おつかれのあとに、さらわれちゃった……
「……あ。まあ、そういうこった。……ちょっと、今日はやり過ぎたかもしれない。そこは、すまない!」
《うぁははっ!そのとーり!笑い飛ばせよ!いつもみたいに!気ぃ悪くしたなら、ごめんな!》
追従に、ビリーさんやトムさんも。笑い飛ばすような勢いさえあって。
やり過ぎたと皆謝っているじゃないか。
《それに、だ!》
「!」
また、トムさんは、慰めに……。
だとかは分からないが、何かを用意してもいるみたいであり。
画面を動かして、また、ソード専用とするウィングビットに向けるなら。
徐に、文字の描かれたところを摘まむ。
引き上げるなら、シールのように捲れ上がっていく。
その下には、別の文字が描かれていて。
『戦闘機好きの空の大バカ野郎 羽がもげても飛んでやがる』……と。
《どーだ。》
見せつけて来ては、自慢げに言ってきた。
「……?」
なお、それを見せられても俺は、どうとも言えなく、首を傾げる。
侮辱なのかどうかも、分からないが。
「……けっ!」
「!」
だがそれは、ソードには通じている。
悪態をついたような声を上げるが、吐き捨てる感じではない。
途中、笑みを浮かべる様子も見れたことから、……何かを知ったらしい。
その理由は、不明だが。
おそらく皮肉に、笑っている。
「……腹立つな!……へへっ!どーせそうですよ!」
皮肉に笑ったなら、もう怒りはどこかへ行っていた。
その表情はもう、いつものソードだ。
「……ほっ。」
俺は見届けて、安堵に胸を撫で下ろす。
その、安堵の雰囲気は、他にも広がっていく。
「……単純な奴……。まあ、らしいが。」
ビリーさんは安心しつつ、ぽつりと聞こえないようにそう言っていた。
なお、俺には聞こえていたが、当の話題の人ことソードは、聞こえていない。
「……流石、ウィザードね。大和。」
「……。」
後ろのマフィンもまた、安堵に言ってくる。
こんな状況でさえ覆すと、それには褒めもある。
言われて俺は、少し照れ臭く感じてしまった。
「じゃあ、気を取り直して、やりますか!!」
「!」
すっかり元通りのソードは、こんな中、声を上げて言ってくる。
気を取り直して。
また、ウィングビットを使って哨戒掃海活動を自ら率先して言ってきたのだ。
「……。」
そんなソードの意見、否定することはない。
もう安心だと感じるなら、そっと俺は、ソードの側を離れていく。
「じゃあ、私たちも席に着きましょうか。」
「!」
俺が、踵を返して、戻ってくるならマフィンもまた、早速と言ってくる。
先ほど言っていた。
自分たちもまた、その哨戒掃海行動に参加する、したいということで。
「……だね。行こう。」
「うん!じゃ、早速!」
マフィンが言うならとして、俺もアビーも頷いて。
ソードの行動に追従する形だが。
それぞれ、用意されたカプセルの中に搭乗していく。
カプセルが閉じるなら、また、一瞬の暗闇が。
《おーい!準備できた?》
「!え、ええ。」
その状況にて、ビリーさんが言ってくる。
俺は、頷きを示すなら。
《よっし!じゃあ、始めっか!》
「!」
俺の頷きを感じて、ならばとビリーさんは操作して。
やがてまた、明るくなる。
眼前に広がるのは、飛行甲板。
トムさんが見えて、色々と操作していた。
発艦準備が整ったとして。
トムさんは親指を立てたなら、合わせて射出が行われる。
「!」
圧力が伝わり、やがて俺の視界は、海原に放り出される。
《ん~じゃ!いっちょやりまっか!!》
「!」
そんな俺の視界の横から。
皮肉交じりの文言を描かれたウィングビットが現れては、通信をしてくる。
ソードだ。
いつものらしい、そんな口調。気分も向上しているようだ。
