直くんは宇宙一素晴らしい
「百子、俺ってどんな人?」
ランチタイム、直くんにそんな事を言われる。入社二日目。なんとなくランチタイムは息をつける。
(百子って。ふふ。今はちょっぴりプライベート。)
「直くんはね。宇宙一素晴らしい。」
本田百子、嘘は言いません!
「いや、そうじゃなくて…」
なんだって!信じられていないではないか!
「直くんはこの世の神秘!優しい、かっこいい、真面目、律儀、あっ!昨日のタクシー!」
忘れてた。昨日は直くんマンに助けてもらいっぱなしだった。
「直くん、いつも私を助けてくれてありがとう。」
今日の直くんはなんだか元気がない。
今日の午前中も〝お兄さんの弟〟を見に入れ替わり立ち代わり人が集まってた。
「…ありがとう、百子。」
「ん?」
「百子といると元気になる。」
!な、直くんったら〜。照れるじゃない。
「ふふ、直くん大好き。」
ここは会社。小さな声でお互い喋る。
✽✽✽
「本田さん、これから営業に出るんだけどついてきて。」
ランチタイムが終わって午後一。高田さんから声をかけられた。
「はい!」
直くんや他の子達は声をかけられていない。私だけ。
(私営業向きなのかな?できれば総務部とかに本採用されたいんだけど…)
だけど今は営業部。会社全体を知るための大事な研修期間。頑張らないと。
✽✽
「イテテ。」
昨日の靴擦れが響いております…。
「本田さん、大丈夫?」
「すみません、高田さん。足手まといになって…」
せっかく声をかけてくれたのに…
「とりあえず今日は外出るの初めてだし、このくらいにしておこう。休憩がてら、一休みして戻ろう。」
そう言って近くのコーヒーショップに入る。高田さんがご馳走してくれた。(ヤッター!)
「これが営業のいい所。休んでても仕事してるって思われる。」
「あはは!高田さん、上手ですね!」
こんなこと言う人には見えなかった。
「本田さんは素直でかわいいね。」
「ありがとうございます!よく言われます!」
「そこ謙遜するところ。」
「すみません!」
なんだか冗談が言い合える。楽しい。
✽✽
「ただいま戻りましたー。」
「戻りました!」
休憩も終え、会社に戻って来た。
「本田さん明日も宜しく。」
「はい、是非!」
楽しかった。
「いいなー。本田さんが一番乗りか。」
同じ新入社員の子に言われる。
「へへーんだ。良いでしょー。」
テンション高い。私。
「わー。嫌味だー!」
同じ新入社員の子達とも打ち解けて笑い合える。楽しい!
✽✽✽
二日目の仕事も終え帰るだけ。
直くんはやっぱり今日は元気がない。
(直くんと話したいな。)
私は直くんにとって頼りになる存在じゃない。それはわかってる。
だけど、直くんのお父さんとお母さんにも伝えた。
直くんを幸せにするって。
元気がないなら元気にしてあげたい。支えてあげたい。
そばにいてあげたい…
「直くん、お仕事終わった?ちょっとお茶でもして帰ろうよ!」
そう思って、直くんに声をかける。
「…平日はまっすぐ帰らないと。」
ん?あ、
〝おっ、じゃあ平日はまっすぐ帰ってこれるな!〟
パ、パパのバカ〜!!
「直くん、気にしなくっていいって!あんなの嫌がらせだよ!」
「約束した以上は守らないと。」
なんて真面目な!
「いいって!大丈夫だよ。パパだって仕事で遅いんだから、バレないよ!ママには口裏を合わせてもらうから!」
直くんのそばにいたいのに!
「…。」
「直くん?」
あれ?
「俺のせいで百子に嘘をつかせたくない。」
あ…。
「…俺は百子にとって、親に嘘をつかせる様な存在になりたくない。」




