ざっかやさん!
村の中央付近、赴きある古民家が立ち並び。
それぞれ、色々なお店をやっている区画が見えてくる。
夕刻過ぎて、店じまいする姿も見受けられる。
それら古民家群の内、簡素ながらも、小洒落た装飾を施した家が一軒。
象られたのは、カワウソ。カワマツリさんのお店だ。
古民家風ながら、扉の小窓から見えるのもまた、らしく。
小物が、きれいに整理整頓された姿。
興味本位に覗くなら、多分引き込まれそうなほどの、不思議さも併せ持つ。
古びた戸を軋ませ入るなら。
不思議な雑貨屋の世界に、そうして引き込まれてしまう。
アビーと一緒に、戸をくぐり、その世界に踏み入るなら、つい見入り。
小窓から垣間見えた以上に、整理整頓された様々な品物。
棚に陳列、あるいは、引き出しにまでも。
覗き見ることには、小物の類。
鉛筆やら、消しゴムやら。あるいは、シャープペン、ボールペンだってある。
他、日用雑貨も陳列され。
それだけじゃない。
まるで、区画で仕切られているかのように。
がらりと陳列されている品物が変わり。
およそ見たことのない品々。
なお、記憶には、類似品として見受けられた物もあるが、構造が違うのだろう。
目に付いたそれは、銃の類。
殺意さえ放ちそうな、筒状にて。
しかれども、スフィアを媒体にした銃故、殺意の感覚は幾分薄れ、雑貨屋の持つ特異な雰囲気は、隠してしまうほど。
どうも、そういう武器の類も、扱っているようだ。
後は、よく見た、そう、見た目、懐中電灯みたいなくせに。
この武器コーナーに存在する物、レーセ。
……加えては、沢山の水晶玉。
もしかしたら、パワーストーンの類かとも思ってしまうが。
覗き見れば、自ら光を放つ水晶玉。
スフィアだった。
近づいた時に得た感覚に、より納得する。
「!いらっしゃぁ~い!!今日はもう誰も来ないかと思っていたよ!」
「!」
「あ!」
そんな中、俺とアビーを現実に戻す一声が響き渡る。
二人引き戻されて、その声の方を向くならば。
場所は、木で作られた、赴きある、かつ、計算機を備えたレジ台で。
そこに顔をひょっこりと覗かせていた、カワウソを思わせる服装に、獣の耳を持つ、年頃がアビーに近い少女が座っていた。
客である俺たちに、その瞳は輝いている。
スフィアによっても、なお輝きが増していて。
その、レジにて顔を覗かせている人物こそ、カワマツリさんだ。
……正確には、娘さん、かな。よく、店番をしている。
「ねぇねぇ!今日は何買ってくるの?それとも、〝アイギスちゃん〟の様子でも見に来た?」
「!」
話を勝手に進められるが、ある単語に俺はピンと来て。
〝アイギスちゃん〟のこと。
それは、俺が持つ盾の、量産型兵装で、姿形は、ほとんど変わらない。
以前、海岸に流れ着いていたのを、アビーが拾って。
俺の盾が言うことには、再使用には色々と直さないといけないと。
そのため、村の中で、そんなこと請け負ってくれる、カワさんの所に持ってきたという経緯がある。
「ううん!どっちでもないよ。」
「そっかぁ~……。」
俺が色々と思っている最中、アビーが代わりに、目的は違うと言って。
耳にしたカワさんは、しょんぼりしてしまった。
「……こっちこそ、ごめん。気を悪くしたなら……。別の要件でね。」
「?」
今度は俺が、目的のために、口を開き。
最初は、気を悪くしたことに、謝罪を述べて。
何を言われるか、カワさんは首を傾げて。
「……共和連邦軍に連絡取れる、とか、コネクションが、とかあるかな、って思ってね。……どう?」
そんなカワさんに、目的を言う。
「う?……ん~……。どうって、言われると、難しいかなぁ。お父さんも、お母さんも、その辺、詳しくないし。」
悩みながら、こちらの目的に、答えてくれる。どこか、難しそうだ。
「……例えば、軍とかに電話とかも?」
話を出しやすいように、俺は続けてみる。
それでも、まだまだ難しそうな顔のままだ。
「……う~んとね。広報の人にはつながると思うよ。」
「……こ、広報か……。」
共和連邦軍に連絡を取れはするが。
カワさんの答えは、広報に関わる部署になら、というもので。
復唱して、今度は俺が、悩ましく思ってしまう。
いまいちしっくりこない。
「?どしたの?」
カワさんが今度は、俺の様子に聞いてくる。
「……軍関係への連絡の件、ありがとう。ただ、何かこう、違うような気がするんだ。そう、例えば、作戦関係の人たちに連絡、とか。」
しっくりこない理由とは、広報だと何だか違う気がしてならない。
もっとこう、直接作戦に従事する部署の方が、しっくりくると俺は思い。
その悩みを打ち明けた。
打ち明けたら打ち明けたらで、カワさんはまた、余計に悩んでしまう。
「……大和ちゃん。それじゃあ、難しいよ。連絡って、電話とかで通じる相手じゃないよ。特に作戦関係者って、秘匿通信で連絡し合っているから、そういう通信を受信できる設備がある所でないと……。」
「……秘匿通信……。受信設備……。無理……か……。」
結果として、難しいの言葉で締め括られ。
互いに、悩ましい顔であった。
「通信……。通信?!」
