こどもがいないっ?!
俺は、まさか、と思ってしまう。
今子供たちは、アビーと一緒に遊んでいる。
かくれんぼしているんだ。
子供たちの内、一人でもどこか、そう、間違って谷に落ちたりとかしたんじゃないか?
嫌な予感も伴って、冷や汗が出てくる。
「と、とにかく、私がこの子を診るわ。大和、お願い!」
「!!あ、ああ。」
今現在動けるのは、俺とマフィン。
アビーはそれこそ、遊びの最中で、こんな時にいない。
マフィンはさらに、それなりに医療行為もできる以上、残されたのは俺だけだ。
大役だが、俺が引き受ける。
頷いたなら、バックパック背負い、全力疾走をする。
スフィアを発光させ、全身光に包まれたなら、その疾走は、想像を遥かに越える速度を叩き出す。
世界がそうなら、世界大会さえ目指せるだろう。
あっという間に、小高い山を駆け下り、レオおじさんの家に辿り着く。
「!!」
だが、相当な速度だ、見えてきてからじゃ、制動が間に合わない。
「うぉおお!!」
俺は、制動掛けるため、体を旋回させ、背中を向けるようにする。
そうであっても、制動はなかなか掛からないでいる。
そんな折、俺が採用する方法は。
「フォトンシールド!背中に!シールドバッシュ!!!」
《フォトンシールド展開。シールドバッシュ、シールド展開後数秒後に発動いたします。》
強力な衝撃波を放ち、無理矢理制動掛ける方法だった。
背中を向けた先に、光の膜が展開され、次の瞬間、破裂する。
「ぐぅううう?!」
衝撃が背中から突き抜けていき。
強力な制動が掛かるが、同時に反発力故、体に大きな負担が加わる。
痛みさえ感じ、つい、呻き声を上げてしまう。
幸いは、誰もシールドバッシュの先には居なくて。
また、上手くブレーキを掛けられたことか、もう、家の前だ。
が、先ほど放った力によって、痛みのあまり、しばらく動けそうもない。
「うぉおおおおお?!な、何だ?!」
「何だい?!今のは。台風か?!」
衝撃と共に、大きな音も発生した。
聞きつけて、家からレオおじさんと、エルザおばさんが、驚きながら顔を出した。
「?!」
「!!大和ちゃん!どうしたんだい!!!」
俺が、痛みに蹲っているのを見て、驚き一変、エルザおばさんは心配そうな声を上げて、駆け寄ってくる。
レオおじさんも、遅れて駆け寄り。
「どうした?!」
同じように声を掛ける。
「うぅ……。いてて……。」
全身に走る痛みに、上手く言葉を出せないでいるが、こうしちゃいられないと頭を振り、痛みを払うようにして。
「お、お子さんが一人……。谷に落ちて……。流されて……。」
「?!」
「!!!!」
上手く言葉が紡げないが、なんとか必要な言葉を選び、伝えると、レオおじさんとエルザおばさんは、驚愕、加えて、エルザおばさんは青冷めていき。
「何てこったい!!!で、今どうなってる?!」
まくし立てるように言ってくる。
「ま、マフィンの家に……。」
ここでも俺は、上手く答えることができないでいるが、必要な情報は与えたつもりだ。
「……。」
エルザおばさんは、冷静になり、レオおじさんを見つめて。
「あんた!先にマフィンちゃんの所に行って!あたしもすぐ後を追う!」
指示を出した。
「!お、おう!!行ってくる!」
まだ驚愕から立ち直っていないが、奥さんの、子供たちの母親に、冷静に言われたなら、頷かざるを得ず、らしくなく、慌てながら駆け出した。
「ほら!大和ちゃん!あんたも行くよっ!」
「あ、はい……。」
見送ったなら、エルザおばさんは言ってくるものの、だが、今の俺は、体に痛みがあって、走り出すことができない。
「……ほら!お乗り!」
察して、エルザおばさんは屈んで、自分の背中を俺に向ける。
背負われろ、ということか。
「!!……でも……。」
いきなりのそれに、俺は素直に頷けないでいるが。
「あたしたちのために、駆け付けてくれたんだろ!ほら!」
「!!は、はい。……ありがとうございます。」
エルザおばさんは、ちらりとこちらを見て、微笑みながら諭す。
俺は、頷いて背中に乗る。
「ふっ!!」
「?!」
背中に背負われたなら、エルザおばさんは力を込めて立ち上がり。
一応、ゆうに中学生は越える身長と体重だ、上げるだけでも一苦労だろうに、この母親は、軽々と上げる。
獅子は獅子だということか。
「……ええと、重いでしょうか?」
俺は、不安そうに聞く。
「こんぐらい、どうってことないよ!さ、行くよ!」
そう返してくれた。言葉通り、どうってことはない様子で。
そこから、エルザおばさんは、俺を背負ったまま走り出す。
「……。すげぇ……。」
道中思うことは、俺を背負っているにも関わらず、軽々と走っていくことで。
なんと、眼前には、先に駆けだしたはずのレオおじさんの姿も見つける。
「……。速ぇ……。」
「?!か、母ちゃん?!速いっ!!!!」
「ほ~ら!!あんたも急ぐよ!」
ほぼ同時に、速いことへの驚嘆が、レオおじさんと一緒に漏れる。
どうってことはないと、エルザおばさんは急かして、先へ向かう。
どうやら、単純に獅子だから、ということじゃなく、母親だから、なのかとも思ってしまった。
