未来に向かって
新章スタートです(*^^*)
「百子さんとお付き合いをさせて頂いております。三井直之と申します。」
な、な、な、直くんが!直くんが!!
私のパパとママに挨拶してくれてるー!!
大学を卒業し、来週から社会人となる。
私も直くんも、直くんのお兄さんの会社に就職。
ずーーっと一緒と浮かれていたら、直くんが
「もう社会人になるんだし、さすがに挨拶位はしとかないと。」
なーんて言ってくれて。
けど、なぁ。ママはいいとしてパパがなぁ。
直くん無傷で帰れないかもよ?
「で?」
日曜日のお昼過ぎ。直くんが私の家に挨拶に来てくれたのに、パパが無表情で直くんに返事をする。
私、プツン。
「ちょっと!パパ!!せっかく直くんが挨拶してくれてるのにその無表情はないでしょ!!」
私の感動を取らないで!!
「も、百子…」
直くんが焦って私を静止する。
「!!君はうちの百子をいつも呼び捨てにしてるのか!?」
「え?あ!申し訳ありません…」
「パパ!!直くんに謝らせるなんてどういうつもり!?」
「百子は騙されてるんじゃないのか!?何が付き合いだ!俺は認めん!!」
「パパ!!」
「さあ〜皆で直くんが持って来てくれたお菓子を食べましょう。」
ギャーギャー言ってたらお茶を用意していたママがやって来た。
ヨシ!パパを言い含められるのはママしかいないわ!
「あなた、ここの最中好きでしょう?直くんわざわざ買いに行ってくれたの?並んだでしょう?」
そうよ、ママ。直くんの良い所をパパにお伝えして!
「あ、百子さんからお父様の好物だと伺いましたので…」
やーん。敬語かっこいい!大丈夫!ちゃんとボイスレコーダーは動いてるわ。(パパの声は後で編集してカットしよう!)
「どこの馬の骨か分からん君に父と言われる筋合いはない!」
あ!?
「…申し訳ありません。」
「もーあなたテレビの見すぎよ。」
そうよ。ママ、言ってやって!
「直くんはね、幼稚舎から大学までずっと百子と一緒でね。信頼もおけるし、きちんとした真面目な好青年よ?」
ママ!分かってるじゃない!愛してるわ!!
「こんなことになるから、百子を女学校にやるべきだったんだ!!」
「ほら、父親参観の時に会ったことあるでしょう?いつもお兄さんがいらしてた…」
ママはパパを気にせず喋る。強い!
「ん?ああ。三井くんか。彼は立派な男だ。」
でしょう、でしょう。分かってるじゃない。
「言っとくが君じゃないぞ。お兄さんの方だ!」
あ!?
「若いのにしっかりして、礼儀正しいし、頭も切れる。仕事で会った事もあるが、彼はとても有能だ。あの年であれだけの会社を動かしているんだからな。」
パパがお兄さんを褒める。
「ありがとうございます。伝えておきます。」
あ、これ直くん傷ついてる。お兄さんと比べられるの嫌だよね…
「ね、その弟さんよ?バッチリじゃない。」
ママ…
「私は今、三井くんの…お兄さんの話をしただけで君の事ではない!!」
「パパ!!」
「…存じております。」
「お兄さんは若くして働いて苦労してるのに、君はうちの百子をたぶらかして遊んでいたんだろう!?」
「パパ!!もういい加減我慢出来ないわ!!さっきから何なの!これ以上直くんに何か言ったら一生口聞かないからね!!」
「な、何だと!?」
「百子、落ち着きなさい。」
「落ち着いてられないわよ!?せっかく直くんが私の為に挨拶に来てくれたのに!わざわざ飛んで火にいる夏の虫よ!?これで愛想尽かされたらどうするのよ!やっと彼女にしてもらえたのに!!」
「…やっと彼女?」
あ。
「おい!貴様本当にうちの娘を弄んでるのか!?ええ!?君には分からんだろうがな!百子はうちの大事な大事なひとり娘なんだぞ!!分かってるのか!?」
や、やっちゃったー。な、直くんがやられる〜!
「…お父様…あ、えっと、本田さんのお怒りはごもっともでございます。そう思われても致し方ないと思います。」
「ふん、認めるのか。」
「…その、私にとりましても百子さんは大切な女性で、一度たりとも不純な気持ちで接したつもりはありません。」
な、直くん…
「本日、こうしてお時間頂きましたのも、それをお分かり頂き交際を認めて頂きたいからでございます。」
直くん、私…
「まだ、大学を卒業したばかりで不信に思われるのは充分承知の上で本日参りました。ですが、百子さんを大切に思う以上、百子さんのご両親にも誠実でありたいが故でございます。」
泣いてもいい?