「……だね。」
俺は、ソードのそれには、頷きで応えて。
《……また、これに乗るのね。……ふぅ……。まあ、お手伝いだし。》
《わーい!たーのしー!!》
「!」
後ろから、マフィンやアビーの通信も来て。
レーダーといい、また、俺の左右に、展開してきた。
心強く思い、同じく、頷きで応えて。
そうして、揃って海原を飛行する。
……海原を飛行したが……。
今回は残念ながら、特にこれといったことはなく。
ただ単に、周辺海域を遊覧飛行しただけに終わってしまう。
飛行を終えて、カプセルから出るなら、ソードの方は面白くなさそう。
ビリーさんやトムさんは、がっかりしていた。
アビーは残念な様子を見せていて。
マフィンは、少々ほっとした雰囲気を出していた。
俺は、マフィン同様、ほっと胸を撫で下ろす。
トラブルがなくて、よかったと一息。
がっかり気味な隊員さんたちと別れて、そうして俺たちは自室に戻る。
自室に戻ったなら俺は、似つかわしくなくベッドに横たわって。
「……うぅぅはぁぁぁ~……。」
疲労を、とうとう口から出してしまう。
マフィンが感じた通り、肉体に負担はあり。
結果として、相当な疲労感を感じてしまっていたのだ。
戦闘機の飛行ってのは、こうも疲労するものなのか。
初体験だが、検証も何もできないでいる。
「……大和お兄ちゃん……。……ええと、ええと。」
「!」
と、横たわった俺に向かって、シンが声を掛けようとしてきた。
向いて確認するなら、言いたげなそれは。
遊んでとかではなく、どこか、労いのための言葉を模索してもいる様子だ。
察して俺は、そっと笑みを浮かべて手を伸ばしてやると。
「シン。お疲れさまって言うんだぞ、ここは!」
「!」
シンの後ろから、レオおじさんが顔を出して言ってきた。
二人して注目していると、にぃっとレオおじさんは笑う。
「!うん!」
レオおじさんの言葉に、頷いたならシンはまた、俺に向き直り。
「大和お兄ちゃん!お疲れさま!!」
「!」
ついに、労いの言葉を述べた。
とびっきりの、子どもらしい屈託のない笑顔を添えて。
「……ありがとう。」
俺は、その子どもらしい可愛い笑顔につられて。
こちらもそっと笑みを浮かべては。
シンの頭に手を伸ばして、その頭を撫でてやる。
「!」
すると、シンは恥ずかしそうにしながらも。
最後には笑って、撫でられた。
「がははは。お前さんは、本当にこいつの兄貴みたいなことをしているな!」
「!」
レオおじさんは、その和やかさに、笑みを浮かべながら言ってくる。
「俺たちの子供よりも、いい子かもしれないな!」
「……。」
続けては、自分たちの子どもよりも、いい子かもしれないとして。
けれど俺は安易に頷かず、首を横に振り。
ちらりとシンを見てはまた、レオおじさんを見る。
「そうじゃないですよ。」
「お?」
そうして言うことには。レオおじさんは、意外そうな顔をする。
「皆、シンにエールを送ったりしていたじゃないですか。皆十分以上に、いい子だと思いますよ!」
「……。」
レオおじさんのお子さんたちも、十分いい子だということで。
耳にしたレオおじさんは、沈黙。やがて、何だか嬉しそうな笑みを浮かべる。
「がはははっ!やっぱ、俺たちの子供だけはあるな!」
「ええ。」
嬉しいか。
いつも以上に嬉しそうに笑みを浮かべては、言う。俺は、同意に頷いた。
シンもまた、つられて笑みを浮かべて。
この場は、笑みを中心とした、素敵な空間へとなった。
だが。
「?!」
「お?!」
水を差すような音が、隣から。
短いテンポの駆け足と共に。
急に扉が開く音と、何が行われているか分からないが物騒な音が響いてきた。
