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短編 酔っ払いももちゃん

短編ですけど、長いです(^_^;)


成人式も終え、私達はもう立派な大人だ。


〝よし、お酒を飲んでみよう〟と直くんと愛梨と山内くんとで居酒屋にやってきた。


(カタカナが色々並んでいる…)


ビールは大丈夫。分かる。日本酒?焼酎と何が違うんだろ?


何を頼んだらいいのか分からなくてメニューとにらめっこ。


「本田ちゃんはさ、とりあえずこのカクテルの中から選んだら?」


山内くんが提案してくれる。


「百子はとりあえず、カシスオレンジくらいから始めた方がいいわよ。それにしなさい。」


愛梨が決めてくれる。お母さんみたい。


「はーい。お母さん。」


「こんな面倒くさい子、産んだ覚えはないから。」


「ひどーい。」


冷たい。愛梨様。


「愛ちゃんがお母さんって事は…俺がお父さんか!本田ちゃん、俺の事はお父さんと呼びなさい。」


「いや。」


「百子はっきり言いすぎじゃ…」


ここに来てようやく愛しい直くんが喋る。うふ。大好き。


「直はビールな。よし、注文しよう。」


私と直くんは決めることなく山内くんが注文してくれた。



「おおおお美味しい〜!!」


乾杯して一口。甘いそのお味に感動。


グビグビ。どこまでも飲めそう。グビグビ。


「百子、少しづつ飲みなさい。」


愛梨に止められる。


「お母さんは過保護だなー。」


美味しく飲んでるのに。


「だから産んだ覚えはないって。」


「だから本田ちゃんは俺の事を…」

「おかわり〜!!」


山内くんの言葉をさえぎり言う。






✽✽✽



なんか、ふわふわ。気持ちいい。ぽやーっとする。


「三井がちゃんと止めないから。百子完全に酔っ払いよ。」


「そうだよ、直。愛ちゃんの言うとおり!!よっ!愛ちゃん!日本一!」


「あんたも酔っ払い。もう飲むのやめて。」


愛梨と山内くんの会話が遠くで聞こえる。なんで?


「百子。ほら、水。大丈夫?」


直くんの声がするー。幸せ〜。


「飲ませて〜。」


体に力が入りません。


「ヒューヒュー!いいなー直。俺も愛ちゃんに…。」


「やめんか。」


やっぱり愛梨と山内くんの声が遠い。


「…百子。」


直くんの声しか聞こえなくなった。


「直くん、お酒美味しいね。」


「酔ったんだろ?」


「うん、直くんに酔ってる。」


「…。」


「ちゃんと聞いてる〜?」


もう、直くんったら!

目の前のお水を一気に飲み干す。


「ずぅ〜〜っと昔から、直くんに酔ってるんだから〜!」


「百子、分かったから。」


分かった?


「分かってない!分かってないぞー!直くんはちぃっとも分かってない!!」


いつだって私の気持ちの方が大きい。


「私はこぉんなに直くんが好きなのに!直くんは私のこと爪の垢位しか好きじゃないもんねーだ。」


「百子。」


あ、やばい。怒らせたかな。


「直くんのばぁーかー。」


なのに止まらない。ふわふわ。口もふわふわと喋りだす。どこまでも飛んで行けそうなくらいふわふわしてる。




✽✽✽


「百子、帰ろう。」


直くんの声が聞こえて、ハッとして覚醒。ちょっと寝てた?意識飛んでた?あれ?ここどこ?あ、居酒屋さん…。


「あ、良かった百子起きた。もう、カクテル二杯で酔いすぎ。」


「愛梨…私寝てた?」


なんか記憶が曖昧。


「んー?落ちてたのは2分くらいじゃない?」


そ、そう。なんか長いこと寝てたような…。


「三井、百子大丈夫そうよ。あと宜しくね。」


「うん、じゃあ山内、宜しく。」


あ、山内くんもなんか足がおぼつかない。




酔い冷ましに直くんと歩いて帰る。なんかまだ少しふわふわしてる。


「直くん、お酒美味しかった。また飲みたい。」


「…。」


あれ?ダメなのかな?


