いっしょにたべよっ!
「?!ちょ、ちょっと……!!ここで暴れないで……!と、特にアビー!!」
「えー?」
揺れに揺れたがために、マフィンは必死に近くの柱にしがみつきながらも、注意をする。
子どもたちにもだが、何よりも、アビーに。
言われたアビーは、少し不貞腐れた声を上げていたが。
表情はしかし、喜びが勝っていた。
「……はぁぁ……。」
その様子に、マフィンは呆れた溜息を洩らし、頭を抱えてしまう。
「なははは!全く、飽きないね。ま、それよりも、ほら、マフィンちゃんも、お昼、食べなよ!」
エルザおばさんは、皆の姿に笑みをこぼしながら言い。
手を叩いては場を変えてきた。
「……はぁ……。」
マフィンは、今度は気を取り直すような溜息一つ、ついて。
「……分かりました。では、食器をご用意いたします。ゆっくりしていってください。」
そう続け、広間から離れ、奥の台所へと消えた。
「?!」
マフィンが戻ってくるまでの間、視線はシンに注がれる。
注がれたシンは、緊張に体を強張らせて。
皆が、気になるのも無理はない。
何せ、昨日突然現れた人物で、見慣れないがために。
「……ええと……。」
「!」
戸惑うシン。
俺は気付き、そっと寄り添い、肩を優しく撫でる。
「……皆、多分きっと、君のこと、知りたいと思っているんだ。ほら、紹介してみて。」
「!」
気付いたことを、そのまま告げると、シンはこちらを見て、一瞬はっとした表情を浮かべたが。
俺がそう言ったなら、緊張ながら、微かに笑い、頷く。
決心したか、シンはちゃんと全員に向き直ったなら。
「……ええと、僕は、シンと言います!と、遠い遠い、サバンナの、リオンキングダムから来ました……!……その、襲われて、流されて、こ、ここまで来ました……。よ、よろしくお願いします!」
ちゃんと、自己紹介をして、挨拶の口上を述べて、頭を下げた。
「……。」
一瞬、沈黙の間が生じて。
「わぁい!!よろしくー!!」
「きゃははは!!」
「!!!」
子どもたちが一斉に騒ぎ出し、歓喜に声を上げる。
さっき注意されたにもかかわらず、また飛び跳ねては家中を揺らしてしまう。
見ていたシンは、そのテンション上昇に、ついて行けず、また身を退いてしまう。
エルザおばさん含む、母親たちはそんな健気に、笑顔し拍手で応え。
「?」
が、一方のレオおじさんは、拍手すれど、どこか怪訝そうな顔をしていた。
珍しさに、俺は首を傾げる。
「あーもー!ほらほら!マフィンちゃんが怒ってくるぞ~!」
そんな中、子どもたちが再び騒ぐのを見て、たしなめに言ってきた。
「え~!」
「い~じゃ~ん!」
言われた子どもたちは、反発した。
「……もう怒るより、呆れたわ……。って、それよりも、おばさま。お皿をお持ちしましたわ。」
「……。」
そんなタイミングで、マフィンが広間に戻ってくる。
その両手には、大量のお皿が抱えられ。
顔は、マフィンが言った通り、呆れ顔の色合い。
「なはは!……すまんね!皆やんちゃお転婆ばかりで。お皿、ありがとう。」
エルザおばさんは、子どもたちの行いを謝り。
マフィンの手伝いに感謝を示し頭を下げた。
嬉しそうに、笑みを浮かべていて。
「ま。マフィンが取り皿持って来たんだ。食おうぜ!」
「!!さんせー!」
「わーい!!」
その側に寄り、レオおじさんは手を叩き、食事を採ろうと提案してきた。
その時には、いつものレオおじさんらしい、豪快な笑みを見せていた。
さっきのが、珍しく思えてならない。
なお、子どもたちはレオおじさんの声にまたまた一斉に騒ぐ。
マフィンは、何度目だか、頭を抱えてしまう。
そうであっても、レオおじさんが言うのだ、持ってきたお皿を、並べようとする。
「!ほら!あんたたち!さっさと準備しな!」
気付いたエルザおばさんもまた、手を叩き、子どもたちに指示を出す。
「「は~い!!」」
また、子どもたちは言葉揃って。
各々動くなら、広間の大机を整えて。
さらに、マフィンが指示した、予備の机も出し、くっつけていく。
そこに、マフィンや、マフィンから受け取った取り皿を奥さんたちが、人数分並べていく。
並べられた、取り皿、席、載せる机のそれぞれ中央に、持って来た巨大なお重を置く。
「!……ど、どんな量だ?」
置いた際、やたらと重量感のある音が響くし、机が震える。
重そうだ。
一体、どれほどの量が入っているのやら、俺は、驚きに言葉を失いそうになる。
……その重量感よろしく、皆が手伝いながらお重を広げることには。
大量の料理が盛られていて。
その量、食べ放題のお店に盛られたそれかと、思うほどだ。
それぞれ、取り皿が置かれた場所に、子どもたちも含め、つき。
なお、いつもなら、がっつきそうな勢いを示す子どもたちだが、この時は不思議と静かだ。
その中の一人、長男が立ち上がり、なんと、シンの側に寄っていく。
シンは、圧巻なこの光景に、たじろいだ状態で。
どうしていいか、分からない状態であった。
長男は、レオおじさんみたいに笑い、その手を掴み、寄せていく。
「?!え……?!」
「ほら!ぼさっとしてないで、座ろうぜ!一緒に、食べよっ!」