何事と思い、体を上げ。
加えて、自分のバックパックを手に。
かつ、レーセにまで手を掛けて、ベッドから飛び起きた。
レオおじさんは、何事だと、顔を歪めて、警戒する。
なお、シンは、笑顔一転、不安そうな顔となる。
俺は、疲労している体に鞭打ってまでも。
素早く扉に飛び移り、ノブに手を掛け、そっと扉を開く。
「!!おい!大和?!大丈夫か?」
「!……ええ。大丈夫です。疲労程度なら、まだ。」
その途中に、レオおじさんが案ずるように言ってきたが。
俺は、まだ大丈夫だと頷いて示した。
そうして、外の様子を伺うなら。
「!!」
途端、ドカンと言う、強い音が響き。
つい飛び退きそうになったが、視界を外すことなく、見据えるなら。
エルザおばさんがいて、その拳を壁に突き付けていた。
その体の向こうには、誰かがいるみたいだが、よく見えない。
分かっていることは、エルザおばさんが壁を殴ったということと。
誰かを捕まえていること。
「二人をどこへ連れて行く気だい?!!」
「!」
その捕まえた人に、聞いてはいるようだが、らしくない、きつめの怒号だ。
「ひぃぃ!!つ、つおい……!!」
捕まえられた人は、つい、悲鳴を上げている。
「!!」
それで、収まることはない。また、エルザおばさんは壁を殴る。
「ひぃぃ!!ちょ、ちょっとした協力ですよ!!ええと、我々は、いつでも対処できるように、定期的に訓練してるんですよ!!こ、今回はちょっとした、訓練の一環として……。ええ、その、占領時対応訓練でして……。」
「……。」
すごまれた挙句、どこかの隊員さんのようだ。
説明をしてはくれる。
……話が本当なら、またまた突然だな、と言いたくもなるが。
「だったら何で……!!」
「!」
それで、話が終わるというわけでもない、続いていく。
「何で、アビーちゃんや、マフィンちゃんを拉致するんだ!!!」
「?!」
すごんだ勢いで紡がれる続きには、驚いてしまう。
どうも、アビーやマフィンを拉致したらしい。
何でまたと、内心思ってしまう。
「!」
「……やけに騒がしいなと思ったら、母ちゃんが怒ってら……。うぇぇ。」
そのエルザおばさんの怒号は、こちらの部屋にも響いていて。
聞きつけたレオおじさんは、上から首を出して見にきた。
口調が、ぞっとしているようでもある。
「……あんな母ちゃんだと、この世の終わりだぜ……。」
「……?それは、また……?」
レオおじさんは呟くも、怯えは隠せない。
なぜだろうか、首を傾げていると。
「……うちじゃ、飯抜き。」
「……はぁ。」
「……場合により、ボコボコ。うぅ?!古傷が疼く……っ!」
「……ええと、お、お大事に……。」
その怯えの原因は、ご飯抜きに次いで、場合により喧嘩になると。
また、古傷が疼くか、呻き声を付け加えてきた。
俺は、この状況といい。
把握しきれていないがために、曖昧ながら、そう言わざるを得ない。
視線を戻して、エルザおばさんに。
「ひぃぃ!!い、いえこれは、ちょっとしたレクレーションに協力をしてもらいたく……。」
隊員さんが、理由を述べていることには、何やら、協力のようで。
「待ちな!」
「?!」
言われたことに、エルザおばさんは待ったを掛ける。
「それだったら、何で素直に言わないんだい。あと、あたしだっているだろ、言ってくれりゃ、何だってやったさね。」
待ったを掛けたついで、エルザおばさんも冷静になり、言ってきた。
素直に言えば、別に協力しないわけではないと。
「……いぇ、これには理由がありまして……。」
「?どんなんだい?」
対して、隊員さんは、しどろもどろになりながら、何か言いたげである。
何でだろうかと、エルザおばさんは促すと。