「直くん、またお酒飲みに行こうよ。」


「…考えとく。」


はぁー?


「なんで?」


「酔った百子に度肝を抜かれるから。」


ん?


「私何か言ったの?」


全然覚えてない。


「…覚えてないならいいよ。」


…これは何か言ったな。


「直くん覚えてるんでしょー?」


お酒のせいかな?語尾が締まらない。


「ねぇー直くんってばぁ!教えてよー。」


あれー?なんか私、猫なで声しか出てこない。


「百子まだ酔いが冷めてないだろ。帰ろう。」


なんか直くんがよそよそしい。


「冷めたもん。直くんが冷たくするから。」


「…俺も百子に酔ってるから。」


!!ほんと。直くん酔ってる。こんなこと言うなんて。


「分かってもらえるように、頑張る。」


へ?どういう事?



✽✽✽


あれから直くんは家まで送ってくれて、―――朝。


「あ、頭がガンガンする…」


これがお酒か。もう二度と飲まない。次の日こんなにキツイなんて…


“ブーブー♪” 携帯のバイブが鳴る。愛梨だ。


「もしもし?」


『あ、百子?起きれた?』


お母さんは優しい


「うん、今起きた。」


『…ちゃんと三井にフォローしといた方がいいわよ?』


「ん?」


なんかあったかな?


『覚えてないの?あれだけ三井にクレームつけてたのに。』


んー?…あ。昨日の事が鮮やかによみがえってきた…。やばい。私直くんにとんでも無いことを!!


「あ、愛梨!思い出しました!私、直くんにとんでもないことを!ちょっと直くんに電話します!ありがとう!!」


愛梨との電話を終える。


ど、どうしよう〜!!!






『はい?』


慌てて直くんに電話をする。


「あっ!直くん!起きてた?良かった!あの…えっと…」


何から謝ればいいのやら…


『百子、起きれた?二日酔いしてない?かなり昨日酔ってたから。』


直くんは何事もなかったように話してくれる。優しい。


「頭がガンガンしてたけど、それ以上にびっくりして…」


『びっくり?なんかあった?』


あれ?直くん覚えてないのかな?直くんも酔ってたとか?


「直くんにとんでもないことを言いまして…」


けど、謝っておこう。私、直くんに〝バーカ〟まで言った。


『…でも、本心だろ?』


…やっぱり覚えてる。恐い。本心…半分。なんか勢い半分。そんな感じだった。


「お、怒ってらっしゃる?」


直くんはちゃんと私の事を思ってくれてる。それなのに私…


『怒ってはないよ。…百子が普段思ってた事を聞けたなって思ってる。』


優しい。直くんは天使だ。


『昨日、楽しかった?』


「あ、うん!とっても…」


『じゃあ、良かった。』


…。


「直くんは?」


ちょっと聞くの恐い。


『酔った百子が見れて良かった。だけど、俺以外の前でお酒は飲まないようにお願いします。…強制は出来ないけど。』


「なんで?」


『…百子に酔うから。』


は?


「どういう事?」


『…俺以外の男が百子に酔うだろ。』


!!


「な、何をおっしゃる。」


直くんに思いもよらないことを言われてドキドキ。


『無自覚みたいだから、ますます危ない。』


お酒って危険。飲んだその時は楽しくてふわふわで、次の日、頭が痛くて後悔に襲われる。


そして何か危険な事をしてしまったんだろう。


もう飲まない。あれが最初で最後。


でも、直くんの前では飲んでいいなら、また飲んじゃうかもしれない…


「私は!直くんが好きなんだからね!!?」




【おしまい】

酔ったフニャフニャももちゃんに直くんは自分を抑えるのに必死だった事と思います(〃艸〃)

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