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ももちゃんの進路


季節は二年過ぎ、小学校6年生。

直之とは話しかければ、返事がくる。そんな関係が続いていた。

5年のとき離れたクラスは6年でまた同じになり、百子は毎日ウキウキと過ごしていた。


卒業してもエスカレーター式のこの学校はほとんどの生徒が中学、高校、大学へと進む。


百子は直之とずっと一緒だと安心していた。




「百子、少し良いか。」


珍しく仕事から早く帰ってきた父に呼ばれ、リビングへと行く。母がお茶を出してくれた。


「百子、中学なんだがな。女学校に編入しないか?」


思いがけない言葉に頭が真っ白になる。


「えっ!ヤダ!どうして!?今のままがいいわ!」

「大事なひとり娘を男がいるような学校にはやれん!」

「何を言っているのよ!?学校よ!?私、絶対外部受験なんてしないから!」


勢い良く立ち上がり、走って部屋へ戻る。


父は頑固だ。本当に女学校に行かされるかもしれない…


(直くんと離れ離れになるかもしれない)


その事が百子の脳内をしめる。心臓がバクバクとうるさい。


「直くん――。」


涙が止まらなかった。



――コンコン


誰かがドアをノックする。9割相手は分かっている。母だ。


「百子、入ってもいい?」


やはり、な展開に返事をしないでいると、母は入って来た。


「私、入っていいなんて言ってない。」

「入らないでとも言われてないわ。」

「…ママなんてキライ」


母は気にせず、百子に話しかける。


「女学校の方が家からも近いじゃない?今のまま進級して、何かしたい事があるの?」

「…。」


したいことはただ一つ。直之と仲良くなりたいのだ。


そんな勉学関係ない理由など言えない。


「…友達いるし。」

「同じ女学校を受けるお友達もいるでしょう?」


…そう。百子と仲良しの友達は両親とも仲が良く情報交換している。友達の半数は女学校に行くのだ。


「百子、百子が離れたくないお友達は三井直之くんのこと?」


バッと母を見る。何故分かったのだ。気づかれたのだ。


「PTAの時ね、直之くんのお兄さんが挨拶に来てくれたのよ。〝いつも弟が休んだ時プリントなどを届けて頂きありがとうございます〟って。聞けばうちと反対方向じゃない。ママは鋭いんだから、百子の考えてる事なんてお見通しよ。」


百子は顔を真っ赤にする。


…が、次の言葉で自分がいかに一方的だったのかを知る。


「直之くん、ご両親を事故で亡くされたそうね。PTAに若い男の人が来てるから気にはなってたのよ。お兄さん〝僕が保護者です〟って言っていたわ。」


確かに、百子が休んだ直之の家に口実を付けて通ったのは一度では無い。クラスが別れた5年の時も、何かしら理由を付けて行った。

しかし、いつも母や父といった人と会うことは無かった。


大抵会うのは、使用人のキヨか、彼の兄だ。


これまで、運動会や行事で家族が学校に来る機会は何度かあった。いつも直之を目で追っている百子は今更ながら気づく。…いつからか、一度も直之の両親が来ていないことに。


「直くんのパパとママ、いつお亡くなりになったの?」

「小学校3年から4年に上がる春休みの時だそうよ。」

「!!」


一人、初めて同じクラスになれたと浮かれていたあの時、直之は両親を亡くした直後だったのだ。

ももちゃんはお嬢様です。

ひとりっ子で両親に溺愛されています( ´‐`)

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