くーんちゃんのおべんとう!
だが、裏にある事情を考えると合点がいく。
いくけれども、その裏事情を想像して俺は、ぞっとする。
それって、ストーカーじゃ……。
「?!そ、そんな……っ!」
「!」
俺がぞっとしたと思ったなら、クーンは急に息を引っ込めて。
瞳は驚きから、悲壮の色合いに変わっていく。
……心が読まれた?
どうも、自分はそういう気はないと言いたげで。
「……お姉さん、そんな気はないのに……っ!」
「!」
何も言ってはいないのにもかかわらず、クーンは勝手に話を進めて。
それも、俺が思った通り。
だからで、悪気はないと、瞳がやがて潤んでいく。
艶やかさのある瞳が潤み、何というか、色気が増してもいて。
「?でも、クーンちゃんが思っているようなこと、思ってないよ?」
クーンのそんな様子を、よく知りやしないが。
アビーは首を傾げながらも、弁解してくれる。
「!……うふふ……。」
アビーの言葉響き、クーンは瞳の色を変え、また柔らかな笑みを浮かべる。
「だいじょ~ぶ!気にしてないわ!うふふ。」
気にしていなという言葉も添えて。
だが、どことなく嬉しさも感じられた。
ではもう、そういう気は置いてと、本題に。
クーンは、このままなのもいい加減きつくなってきたか。
組んでいた腕を解くためか、そっとエプロンの胸元、丁度、服との間に、手を伸ばしていく。
「?!ごくり……っ!」
クーンがまさぐるがため、揺れ動く胸に、俺はつい、唾を飲み込んでしまう。
「はい!」
クーンが腕を開放したなら、両手には、おにぎりが入っているであろう。
竹皮で包まれた物があり、それら、俺とアビーに見せてくる。
本当に、何か用意してくれていたのだろう。
「冷めないように、……お姉さんの体温で保温していたの。」
「……。」
「うん!クーンちゃん、ありがとー!」
「あ、ありがとう……。」
言葉付け加えてきた。アビーは、お礼を言って、包みを受け取る。
俺も俺で、ようやくアビーの陰から出て。
お礼を言い、手渡される包みを受け取った。
「!」
受け取ったなら、確かに温かい。冷めないように、保ってくれたのかも。
「……あ、でも……。」
「!」
俺が受け取ったなら、クーンは何か言い残しがあるみたいに言葉を掛けて。
クーンは何か、思案するように、口元に指をあてがい。
「……大和ちゃんは、こっちがいいかしら?」
「?!~~~~~~~~~~?!」
思い付いたアイデア、示すように。
指を今度は自分の胸に持って行くなら、軽く揉み、様子を俺に見せつけてきた。
……それはまるで。
俺がアビーの後ろから出てくるのを見計らっていたかのようで。
マジマジと見ることになった俺は、顔が急激に沸騰しそうな勢いになり。
その勢いのまま、俺はアビーの後ろにまた、隠れてしまう。
……やっぱり、そういう気があるじゃないか……。隠れながらも突っ込んで。
「?!わぁっ?!」
俺が急激に動いたために、アビーは軽く驚いてしまう。
アビーの後ろに隠れて、そのまま震えてしまう。
「……。」
「……。」
アビーは、俺が急激に動いたことに、まだ驚きを隠せていない。
思考が停まり何を言えばいいか。
一瞬の間が開いて、思考が再開したなら。
「もう!ダメだよ!また、〝毒〟使っちゃったら。それに、大和ちゃんは、あたしが守るもん。」
両手広げて、アビーは通せんぼして、注意する。
最後、俺を守ると、健気に言ってくれた。
クーンは、だが、からかうように笑ったままだ。
「冗談よ。年頃の男の子を見ると、ついからかってみたくなっちゃうの。もし気にしたら、ごめんね?」
「……。」
冗談だと、笑い飛ばしては、最後気に掛けてくれた。
俺は、静かに頷き、アビーの後ろから出てきた。
「!あ、アビー……。」
「?」
「ごめんね。つい盾にしてしまって……。」
「?ううん。いいよ!」
もう収まっただろうと、表に出てきたが。
ついアビーを盾にしたことが申し訳なく思い、俺は謝る。
アビーは、首を横に振り、何ともなかったことを喜んでいるようだ。
「……ふぅ。仲がいいこと……。嫉妬しちゃう……。」
「!」
俺とアビーがそういうやり取りをしていたなら、羨ましそうにクーンは言ってくる。
しかし、その羨ましさも、諦めに変わる。
俺とアビーが一緒に暮らしていることを知っていて。
また、見ず知らずの自分よりも、アビーとの信頼が垣間見えて、か。
「……仕方ない。……さて。」
「!」
「?」
「お邪魔虫のお姉さんは、これで帰るわね?それじゃあ。」
諦めにか、ついでに要件がもう終わったか、クーンは、お暇すると言い。
踵を返して、こちらに背を向けた。
「え、えと、ありがとう。それじゃ、また……。」
「!クーンちゃん、ありがとー!それと、またねー!」
要件は済み、帰るという段階ながら。
遅れて俺とアビーは、見送りに言葉を掛ける。
手を振って見送ると、クーンは振り向き、小さく手を振って応えた。
「あ!」
「?」
と、思ったら、足を止めて、振り返ってくる。
振り返ったなら、艶めかしく、口元に指を持ってきて、何か言いたげに。