が、俺はそれで終わらない。何か、ピンとくるものを引き当ててしまう。
通信という言葉に、ピンと来たならば。
背負っているバックパックを下ろし、中をまさぐりだす。
「?どしたの?何か、あったの?」
「あった!」
「!お~!あったんだ!」
自分のバックパックをまさぐりだした俺に、カワさんは聞いてくる。
手先に触れた時、俺は見つけたと手を抜き出すと。
そこにはシャチを象った、バッジがあり。
一見すれば、ただのバッジ。だが、裏側見れば、色々な機械が見え隠れし、電源となっているか、小さなスフィアも見える。
自由に伸び縮みさせることができる、アンテナもある。
これ、通信機だ、それも軍用の。
サカマタさんからもらったんだ。
それを、自慢げにカワさんに見せてみる。
「?!お~!これは!共和連邦・海兵隊仕様の!耐水耐圧、耐衝撃で、高感度送受信の通信機!通称〝オルカ〟!巷や、残骸でも、なかなか見つからないんだよ、これ!!」
「……。そ、そういう物なんだ……。」
見えたなら、一変して、カワさんは嬉々として、この、俺が見せた通信機について、あれこれ解説しだした。
通称も知っており、他、スペックも詳しい。
その豹変ともいえる変貌に、俺はたじろいでしまった。
「……ええと、これを使って、どうかできないかな?」
「!!貸して貸して!」
「……分かった。渡すよ。」
身を退きながらも、俺は自分のアイデアを言って。
カワさんは、聞くなり、貸してと聞いてきた。
素直に渡すと、はしゃぎっぷり一転、鳴りを潜めて。
そうであっても、通信機を見る瞳は、興奮を隠せないでいる。
その瞳で、隅々まで見ている。
「あ~……。」
「……?」
やがては、残念そうな顔になった。
俺は、首を傾げるも、内心、やっぱりかとも思ってしまう。
俺が思いついたことは、この渡された通信機で、上手く通信できないかというものだったのだが。
「……これは、短距離通信用だね。中継器がないと、遠くまで届かないよ。」
「……そう、か……。」
「すっごーいって、言いたい物なんだけどね、物自体は。何せ、通信用の周波数帯まで分かる物だから。けどね……。今、解析できる機械はないし、電波を増幅して、送信できる機械もないんだ。」
「……はぁ……。」
終始、残念そうな雰囲気で、言ってきた。
俺も俺で、残念さを感じ、肩を落としてしまう。
いいアイデアだと思ったんだけどね。
「あ、でも……。」
「?」
残念な空気漂う中、カワさんは俺と同じように、何か思いついたようで。
声を上げて。何だろうかと、俺は首を傾げる。
「通信ってほど近代的じゃないけど、ほら、鳥さんに手紙を付けて持って行くみたいなこと、聞いたことある?」
「?……まあ、聞いたことぐらいは。伝書鳩ってやつか?」
「そうそう!」
何だろうかと思えば、伝書鳩みたいなことらしい。
一応、聞いたことぐらいはある。
が、前世でのことで、もちろん、その当時、そんな方法で連絡を取り合うなんて、時代遅れも甚だしかったよ。
連絡なんて電話で、はおろか、スマホでメールに、SNSで、だ。
……それで、何かを思い付いたか。
「今ね!そんな、面白い物が入っているの!待ってて!」
「?」
異様なテンションで続けては、体を屈めて、レジ台の下に潜る。
何だろうかとまたまた首を傾げる。ここからまさか、鳩でも出すんじゃないだろうね?
「これこれ!」
「!」
見つけて体を上げたなら、その手には探していたであろう物品を抱えていた。
抱えられたそれは、両手からはみ出すほどの大きさで。
全体を通してみると、水筒かと思うほどの筒状といえばいいか、そういう形。
ただ、後方部分に、小さな舵とプロペラ。
胴体と思われる部分には、でっぱりみたいな部分がある。
……潜水艦……?そう思う。多分、その模型。
「……潜水艦?」
「そう!そうなの!これね、昔流行った玩具らしいの!この、胴体部分が、開いて、中に物を詰めたりして……。」
「!」
そうらしい。
ついでに、丁寧にその物品を説明して。言いながら、先端の部分を開く。
開くと、空洞が広がり。
言う通り、中に物が詰められそうだ。
「例えば、色んな、そうね、手紙とか入れたりして。閉じて、海に放して、念じるとね、その場所まで、海を渡って届けてくれるの!……まあ、海岸限定なんだけどね!」
「……ボトルメールか。」
「うんうん!何だか、ちょっとロマンチックだよね!」
「……そう、か?」
用途は、いわゆる空き瓶に手紙を詰めて、流すそれの用途。
ロマンチックはさておいて。
瓶とは違い、自分で動けて、かつ、場合によっては、目的地まで動かせると。
「……で、念じれば届けてくれると言ったが、スフィアがあるのか?」
「その通り!」
「なるほど。」
原理はどうであれ、スフィアが内蔵されているらしく。
なら、動かせるのも納得だ。
「もしかしたらね!これを使って、上手くすれば連絡取れるかもしれないと、思うの!」
「ふぅむ……。」
カワさんが、テンション高く続けて言うことには。
それなら、もしかすると、連絡が取れると。
俺は、そのアイデアに対し、あれこれ思考をする。