そうして、全力疾走の果てに、同時にマフィンの家に辿り着くが。やけに静かで。
中は多分、マフィンが診ているのもある。
外は、そう、アビーと子供たちが遊んでいたが、ここにはいない。
まだ、遊んでいる最中なのかもしれない。
「なあ、大和ちゃん!どの子だった?」
「?!う、ええと……。」
子供が心配の、エルザおばさんは全体を見た後、背中の俺に聞いて来る。
俺は、言葉を詰まらせてしまった。
悲しいけど、長男以外俺は、誰が誰だか分からないんだ……。
一応、記憶にある限りでは、頬に傷はない。長男ではなかったと思う。
「……分からないか。んで、他に子供たちは?」
「……多分、まだ遊んでいる。」
「……はぁあああ……。」
肝心なことは分からないが、他に子供たちは、と質問を変えられる。
俺は、まだ遊んでいるんじゃないかと推測を述べた。
心配から一転、エルザおばさんは呆れた表情に変わり。
「誰がどうなったか、分からん、じゃ埒が明かんね。この状況じゃ、大方どこかに隠れているって感じだし。」
頭を抱えながら、呟いていた。
「……当たり、ですね。」
俺は、それは正解かもと、言う。
実際、かくれんぼしているみたいだし。
だが、そうなると全員を把握するってのは、骨が折れそうだ。
「……。」
隠れているなら、探すのは骨が折れる、というのはエルザおばさんも感じているようで、ジト目になり、隣のレオおじさんに、肘で突いて、何か訴える。
「?!え、俺が?!」
「……いつものやってやんな。森とか林とかに隠れていたら、それこそ探すのが面倒だろう。」
「ぬぅぅぅ……。」
レオおじさんは、エルザおばさんに突かれて、何だか乗り気じゃない様子を見せるものの、せがまれたなら、やむなくという表情をしていた。
「?」
何をするんだろう。俺は、首を傾げる。
レオおじさんは、大きく息を吸い込んだなら。
「ガォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「?!」
凄まじい音量の、咆哮を発した。
その咆哮、空気だけなく周辺をも揺らし。
木霊し、草木は大きく揺れ動き。
聞いている俺は、頭が揺れたんじゃないかと思うほどで。
いいや、それだけじゃない、村中にまできっと、響き渡るほどだ。
そうこれは、百十の王たる者の、咆哮。遥か遠くにいる仲間にさえ、届くだろう。
時に聞く者を、畏怖させるものか。
相まって俺は、凄さに言葉を失ってしまう。
やがて木霊が消える。
すると、周辺の草木がまた、揺れ始めて。
「!!」
ひょっこりと子供たちが顔を覗かせてくる。
その瞳は、不意の王者の咆哮を聞き、サプライズかと輝かせているもので。
それが、父親からだと知ったなら、なおのこと。
子供たちの可愛らしい歓声が響きながら、次々と姿を現してくる。
「あれぇ?レオおじさん、エルザおばさん!どーしたの?でも、さっきの、結構すごかったね!」
加えて、能天気な声と共に、アビーが現れて。
その両脇には、子供たちが何人も抱えられて。
「ええん。捕まっちった。てへへ。」
「ざんねーん!アビーおねーちゃんすっごーい!」
その抱えられた子供たちもまた、能天気。
なお、父親の姿を見たら、一転して目を輝かせて。
アビーは察したら、子供たちを解放する。
その子供たちもまた、歓声を上げて父親に歩み寄っていく。
「……ええと。人数は……。」
「!!あと一人いない!あの子だわ!」
「?」
レオおじさんは、子供たちの歓声につい頬を緩めながらだが、カウントしていて。
方や、エルザおばさんは冷静に見つめ、最後、あと一人がいないと突き止める。
俺はまた、同じように目で追っていたが、確かに誰か足りない。
「!」
そうだ。頬に傷のある、あの子。長男の。
「!」
思ったら、別の、丁度俺たちの背中に当たる方向から、ガサガサ音が聞こえてきては。
「うりゃー!父ちゃん取ったりー!!!」
「?!ぐぉおお?!」
影が飛び出し、その影は、レオおじさんの背中にのしかかってくる。
不意のそれに、レオおじさんは変な声を上げて。
「!」
誰だと見れば、……それは最後の一人、長男だった。
レオおじさんの背中に上り、にんまりと屈託なく笑っている。
「きゃははは!!大和兄ちゃんとお揃い!!」
言っては、歓声を上げる。
「……。」
見ていた俺は、急に来た平和の情景に、戸惑ってしまう。
「あー!いーな!いーな!」
「あたちもあたちも!!」
平和な情景において、子供たちは羨ましそうに言ってきて。
「!あの、エルザおばさん!……あ、ありがとう……。」
気付いた俺は、エルザおばさんの肩を叩き、合図を。
「!……っと、忘れてた!」
ついその情景に気を取られていたが、背負っていることを思い出し、エルザおばさんは、屈め、俺を地に下ろしてくれる。
少しバランスを崩しながらだが、俺は地に立ち。
「……うん。大丈夫みたいだ。」
地面に足踏みして、体の状態を確認したなら、背筋を伸ばす。
「?!あっ!!こらぁ!!!」
「……あ。」
俺が地面に立ったのと同時に、隙を見てか、子供たちがエルザおばさんの背中に乗っていく。
エルザおばさんは、不意を突かれたと声を上げてしまい。