「……大和ちゃん。」
「?」
「呼んでくれたら、お姉さん、お嫁さんに来てあげるわ?」
「?!」
「お料理も、お洗濯も、ちゃんとできるわよ。うふふふ……。」
言い残したとばかりながら、言ってくることは。
ある意味プロポーズのようなもので。
また顔を赤くして、俺はアビーに隠れてしまう。
アビーはまた、キョトンとしてしまい。
ただし、どうもまた、からかいのようだ。
そんな俺を見て、からからと笑い、自分の家路に戻っていった。
しばらくアビーの陰にいて、姿が見えなくなった時に。
安堵に一息つき、アビーの背中からようやく出た。
そんな俺にアビーは、慈愛に満ちた笑みを向けて。
「大丈夫!怖くないよ!」
そう声掛けしてくる。
またまた、盾にしてしまったことに、申し訳なさあれど、気にしている様子はない。
「アビーが、言うなら。」
俺は頷いて、アビーの横に出る。
アビーは、クスクス笑いながら、先頭に立って、帰路を歩いた。
帰路を歩み、やっと見えた古民家が一軒。その頃には、もう平気になって。
久し振りに思える、アビーの家。
特に訪ねて来る者もいなく、立ち入った様子はない。
古びた和風、古民家の佇まいは、相変わらずだ。
アビーが扉を開けると、しばらくいなかったための埃が舞い。
二人、つい咳き込んでしまった。
「……掃除しなきゃダメだったかなぁ?」
アビーは困ったように言う。
「……時間も時間だし、それに、より長くなりそうだから、誰かに頼んでいた方がいいんじゃない?」
困るアビーに、咳き込みながらもアドバイスをした。
とうに夕刻も過ぎ、すっかり夜だ。
今から掃除するのも、大変だろうし、もしこのままリオンキングダムに向かおうものなら、より長く家を空けることになり今回は諦めた方がいいと。
もし、誰かに頼めるなら、頼んでおいた方がいい。
「そうだね!」
アビーは聞き届けて、またいつもの笑顔になる。
主たるアビーが、言った後、先頭になって進み。
自分のポケットに手を入れては、何か取り出し、握り締める。
光が溢れて。
アビーのスフィアだ。夜の闇が支配する家の中を、その光が追い払っていく。
「……。」
俺も、空間を撫でるように手を動かす。俺の方からも、光が生じて。
ポケットから、いくつかのスフィアが飛び出て。
宙を舞い、光を家の隅々まで届けていく。
丁度、家の、居間の中心に当たる天井に、置ける場所があり。
俺はスフィアを動かして、その場所に載せた。
「……ねぇ。」
「?」
アビーが、俺がしたことに何か言いたそうだ。
耳を傾けると。
「すっかり上手になったね!」
「……そう?……ありがとう。」
アビーは笑顔で言ってくる。それも、可愛い子供の成長を喜ぶみたいに。
俺は、だからといって鼻を高くすることはなく、けれど、素直にお礼を言う。
「やっぱり、ウィザードだね!」
「……。」
続けては、誉れ高き名称で。
そこまでかな、自分としては自信はなく。
ただ、無下にするのもなんだ、笑みを浮かべて答えとした。
アビーと一緒に、居間に上がるなら、折角の弁当を食べようとする。
机とかはないが、行儀よく座り、丁寧におにぎりの包みを並べては。
俺もまた、同じように。二人してそれぞれの包みを開けると、大きさはそれなりの、きれいに三角形に握られたおにぎりが2つほど出てきた。
「……。」
クーンの凄さに、言葉を失う。
失礼になるかもしれないが。
見かけに寄らず、こういう丁寧なこともできるのかと、感心し。
アビーも、クーンの丁寧さに、喜びの声上げて、見つめていた。
「あ!」
「?」
と、このおにぎりに何か言いたいことでもあるのか。
思い付いたような声も、上げてくる。
何だろうかと、俺は首を傾げると。
アビーは、何だか慈愛に満ちた笑みになってくる。
「……思い出すね?」
「?何を?」
「大和ちゃんが、初めてここに来たこと!」
「!」
その表情のまま、何を言い出すかと思えば。
俺が最初に来たことのようだ。
おにぎり自体のことではないし、また、どうやら、おにぎりへの喜びに、つい思い出したかのようだ。
アビーに合わせるようだが、俺もふと思い出してしまう。
「あの時も、こんな時間に、おにぎり食べたんだよね!……握ってくれたのはエルザおばさんだったけど。」
「……そうだったね。」
思い出しながらアビーは言い。
俺も、頷く。
その思い出、その時も丁度、これほど暗い時間で。
また、お腹が空いていたこともあって、アビーが食料を取りに行ってくれたんだ。
エルザおばさんが作ってくれた、とその時は言っていて。まあ、握ってくれたおにぎりは、クーンからもらった物よりも大分大きかったけれど。
「はむっ!」
「……。」
思い出した思い出と共に、アビーはして、おにぎりを頬張った。
噛み締めた際、やはり思い出と共にか、美味しさに頬を緩ませて。
俺も同じように頬張ると、見えた具材は、……その時と同じ具材だった。
味もさることながらだが、懐かしさと思い出があてとなり。
この時の美味しさは、今までに感じたことないものになっていた。




