか、不思議でならない。首を傾げてしまう。
《あれだろ?その間、俺が切った後の間。きっと、ゲームみたいに、頭の中でモノローグ的なのが流れてさ。》
「……あ、うん。思ってた。凄いね。」
ソードが言うことには、俺がモノローグを思っていたことを当てたことで。
凄いなと思って、口にする。
《きっとそのモノローグはこれだろ?ええと、〝彼は、『妖精』と呼ばれた、パイロット。『あいつ』の相棒だった男……。〟てね!》
「……。」
俺とは違って、格好よく、俺が言ったであろうというモノローグを告げるが。
……残念ながら、少し間違いがあって。何だか惜しい。
妖精は言ってない。
しかし、指摘するのも悪く、この件について、何か求めることはしない。
そういうことにしておこうと思う。




