短編 直くんの小さなとき
お兄ちゃん視点です。オチビ直くんです!
宜しければ、別小説〝お兄ちゃんのこれまで〟と併せてご覧頂けると嬉しいです(*^^*)
三井結仁14歳、俺には弟がいる。4歳の直之と生後3ヶ月の貴将。
普段は留学していて日本にいないが、今は帰国中。
久しぶりに会った直之は大きくなっていて子供の成長は早いなーと思った。
―コンコンコン
「お兄ちゃーん」
自室にこもって勉強していると部屋をノックされた。この声は直之だ。
勉強していた手を止めて、部屋の扉を開ける。
「直くん、どうしたの?」
直之の目線に併せてしゃがみ、問いかける。
「うちに赤ちゃんがいる。」
…?もう3ヶ月一緒にいるのでは?
「そうだね。直くんお兄ちゃんになったんだよね。」
「お兄ちゃんは、ここ。」
そう言って、直之は俺を指差す。…子供の言葉は理解が難しい。
直之は続ける。
「…直くん、お兄ちゃんじゃない。お兄ちゃんは、ここ、いる。」
んー?分からない。
「そうだね。お兄ちゃん、ここにいるよね。」
とりあえず、肯定したらいいかな?
「直くん、お兄ちゃんじゃない…」
?
「赤ちゃん…いらないもん。」
そうか。分かった。
いきなりやってきた弟をまだ受け入れきれてないんだろうな。
「そっか。」
生後3ヶ月の貴将は手がかかるし、目も離せない。これまで一身に集めていた両親と大人の愛情が二分されて貴将にも向けられていることが寂しいんだろうな。
分かったけど、なんて言ってあげたらいいんだろう?
悩んでいると直之が喋り出す。
「直くんのだもん。」
…何が?
直之が続ける。
「お父さんもお母さんも…直くんのだもん。」
落ち込んだように言う。そうか…
「そうだね。お父さんもお母さんも直くんのお父さんとお母さんだからね。」
貴将に取られた気がしているんだろうな。
「なのに貴ちゃんいる。」
…そうなんだよね。
「貴ちゃんいたら嫌?」
「…うん。」
どうしたものか…
「直くんは貴ちゃんいない方がいい?」
「……うん。」
あ、声が曇った。これは本心じゃないな。
「じゃあさ、直くん。お兄ちゃんもう少ししたらまたバイバイしないと行けないから、お兄ちゃんが貴ちゃん連れて行こう。」
「…え?」
「そしたら直くんお父さんとお母さんとずっと一緒だよ。」
「…貴ちゃんいなくなるの?」
ちょっとびっくりしてる。これは上手く行きそうだ。
「そうだよ。直くん、貴ちゃんいなくなっていい?」
「ダメッ!!」
良かった。
「そうだよね。直くんの弟だもんね。」
「おとうと…」
「そう。お父さんがいて、お母さんがいて、直くんがいて、貴ちゃんがいるの。」
それを家族という。
「お兄ちゃんも。」
「ん?」
「…お兄ちゃんもいる。」
「…そうだね。ありがとう、直くん。」
直之は優しいな。
懐かしい出来事を思い出した。まだ小さな直くん。
かわいいかわいい直くん。
…今度、百子さんが来たらこの話をしよう。
直之の小さなときの話は好きみたいだし。嬉しそうに聞いてくれる。
よし、
「直くん、今度また百子さん連れておいでよ。」
【おしまい】
そして 短編 予想通り の流れになるんだろうと思います(笑)