彼女なんで
月曜日、もう私の授業は終わった。
直くんには会えていない。連絡も無視したまま…
「帰ろう…」
重い足を引きずるようにトボトボと校門まで歩く。
(?…人影?)
そこには、人が立っていて―…
あれ?もしかして…
(――な、直くん!!)
直くんが立ってる。校門に。なんで?どうして?
―時計を気にして…
もしかして、私を待ってるのかな?直くんが?
はっ!わ、別れ話!?
…いやいや、あの感じは違う。
私には分かる。直くんが焦ってる。ということは別れ話では無い。
…やっぱり、私を待ってくれてるんだ!
ドキドキ。心臓が早くなる。愛しい直くんが私を待ってる!
慌てて駆け寄ろうとしたその時―
「三井くん!」
女の子の声がした。
(あ…)
前に私に声をかけた女子達の一人だ。
足が止まる。
走って行って、二人の間に割って入りたいのに。
…多分前は出来た。けど、今は出来ない。
直くんと微妙な感じで終わってるから…
足から根が生えたように動けない。
「三井くん、こんな所で何してるのー?」
「…人を待ってるんです。」
女子が尋ね、直くんが答える。
「えっ誰?もしかして私?」
(…すごい自信。いや、冗談言ってるのかなぁ。)
スクリーンの向こうの出来事のように動けず見る。
「いや、違っ…!百子!」
直くんが私に気づく。私は驚いてバッと後ろを向く。
なんか条件反射で背を向けてしまった…
ど、どうしよう……取り敢えず走り去る?
「えー、三井くん、あの子待ってたのぉー?」
鼻にかかる声が聞こえる。悔しい。
「そうです!彼女なんで!!」
(!!)
直くん、今…
「すみません。」
直くんがあの女の人に謝って、こっちに近づいて来るのが背中越しに分かる…
“えー!”と言って驚いてた女の人の声がだんだん遠くなる。どこかに行ったのかな…。
「…百子、ごめん。」
直くんが謝る。ダメ、私今顔見せられない。
すごい顔してる。だってさ、直くんが私の事人前で初めて“彼女”って言ってるの聞いて、
怒ってるかも知れないとか、フラれるかも知れないとか色々と…色々と考えてて…。
「百子…ごめんな。」
ずっと私が背を向けているのを、直くんは私が怒っていると勘違いしているようだ。
怒ってなんかない。違うのに、振り向けない…
―涙が止まらなくて。
急いで止めないと。
そして笑って、“直くん、嬉しい!大好き”っていつもの口調で言って、直くんを安心させるの。
早く、泣きやまないと!!
―ギュッ。
「百子…。」
直くんが私を後ろから優しく抱きしめる。
「う〜…。」
ダメだ。私本格的に泣いちゃった。
直くんが絶対自分を責める。