「……。」
いきなり寄せられたことに、シンは唖然として。
長男は、笑いながら、どうやら自分たち、ライオンの輪に入れよとしていた。
シンは、だが、唖然とした状態のまま、固まっている。
「遠慮?えんりょ?しなくていいよっ!」
「一緒!一緒!あたちたち、同じ!」
「食べよっ!ねぇ!」
「なっ!」
固まってしまったシンに、子どもたちは一斉に声掛けをして、誘ってくる。
長男は、応援を貰い、首を傾げてまでも誘い続けて。
「……。」
シンは、戸惑いに固まってはいたが、レオおじさんの子どもたちが誘う。
柔らかさをも感じる温もりに、やがて表情がほどけていき。
「……うん!」
その年頃らしい、元気な笑みで頷き、この輪に入っていった。
大勢での食事風景は、やはりレオおじさん一家らしいや。
ある意味、戦場で。
ある意味、家族の仲睦まじい様子。
なお、今回は普段と違い、シン、マフィン。
そして、いつ頃からいたか分からないが、村長さんも加わって。
沢山と思われる料理も、だが、食べ盛りの子どもらであったら、あっという間。
なくなってしまう。
親であるレオおじさん、エルザおばさん及び、他の奥さんたちは、そんな子どもたちの姿を見て、慈しむかのように笑みを浮かべている。
アビーもアビーで、子どもらに負けじと、食事を頬張り。
マフィンは見ていて呆れていた。
シンは、レオおじさんの子どもらに囲まれていて。
色々と話している内に、すっかり打ち解けていた。
「?」
その様子、子どもらの賑やかな様子を、遠目に見て、優し気な表情を浮かべている親たちであったが、時折、レオおじさんは引っ掛かるような表情をしていて俺は、気になってしょうがなくなる。
レオおじさんに歩み寄り、隣に座ると。
気付いたか、レオおじさんはこちらに顔を向けてきた。
「……あ~。大体言いたいことは分かるが、……どうした?」
そんな俺に、レオおじさんは声を掛けて来て。
自身も、気付いているようで、とりあえず、といった感じだ。
「……ええと。何だか、珍しいかな、と思いまして。何か、そう、シンの言葉に引っ掛かっている……とか?」
俺は、気付かれた通りだが、気になったことを口にする。
「……。」
聞いたレオおじさんは、思案するように、顎に手を持ってきて。
「……いやさ。シンって子、リオンキングダムから来た、って言っていたからさ。どうもな、俺の脳みその、片隅に引っ掛かってね。気になっちまってよ。らしくないな?」
「……あ~……ええと。」
導き出した言葉は、自分の中に引っ掛かっている、とのことで。
らしくない、という言葉で締め括られ、俺は、答えに窮する。
「……っと。大和を困らせてもな。……あ~、何と言えばいいか、ものすごく身近で聞いたことがるような、ないようなって感じかな。」
「!」
そうなると、俺を困らせてしまうと、レオおじさんは言い換えて。
どうも、どこかで聞いたことがあるといった風に。
「う~……。誰だったかな……。俺の爺さんの、爺さんの、爺さんの……、そのまた爺さんの、あ~面倒臭い……。遠い遠い先祖の誰かが、何だか関係ある風だったような……。」
言い換えた続きとして、悩みながらも紡ぐ。
唸り声時折上げながら、思考内にもがき、言葉見付けては。
レオおじさんの先祖に、シンの出身地と関係があるらしいと。
「!」
先祖という言葉に、俺は何だかピンとくるものを感じる。
「……もしかしたら、ですよ。」
「?おぅ?」
「……例の、あの写真、ウィザードの構図の。あの写真に写っている、子どもがいたのが、まさしくリオンキングダム、だったというのは?」
「!」
ピンときたことを、紡ぐなら。
レオおじさんは、不思議そうに聞き入って。
ピンときたこと、それは、レオおじさんの先祖が、ウィザードと写っている、例の写真のことで。
その写真が撮られたのが、リオンキングダムだとするなら、という類推。
聞いていたレオおじさんは、何だか辻褄があうような顔をして。
「なぁるほど!確かにそれなら、俺も納得する。何だか、引っ掛かっていたものが、すっかり取れた気がするぜ!がははは!さすが、ウィザード!」
やがては、すっきりとした表情になり、豪快に笑う。
言葉の締めに、俺を讃えるか、誉れ高き名前を付して。
俺は、嬉しいやら恥ずかしいやら、複雑だった。
さて、昼食の賑わいは、やがて終わり。
それからは、子どもたちは元気よく外へ飛び出していく。
もちろん、その中にはシンの姿もあった。
食事を採り、子どもたちと打ち解け合った後は、本当に兄弟のように仲良く、遊びにまで、駆け出していくようになる。
レオおじさんの奥さんたちは、監督も兼ねて、子どもたちに付き添い。
アビーもまた、監督を承っているものの。
一緒に遊ぶことに念頭を置いているようで、子どもたちと同じように、駆け出して行った。
エルザおばさんは、マフィンと共に片づけをやり。
村長さんは、食事を採ったなら、そのまま家の奥に引っ込んでしまう。
広間には、俺とレオおじさんだけとなり。
ぽつりと置かれた大机に、二人向き合い、静かに座っている。




